スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

MMCX対応のイヤホンを無線化してみる!

Westone Bluetoothケーブル

MMCX対応のイヤホンを無線化してみる!

 2016年7月30日に、テックウインドから発売された「Westone Bluetoothケーブル(WST-BLUETOOTH)」。公式製品情報ページはコチラですが、MMCX対応の(ケーブルが脱着可能な)イヤホンをBluetoothで無線化できるという製品ですな。コレに近い製品はほかにも少しありますが、嵩張らなさそうだしシンプルで良さげなので購入してみました。実勢価格は2万円前後です。

米Westone Laboratoriesの「Westone Bluetoothケーブル」。MMCX対応のステレオイヤホンを無線化できるBluetoothアダプタです。aptXやAACといった高音質コーデックに対応。質量は約14g(ケーブル部)です。右の写真のように、MMCX対応イヤホンを自由に脱着できます。

 購入後、1カ月程度使用しておりますが、まずまず満足しております。何よりも好みのMMCX対応イヤホンを「ヒッジョーにスッキリと無線化」できるのがイイ感じ。MMCX対応イヤホンに付属ケーブルを接続した様子と、MMCX対応イヤホンに「Westone Bluetoothケーブル」を装着して無線化した状態を比べると、一目瞭然です。

SHURE(シュア)のSE535の例。左は付属ケーブル接続時、右は「Westone Bluetoothケーブル」接続時です。スッキリ感が全然違いますな~。

 有線式のイヤホンを無線化できる一般的なBluetoothアダプタの場合、ケーブル付きイヤホンにアダプタを追加するカタチなので、無線化するために機材が1個増えます。ですが「Westone Bluetoothケーブル」の場合、MMCX対応イヤホンのケーブルをリプレイスする感覚。無線化の利便に加え、「以前よりケーブルの煩雑さが減る」というメリットも加わります。ともあれ以降、「Westone Bluetoothケーブル」の機能や使用感について書いてみたいと思います。

MMCXってナニ?

 シラッと「MMCX対応イヤホン」とか書きましたが、多くの方にとってはあまり馴染みがないかもしれません。MMCXは同軸ケーブル用プラグの規格で、非常に小さいことから携帯端末のアンテナ端子などに採用されています。イヤホン用としては、SHUREがSEシリーズイヤホンにMMCX端子を採用したことで、各イヤホンメーカーも採用するようになったようです。

SHUREのMMCX対応イヤホン。イヤホンとイヤホンケーブルを容易に脱着できます。

 写真のように脱着できるので、たとえば「イヤホンケーブルが断線しちゃった!」という場合でもケーブルだけ買い替えることができます。丁寧に使っていてもイヤホンケーブルは徐々に弱ってきますし、どこかに引っ掛けて断線してしまうようなこともあります。また、ケーブルの材質によっては、使うほどに劣化してベタついたり変色したりすることも。ケーブルを容易に交換可能なMMCXタイプなら、実質、より永くイヤホンを使えるわけですな。高級イヤホンユーザーにとっては、とりわけ有り難い規格です。

左はSHUREのE5c。11年ほど前にかった高音質イヤホンですが、長年の使用でケーブルの劣化(変色とベタ付き)が起きています。まだ使えますし音もかなりイイので、正直、ケーブル部分だけを交換したい気分。右はSHUREのSE315。ケーブル材質はどうもE5cと似ているので、今後の劣化が気になるところですが、MMCX対応ゆえケーブルのみを交換できるので安心♪

 で、「Westone Bluetoothケーブル」は、MMCX対応のイヤホンに接続可能な「無線式のイヤホンケーブル」というわけです。MMCX対応のイヤホンは(わりと高価なものが多いですが)各メーカーから発売されています。そういった各社のイヤホンを無線化できる便利な製品なんですな。

機能的には至ってシンプル

 まず「Westone Bluetoothケーブル」の機能性から。MMCX対応のイヤホンをBluetoothにより無線化できるケーブルで、スマートフォンなどの音楽や効果音をストリーミング再生できるのに加え、ハンズフリー通話にも使えます。スマートフォンでの音声検索の開始や、iOS端末ならSiriを起動することもできます。ケーブル長は片側約35cm(実測値)で、なるべく伸ばした状態で70cm弱になります。操作部にあるUSB端子から充電し、連続再生は最大で約8時間となっています。

ケーブル長は約70cm。ケーブル折り返し部分に見えるのはケーブル長を調節できる「ケーブルマネジメント」で、余ったケーブルを束ねられます。イヤホン右側MMCX端子から10cm程度の位置にあるのがコントロール部で、充電用USB端子と3つの操作ボタンを備えます。

 使い方はシンプルで、スマートフォンなどの音源とBluetooth接続し、スマートフォンなど端末もしくは「Westone Bluetoothケーブル」のボタンを操作して音を聴くだけ。付属の説明書は英文のものでしたが、公式製品情報ページから「日本語クイックスタートガイド」をダウンロードできます。

