本日の一品
現代の“大福帳管理”ノート「Password Keeper」
(2016/4/25 06:00)
好む好まざるに関係なく、ネット上で何かをやろうと思ったら、死ぬほどたくさんのログインIDやパスワードを管理することになる。メールを出すにも、SNSで無駄なダジャレを飛ばすにも、ちょっとデジカメ写真をクラウドに置くにも、新幹線の切符や航空券を買うにも、出張先のホテルを予約するにもログインIDやパスワードが必要だ。
ただでさえ個人の管理能力を超えているのに、パスワードは英数文字ミックスで8文字以上なんて言われて、ますます管理が大変になってきているのが現代のネット社会だ。早くすべてのITクライアントが完璧無敵の指紋認証になって欲しいものだ。
そんなログインIDとパスワード管理の便利アイテムが今回のお題だ。今回分かったことだが、筆者宅でもパスワード管理は家族それぞれが独自の方法でやっているようだ。ワイフは、ICT系を少しでもかじった人間なら驚きを隠せない伝統的な“大福帳管理”だ。
実際に彼女が現在使っている2枚ほどの大福帳を見せてもらったが、Wordで独自の専用マトリックスフォーマットを作って、そこにサイト別のログインIDやパスワードがビッシリと書かれている。
非難する賢い業界人はたくさんいそうだが、企業人ではないごく一般的な大衆には一番ポピュラーな管理方法だろう。そこに独自の暗号化があればまだ良いが、そんな複雑なことは何もなく、ただ大福帳の収納場所が秘密らしきところだというだけのようだ。忘れて使えないより、多少漏洩の危険があっても使えるほうが便利だという潔い姿勢だ。
実際のところ、筆者も似たり寄ったりで、キングジム社の発売しているMIRUPAS(ミルパス)という乾電池駆動のログインID・パスワード管理端末を、ここ3年ほど愛用している。電源オンして、自分の設定したマスターパスワードを付属のミニペンで入力することで、別途登録した任意のログインIDやパスワードが順番に全て見られるロック機能付き大福帳ハードウェアだ。
もちろん、USBケーブルを使ってパソコン内部のストレージに暗号化バックアップもできるスグレモノだ。しかし、起動時にマスターパスワードの要求プロセスが存在する点を除けば、ワイフの行っている大福帳管理と大差はない。結局のところ、どういう管理方法をやっているか全く謎である娘が、謎の分だけ一番厳重な機密管理を行っているのかもしれない。
さて、今回ご紹介するのは、キッカーランドの「Password Keeper」(パスワードキーパー)と名付けられた“大福帳ハードウェア”だ。ログインIDとパスワードなど60組を安全に管理できるという触れ込みで、一見してアドレスブックのような形状。中はWebサイト名、ユーザー名、パスワードとそのヒントなどを3行で書き込むフォーマットになっている。
該当項目をペンで書き込んだら、表紙に大きく印刷された「Password Keeper」のタイトル文字を剥がすと、今度は何も記述のない新しい表紙が現れる。後は、この大福帳ハードウェアを自分だけが分かって取り出せる安全な場所に保管すればよい。
一見して不確実性の高いパスワード管理の仕組みだが、もっとも基本的な「大福帳を何処に保存するか」ということと「大福帳を大福帳だと分からないように偽装する」という2つの重要項目はクリアしているように思える。
ここ数年、企業などではシングルサインオンの導入が進んでいる様だが、個人ではまだまだその活用による快適さを享受できる環境には至っていない。スマホやタブレットを新しく買い換えれば、過去使っていたアプリでも再度、ログインIDとパスワードの入力を要求される。
「Password Keeper」は一見危険きわまりない管理手法ではあるが、使い方によってはきわめて便利な現代の大福帳システムなのかもしれない。ログインID&パスワード管理も、便利さの尺度でもある自分自身の記憶能力とセキュリティのバランス、そして保守の容易さが吊り合って初めて意義のあるものになることに留意しておくべきだろう。
製品名 | 販売元 | 参考価格 |
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Password Keeper Book | キッカーランド | 4米ドル |