スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

AAC対応Bluetoothヘッドホン2機種を使う

AAC対応Bluetoothヘッドホン2機種を使う

 2013年に入ってiPod touchをビシバシ使いまくるようになった俺なんですけど、結局、iPodなど音源から伸びるケーブルがイヤなのであった。AirPlayを積極的に使い始めたのも、「音源から線が出てるのがイヤ」というのが大きな理由だ。

 そして今度は、Bluetoothヘッドホン(イヤホン)の類を鋭意使い始めた。多数使い始めたんですけど、今回はその一部、2機種のBluetoothヘッドホンについて書いてみたい。

 モノは、ソニーの「ワイヤレスステレオヘッドセット DR-BT150NC」と、ソフトバンクBBの「SoftBank SELECTION music piece SB-BT08-SHLD」。どちらもBluetoothオーディオコーデックとしてAACに対応している製品である。

左がソニー「ワイヤレスステレオヘッドセット DR-BT150NC」。右がソフトバンクBB「SoftBank SELECTION music piece SB-BT08-SHLD」。どちらもAAC対応のBluetoothヘッドホンだ

 本連載の7年くらい前の記事で「音楽を聴くためのBluetoothヘッドホン各種」について書いた。率直な話、どれも「じっくり音楽鑑賞するには音質的に難あり」であり、「まあBGM的に聴くなら十分かもネ」的な結論となった。どのBluetoothヘッドホンも「明らかにノイズが乗る」し、ワイヤードのヘッドホンより「明らかに音が悪い」と感じられたからだ。

 てか、最近まで知らなかったんですけど、上記リンクの7年前のBluetoothヘッドホンも、最近のBluetoothヘッドホンの多くも、Bluetooth機器間で音を飛ばすときのオーディオデータ圧縮コーデックとして「SBC」(SubBand Codec)を使っていたから「ハッキリわかるほど音質が劣化」していたんだそうで。……そうだったのか~、的な。

なぜBluetoothヘッドホンは「音が悪い/悪かった」のか?

 Bluetooth対応プレイヤーからBluetoothヘッドホンへ音楽を送る場合、プレイヤー側の音楽ファイル(オーディオデータ)をいったん非圧縮の状態に展開する。多くのBluetoothヘッドホンの場合、このオーディオデータをSBCで圧縮し、無線で飛ばす。そしてBluetoothヘッドホン側へ飛ばしたSBC圧縮データは、非圧縮状態に展開され、DA変換などを経て音を鳴らすというしくみらしい。

 上記の通り、伝送の途中でSBCでの圧縮がかかっている。で、このSBCは、圧縮や展開のときに機器にかかる負担が軽かったり、データの圧縮率が高かったりして便利な一方で、オーディオデータのロス=音の劣化が大きいコーデックなのだそうだ。このため、再生時などに「シャー」とか「シャラシャラ~」とか「チリチリ~」みたいなノイズが乗ってしまうのであった。

 前述の7年前のBluetoothヘッドホン体験で、「Bluetoothヘッドホンは総じて音が悪い」という観念ができてしまったが、ソレってBluetoothヘッドホンの多くに採用されちゃってるSBCというコーデックが原因だったんスね。ふぅ~ん、と思った最近の俺。

 だが同時に、最近はSBCのようなノイズが発生しない「音質劣化が少ないコーデック」を採用したBluetoothヘッドホンがいくつも出てきていることを知った。具体的には、AACやapt-Xといったコーデックに対応したヘッドホン。そういったヘッドホンと「AACやapt-Xといったコーデックに対応した音源」を組み合わせて使うと、Bluetoothヘッドホンでもかな~りイイ音で音楽を楽しめるらしい。

 そうなのか!! と知った瞬間、行動。そして手を出した数々の「イイ音のBluetoothヘッドホン」の一部が、前述の2製品である。愛用中のiPod touchなどはBluetoothのAACに対応する音源なので、これら2製品を使って「高音質でのワイヤレス音楽聴取が可能」なのだ。

 てなわけで以降、各製品がどんな使用感なのかをレポートしてみたい。が、とりあえずの結論から言えば、どちらの製品もiPod touchなどの音源とBluetooth(AAC使用)接続時は、十分高音質。「音楽鑑賞を楽しめるレベル」のクオリティだと感じられた。

