【Mobile World Congress 2013】

NECカシオの田村氏、海外版「MEDIAS W」に手応え

 NECカシオのブースでは、連日に渡り、2画面搭載のAndroidスマートフォン「MEDIAS W」の前に人だかりができている。今回、NECカシオモバイルコミュニケーションズの代表取締役 執行役員社長の田村義晴氏に、「MEDIAS W」の海外展開などについて話を聞いた。

MEDIAS W

――「MEDIAS W」に人だかりができている。反響が大きかったのでは?

 1台の端末の展示としては最大の集客だったと思う。メディアの引き合いも多く、海外のイベントで今までになかった手応えを感じている。

 ブースでは、メディア以外の撮影は禁止したが、あれこれ撮影して、止めても電池カバーを開けるなど、スパイのような行為もあった。しかし、そのぐらいのインパクトがあったことはありがたいとも思う。

 実は日本で最初に作った「MEDIAS W」のモックアップも赤だった。日本は結局、黒になったが、この赤はハイテク感を感じさせるもの。日本でも機会があれば出したい。[MEDIAS W」のシリーズは今後も進化させていきたいし、防水には次のチャレンジだと思っている。今後、天下を取れればいいが、まずは2画面で先鞭をつけられた。

 余談だが、バックホールド式のカメラは、端末を広げればインカメラにもなる。もしかして世界最高画質のインカメになるかもしれない(笑)。

NECカシオの田村氏

――今回のイベントでは、Tizen(タイゼン)やFirefoxなど、端末のソフトウェアプラットフォームに動きが出てきた。

 我々としてはTizenでもFirefoxでもWindowsでも、商売できるならそれでいい。TizenについてはLiMoの頃からの関わりもあってボードメンバーを維持している。TizenはNTTドコモも関わっているところでもある。

 第3のOSについても、ある程度、先駆者がやってくれるはずで、それこそゼロスクラッチはないと思う。そうなれば商品力とコスト力が問われる。OSはそれほど関係ない。OSにはハイもミドルもないが、最初に対応するチップが何になるのかはその後の展開に関係してきそうだ、

――ノキアが15ユーロ(約1800円)と安価なフィーチャーフォンを発表した、GSMの新興国向け市場にも動きがあった。

 フィーチャーフォンについては、我々もG'zOneブランドがあり、結構な数が出ている。ニーズがある限りやっていくつもりだが、安いモノをやるかと言えば難しい。値下げ競争の泥沼にははまりたくない。

――今年のイベントの印象を聞かせて欲しい。

 自動車関係とのコラボがなんとなく現実味を帯びてきたように思う。ただ、第3のOSも、車のインフォテイメントもそうだが、それは去年もあった。今年のキーワードは何か、正直、首をひねる部分がある。

 フィギュアスケートで言えば、ショートプログラムが終わり、フリープログラムのための出し物を考えているような段階なのかもしれない。ショートの点数が低ければ三回転を入れよう、音楽を買えようと考えているところなのかもしれない。

 我々は間違いなく2画面で、NTTドコモは第3のOSだろう。しかし、全体的な総括ができないということが今年のイベントの総括かもしれない。そうであるなら、ひょっとしたら三回転ジャンプで我々の逆転も考えられない話ではない。

――二画面にタフネス系と特色が見られる端末が展示されていた。

 サムスンやHuawei、ZTEとデザインで差別化しているが、フルスペックを前に打ち出している。しかし、みんな同じじゃないか、となる。タフネスも二画面も結構行けるんじゃないか。

――海外市場について聞かせて欲しい。昨年、東南アジアへの展開にも言及されたが。

 どうやら難しい市場だとわかった。海外に出て行くことは間違いないが、まずは北米、そして北米とシナジーがはかれる南米をターゲットにした。今回の反応を見ると、欧州もないわけではない。

――欧州にも一気に踏み出さない理由は?

 やはり価格面が大きい。欧州市場というと大きなイメージがあるが、細分化されており1つのキャリアとしては小さい。また、2画面は2つ分の液晶を使っているため、コストを下げているとはいえ、まだ高い。今回、オイルマネーの中東諸国の人には、高くても買うと言ってもらえた。

――「MEDIAS W」は法人向けモデルとしても可能性がありそうだ。

 その通りで、実はかなり効率的。商談などで片方に情報を出してプレゼンテーションするのも便利かと思う。ただ、今いただいている反応の多くは個人によるものが圧倒的。商談で使えるように、自分が見る側のディスプレイにはト書きが表示されたりすると面白い。

――もしかしてデュアルOSというのもあるかもしれない。

 それはすごい。防塵についてもマジメに考えてみたい。これまで、北米市場が大きく、価格も高かった。欧州はその次の市場規模だが、市場は飽和気味だ。中東エリアはあまり考えてこなかったが、売れるなら検討していきたい。

――そもそも、スマートフォンの時代の突入して、「もしかしてあれもできるかも」と話すことがなくなった。そういった意味で「MEDIAS W」は非常に新鮮に感じる。

 ドコモから発表され、売れ行きが注目されるが、それよりも周囲の反応から、これまでにない手応えを感じているところ。まずは「MEDIAS W」の赤を海外でしっかりアピールしたい。

――ありがとうございました。

津田 啓夢