【Mobile Asia Expo 2014】
年間6000万台を視野に入れ急成長する小米、その成功の秘けつとは
(2014/6/12 12:38)
今、中国市場で急速に拡大しているスマートフォンメーカーがある。それが、小米(Xiaomi/シャオミー)だ。同社は“中国のアップル”とも評され、Androidを独自にカスタマイズした端末を次々と世に送り出している。最近ではグーグルでAndroidを担当していたヒューゴ・バラ氏を引き抜いたことでも、話題を集めた。
「Mobile Asia Expo 2014」では、そんなXiaomiの共同創業者であるリン・ビン氏がキーノートスピーチに登壇。同社の急成長の秘けつを明かした。
シリコンバレーの人材を引き抜き、最高の端末で海外にも進出
キーノートの冒頭、リン氏は自身がグーグルやマイクロソフトに在籍していたことを紹介。そうした人脈を活かし、「グーグルやマイクロソフトから、非常にいい人材を引き抜くことができた」という。最近では、上記のようにグーグルでAndroidを担当し、「Google I/O」などのイベントにもたびたび登壇していたヒューゴ・バラ氏を小米に迎え入れている。リン氏は、バラ氏のことを「彼を置いてほかの人間はいない」と語るほど評価しており、海外市場の開拓を担当しているという。
また、開発チームは「主にモトローラから来ている」といい、製品のテストにも時間を注いでいると語った。「すべての商品に力を入れ、性能を最善にする」というのが、小米のモットーだ。こうした思想は、端末の部品選定にも貫かれている。
リン氏によると、小米のスマートフォンは「トップサプライヤーの部品を使っている」ところも自慢の1つ。「シャープの液晶、ソニーのカメラ、コーニングのガラスを使っている。商品を裏で支えているのはトップクラスの部品だ」と、自信をのぞかせた。
その一例として挙げられたのが、「Mi3」というスマートフォン。NVIDIAが開発したチップセット「Tegra 4」をいち早く採用し、「ソニーの13メガカメラや高速なフラッシュも搭載されている」という。同様に5月に発表されたのが8インチの「Mi Pad(ミーパッド)」だ。このタブレットには、NVIDIAが開発した192基のGPUを内蔵する「Tegra K1」を世界で初めて採用。PCのアーキテクチャーをそのまま活用できるチップセットで、ゲームのクオリティが大幅に上がるのが特徴だ。リン氏も「ゲームをやっていて本当に気持ちがいい」と語っている。
直販を生かして低コストに端末を流通、ファンを培う活動も
一方で、Mi3の価格はわずか1699元(約2万8000円)、Mi Padに至っては16GB版が1499元(約2万4500円)と非常にリーズナブルだ。この低価格の秘密は「販売コストを抑えている」ところにある。同社のスマートフォンの主な販路は、Webでの通販。キャリアのショップや家電量販店を通す既存の流通を使わないことで、販売に関するコストを徹底的に下げた。
ユーザーに直接端末を届けるだけに、ネットの声に耳を傾けることにも力を注いでいるという。リン氏は「インターネットはオープンなカルチャーで、従来の広告とは違う。ダメだとすぐに批判もされる。逆に熱心なファンも多い」として、こうした意見にも耳を傾ける重要性を語った。
また、サイト上ではイベントも開催して、ユーザーとのつながりを強化しているそうだ。結果として「Mi(小米の端末の)ファンのフェスティバルでは、130万台の携帯電話が売れた。74万台のバッテリーや50万台のヘッドセット、それに17万のキャラクターグッズを売ることもできた」と、販売の実績にも直結しているという。
「インターネットの考え方が色濃い会社」というように、ネットから得た意見は、端末にも反映されている。「愛好家からたくさんのアイディアをいただき、1.5億ユーザーの投稿を獲得した」というリン氏。熱心な小米ファンは端末のソフトウェアの翻訳まで手がけており、「公式には3言語しか対応していないが、残り25の言語はファンが作ったもの」だと明かした。
キーノートスピーチ後、リン氏に確認したところ同社のスマートフォンは日本語にも対応しているとのこと。これも、小米のファンが独自に翻訳を手がけたものだという。
スマートフォンのノウハウをテレビに水平展開
こうしたスマートフォンの開発ノウハウは「もう1つの業界でも活かせる」といい、リン氏が紹介したのが「Mi TV 2」だ。このテレビは、4Kの解像度に対応しているだけでなく、「クアッドコアのCPUを内蔵し、どんなAndroidのアプリも使える」というのが特徴となる。もう1つの売りがシンプルリモコンで、「ボタンが11個しかない。赤外線ではなくBluetoothに対応しているため、どんな場所に向けても使える」という。
ネットでファンを広げ、低価格な端末をユーザーに直接届ける戦略が功を奏し、2013年度は1870万台のスマートフォンを販売。日本でヒットしているソニーモバイルのXperiaが、同年度で3910万台ということを考えると、いかに規模が拡大しているかが分かるはずだ。リン氏は2014年度についても「6000万台の販売量を達成できる」と自信をのぞかせた。
なお、小米は現在、中国市場を中心にアジア各国にも徐々に販路を広げている。リン氏に日本での展開をたずねたところ、「今は(他国のことで)とても忙しい」として、端末を投入する予定は当面ないことを明かした。