 なお、以降では音楽聴取関連機能のみについて書こうと思う。通話のためのヘッドセット機能については割愛するので、その点をご了承願いたい。

かなり「当たり」だった「DR-BT150NC」

 まずはソニーの「ワイヤレスステレオヘッドセット DR-BT150NC」。ネット通販にて7100円で購入した。

 購入動機は、第一にBluetoothヘッドホンでありかつ対応コーデックとしてAACを持っていること。それから、NC(ノイズキャンセリング)機能を搭載していて「周囲からの騒音を約90%抑えられる」ということ。

 またこのヘッドホンのケーブルがU字タイプであることも。Bluetoothレシーバーから伸びるヘッドホン部が左側ドライバにつながり、そこから首の後ろを通して右側ドライバがつながっているタイプですな。左右ドライバからのケーブルが首の前側に伸びるタイプとは違い、首の後側にケーブルが通るので、ケーブルが絡みにくいというメリットがある。

ソニーのDR-BT150NC。ホワイトを購入した。U字タイプヘッドホンとコントローラーは固定式。コントローラーは親指先大のコンパクトなもので、操作性も良好
コントローラー部には、送り/戻しボタンやボリュームボタン、再生/ポーズボタンなどが独立してある。ボタン2度連打などの操作を行わなくて良いタイプですな。背面にはクリップがある。服などに留められるほか、写真のようにヘッドホンをまとめてもおける

 AAC対応という点での音質を考えると、SBCより「遙かにノイズが少なくず~っと音質が良い」と感じられる。AACとSBC、ホントにまったく別モノ。個人的には「Bluetoothでもこんなに高音質で聴けるのか!!」と驚き、「今後はAACとかに対応したBluetoothヘッドホンばかり使っていきたい♪」と高音質ワイヤレス音楽聴取スタイルにトキメキを感じた。

 ただし、細かいコトを言えば、Bluetooth AACであっても音の細部の質ではやはり、ワイヤードのヘッドホンの方が良好だと感じる。Bluetooth AACの場合、ワイヤードのヘッドホンでは現れない高音の微細な歪みとか、音全体の解像感の微妙な足りなさのようなものが感じられた……ような気がする。ただこれは非常に細かい違いで、「音質を聞き分けよう」と意識を集中しないとわからない程度のことなので、通常は気にならないと思う。

 ヘッドホン自体の音質は、大雑把に言えば高音と低音が若干強調され気味ではあるものの、わりとフラットに抑えてあるという印象。各ジャンルの音楽をそこそこ心地良く鳴らしてくれるバランスの良さがあると感じた。十分イイ音だと思う。

 それからNC機能。電車の中などで使うと非常に効果的ですな。たとえば低音を中心としたノイズを大幅に低減してくれるので、ボリュームをあまり大きくしなくても快適に音楽を聴ける。序盤静かで徐々にボリュームが上がるようなクラシック曲でも、静かな部分の演奏を「電車等の騒音に邪魔されずに聴ける」という感じだ。

 操作感も良好。iOSデバイス向けBluetoothヘッドホンなどにありがちな「○○ボタン2度連打で曲送り」みたいな操作系ではなく、曲送りや曲戻し、再生やポーズ、音量のアップダウンそれぞれに独立したボタンが割り当てられているので、誤操作しにくい。

 前述のとおり7100円で購入したんですけど、率直な話、AAC対応Bluetoothヘッドホンであり、けっこー良い音質であり、さらに操作性も良いDR-BT150NC。なんか相対的にかな~りお買い得な気がする。もう1個買おうかな、とかマジメに思った。

 残念なのは、ヘッドホンとコントローラーが固定式であること。NCヘッドホンだからしょうがないんでしょうか。気に入ったヘッドホンをこのコントローラーに接続でき、NCが働いたりしたら最高なのに、とも思った。

 もうひとつ残念なのは、バッテリー持続時間。メーカー公称ではNC使用時の連続使用は約3時間で、NC不使用時でも約3.5時となっている。ちょっと短め。通勤通学に使うなら、毎日充電する必要がありそうですな。でも充電時間は約2.5時間なので、モバイルバッテリーの類と組み合わせて、空き時間に効率良く充電って手はありそうだ。

 ほんの少し気になった点は、操作時に希に「プチッ」というノイズが入ったり、曲送り戻しのときに曲の頭が途切れたりすること。ただ、連続的に使用していたり、手動で曲の送り戻しをしなければ出ない問題なので、俺的にはあ~んまり気にならない。

