斜め上を行くカメラ「GXR」
デジタルカメラの世界ではここ最近、マイクロ一眼なる分野が勢いづいている。オリンパスのPENシリーズやパナソニックのLUMIX Gシリーズ、ソニーのNEXシリーズなどだ。一方、高級コンパクトカメラの分野では、センサーの大型化や一体型ゆえの作りこんだ単焦点レンズ、コンパクトなボディなどでマイクロ一眼とは違う特徴を打ち出したモデルも増えてきた。
2009年末、そんな競争が激化しつつある世界に斜め上(?)の製品「GXR」を投入したのが、フィルムカメラ時代から高級コンパクトカメラ「GR」シリーズを展開しているリコーだ。このGXR、「GR DIGITAL」などの高級コンパクトカメラ路線はそのままに、センサーとレンズが一体になったユニットを交換する、「ユニット交換式カメラ」という破天荒な製品なのである。
「GXR」とレンズユニット「S10 24-72mm」。自動開閉式のレンズキャップは別売りのオプション | センサー類とレンズが一体となったユニットを交換できる! |
このGXRのシステムでは、基本的にリコーが展開するユニットだけが頼りで、現在までに4種類が発売されているものの、レンズ交換式カメラのような多種多様なレンズラインナップは望めない。しかし、個人的にも気に入っているGRシリーズのレンズクオリティに加えて、「GR DIGITAL」シリーズでは実現されていない、APS-Cサイズ相当の比較的大きなセンサーを搭載したユニットがラインナップされており、ここが筆者が最も気に入ったポイントだ。
とは言うもの、GXR本体と一緒に購入したのは、「S10 24-72mm」という使い勝手の良いタイプのユニット。「GRレンズ」ではなく、センサーサイズも1/1.7インチと、コンパクトカメラよりやや大きい程度だ。予算の都合というのもあるが(笑)、まずは取材などで予備のカメラとして使用することを想定し、汎用性の高いレンズが搭載されたユニットを選んだ。GRレンズ搭載ユニットは単焦点レンズなので、趣味のレンズ、かつ本命のユニットとして今後追加していきたい。
上述のようにGXRはセンサー+レンズの「ユニット」を交換するという仕組み上、ユニット交換で描写が根本的に変わる。このため、現時点では描写力への注目はひとまず置いておき、使い勝手に興味が向いている状態だ。メニューや操作ボタンはカスタマイズ性が非常に高く、レバーやダイヤル、方向キーを駆使すれば、さまざまな操作をボタンひとつで呼び出せるように変更できるのは非常に便利。シャッターボタンはやや軽めと感じたものの、そのほかのボタンやダイヤルの操作感も申し分ない印象だ。ここ数年、リコーのコンパクトカメラを使っていなかったこともあってか、とにかく機能の豊富さとカスタマイズ性の高さに驚いている。
メニューではさまざまな項目を設定できる | モードダイヤルは誤操作防止のロック機構付き。電源はスライドスイッチ。Aモードでは絞り値の変更に使用するダイヤルの操作感も申し分ない |
なお、筆者がGXRを購入した数日後、かねてより計画されていたという、ライカMマウントに対応した「GXR用レンズマウントユニット」の開発がリコーから正式に発表され、2月9日にはイベントでモックアップも公開されている。これは、GXRの交換ユニットのレンズ部分を、Mマウントのレンズに自由に交換できるというものだ。つまり、GXRがPENやNEXのようなマイクロ一眼になってしまうのである。そしてここでも、マイクロフォーサーズなどではなくMマウントだというのだから、これはもう斜め上というよりユーザー層を見据えた“シブい”選択なのだろう。Mマウントのレンズはやや趣味性(と値段)が高いとはいえ、豊富な種類が存在するレンズが付けられるとなれば期待も高まる。2011年の秋ということで登場はもうしばらく後だが、GXRユーザーとして嬉しい悩みはしばらく続きそうだ。
製品名 | 製造元 | 購入価格 |
GXR | リコー | 2万4700円 |
RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC | リコー | 3万5907円 |
2011/2/21 06:00