 てな感じで、BluetoothヘッドホンとしてAACによるノイズの少なさ、ヘッドホン自体の音質の良さ、それからコントローラーの使いやすさを兼ね備えたDR-BT150NC。AAC対応Bluetoothヘッドホン自体がそんなに多くないなか、かなり狙い目の1機種だと思う。

汎用性が高くて愉快な「music piece SB-BT08-SHLD」

 次にソフトバンクBBの「SoftBank SELECTION music piece SB-BT08-SHLD」。ネット通販で6597円で購入した。

 購入動機は、Bluetoothレシーバー(ヘッドホン付き)でありかつ対応コーデックとしてAACを持っていること。基本的にレシーバーなので、ヘッドホンは好みのものと交換できるのも魅力的。それから、音楽再生時には曲名やアーティスト名を有機ELディスプレーを表示できるのも良さそうだったので。

ソフトバンクBBのmusic piece。ホワイトを購入した。全角最大8文字×3行表示の有機ELディスプレーを搭載し、曲名、アーティスト名、アルバムタイトルなどを表示できる。ヘッドホンとBluetoothレシーバー部は分離でき、好みのヘッドホンを使うことができる
3つのボタンを装備し、曲送りなどの操作は独自のもの。背面にはクリップがあ

 AAC対応ということで早速使ってみた直後の印象は、「ん? コレってホントにAAC? あ、でもノイズがないからきっとAACなんだろうなあ」というもの。正直なところ、付属のヘッドホンが凡庸~やや貧弱で、あまり良い音だと感じられなかったのだ。

 付属のヘッドホンはフツー的なモノだが、音質に厳しい人にとっては「ちょっと下品なドンシャリ」となるかもしれない。高音や低音がやや強めで、迫力は感じられはする。が、高音は解像感がイマイチでクリアさ不足という印象。低音はドスドスと前に出てくるものの、ぼやけ気味で濁り気味な気がする。

 ので、このmusic pieceを「AAC対応Bluetoothヘッドホン一式」として使おうと購入した場合、微妙に寂しい気がしつつ「まあ6597円だからいいか」みたいな決着になるかもしれない。

 しかし、ヘッドホンを変えるとノリノリな気分に。多くのケースで「music pieceがお気に入りのヘッドホンをドライブしてくれる」だろう。そしてBluetooth AACでの音質の十分良好。「わりと高価な高音質ヘッドホンを無線で快適に使うためのAAC対応Bluetoothレシーバー」としてはバッチリ納得できる気がする。

 あと有機ELディスプレイも便利。サイズは小さいが、全角最大8文字×3行表示でき、曲名、アーティスト名、アルバムタイトルなどを確認できる。音源をポケットに入れたままちょいと曲名等を確認できるのは便利だし愉快ですな。

 操作感については、ユーザーにより好みが分かれるかもしれない。ボタンは再生ボタン、+ボタン、-ボタンの3つがある。曲送りは+ボタンの約2秒長押しで、曲戻しは-ボタンの約2秒長押しとなっている。「ダブルクリックのほうがいい~」という人もあるかも。

 やや残念なのはバッテリー持続時間。メーカー公称では連続音楽再生時間が約5時間となっているが、実際はもうちょっと短いような気がする。4時間連続は無理かな? 的な。もしかしたら好みのヘッドホンをつないで使っているのでメーカー公称値を下回っているのかもしれない。でもまあ、コレもまた、通勤通学に使っていたら、だいたい毎日充電が必要になるBluetoothレシーバーですな。

 あと、このレシーバーもまた、操作時に希に「プチッ」てな感じのノイズが入ったり、操作によっては曲の頭が途切れたりする。でもやはり、連続的に聴いたり手動で曲の送り戻しをしなければ起きない問題なので、実際はさほど気にならないと思う。

 てなわけで、使いやすさ&汎用性を求めるなら、このmusic pieceがオススメ。好きなヘッドホンをつなげられるAAC対応Bluetoothレシーバーだし、有機EL表示は便利だし、まあまあ安いし、他にちょっとないアイテムかもしれない。

 にしても、Bluetoothで高音質にて音楽をワイヤレス聴取できる時代なんですね~。こういう傾向は大歓迎なので、もっとAACなど高音質なコーデックに対応した製品が増えて欲しいものだ。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。