 全体的な操作感ですが、ボタンが3つしかないので「基本的な操作はシンプルに行える」といった感じ。音量アップダウンとか電源のオンオフとか、着信時の通話や終話は、ボタン一押しなのですぐに覚えられます。

 ただ、曲の送り戻しなどがボタンの長押しなので、慣れるまで戸惑ったりしがち。少々のコツが要るかも、です。曲の送り戻しは、ボリュームボタン(+/-)の1秒長押しなんですが、何曲か送り戻しする場合は、1秒長押しをその曲数分繰り返すことになり、操作しにくいですな。

 さらに言えば、ボタンの突起も平坦気味で、そもそもボタン位置が耳たぶの真下あたりにあるので、頻繁に操作が必要になると「軽くイラッ」とキがちです。「あーもー面倒だからスマートフォンを直接操作しよう!」みたいな気分にも。シンプルで使いやすくはあるんですが、操作性を求めると「う~ん、イマイチかも」という気分になることがあると思います。

装着感はどう?

 頭部への装着感ですが、正直なところ「フィットしにくい」という感じです。イヤホンから出たケーブルを耳の上から後方に通す装着方法(いわゆるSHUREがけ)で装着していますが、この状態でケーブルを頭の後ろに回すと、どうにもケーブルの長さや位置が「これでキマった!」という位置になりにくい感じです。どうやっても違和感が残ります。

 原因は、イヤホンへつながるケーブル部分に少しハリがあることと、後頭部に回るケーブル部分はさらに少し太めでクセがついていつつハリもあること、あたりだと思います。あと、操作部および電池室の位置も、フィットしにくさを増している要素かもしれません。

 結局、数日アレコレ試し、行き着いたのが「SHUREがけにしつつ、ケーブルマネジメント部が首の前側に来るように装着」という状態です。ワタクシの場合、これなら違和感を最小限~無しにして、「Westone Bluetoothケーブル」を使えます。

左が公式製品情報ページで紹介されている装着方法。ワタクシの場合、この方法だと首や耳にケーブルが触れる違和感が出たり、ケーブルを締めすぎると耳が引かれるような違和感があったりします。結果、写真右のような装着方法にして使っています。快適です♪

 余談ですが、SHUREのイヤホンに付属するケーブルは、耳を通る部分の形状をユーザーに合わせて変形させられます。巧く変形させたときのフィット感は抜群。上記の「どうにもフィットさせにくい」という経験をし、「SHUREのイヤホンってじつはスンゴくフィット感が良かったんだなあ」とか思いました。ぜひ、WestoneとSHUREが手を組んでフィット感抜群の「Westone Bluetoothケーブル」を作って欲しいと思った瞬間そりゃ無理だと思ったので、SHUREからもMMCX対応のBluetoothケーブル的な製品が出て欲しいナと思いました。

 余談はさておき、「Westone Bluetoothケーブル」購入予定の方は、購入前に実機に触れるのが無難です。音質や使用予定ヘッドホンとの接続(とくにコネクタ嵌合部の確認)および頭部への装着感などを、ぜひ、購入前に実機で確かめてください。

 最後に、気になる点を少々。ひとつは前述しましたが、操作部が耳の真下あたりにあって、プラプラしていたりもしますので、ちょっと操作しにくい感じ。イヤホンとの接続向きによって操作部の向きも変わったりしますので、これも操作のしにくさにつながっています。

 それから、ワタクシが買った個体だけの問題かもしれませんが、SHUREのSE535やSE315と接続した場合、ナゼか左側のコネクタ嵌合が甘い感じです。カチッとはまる感触に乏しく、軽い力でケーブルが抜けてしまうことも、たま~に、あります。なので、イヤホンの脱着時は必ず「イヤホン本体をしっかりつまむ」のが習慣となってしまいました。そうせずに、「イヤホンを軽く持って装着」したり「指先でイヤホンをこじって」外したりすると、イヤホンの落下につながるからです。

 ちなみに、SHUREのイヤホン付属のMMCXケーブルではこういった嵌合の甘さはなく、ガッチリはまります。また、市販のMMCXケーブルを手持ちのSHURE製イヤホンに装着しても、嵌合の甘さを感じたことはありません。やはり「Westone Bluetoothケーブル」はWestone製イヤホンと組み合わせるのがイイんでしょうか? Westone製イヤホンを持っていないので検証できておりません。

 ……「Westone Bluetoothケーブル」のMMCXコネクタ部を観察しますと、SHUREのケーブルのコネクタよりも「外側のスリーブ部がコネクタ側に若干長め」です。コレが原因で甘いのかもしれません。しばらく様子を見て、スリーブを少し削ってみようかとも考えております。この嵌合の甘さ、返品・交換を考えるってほどでもないってのが、ビミョーな感じです。

 ともあれ、こういうケースもあるわけですな。ですので、「実店舗で購入してその場で開封&自分のイヤホンと接続してみてヘンだったらその場で交換してもらう」などの周到さも、あるいは必要かもしれません。

 操作部の位置、フィットさせにくいという観点でのケーブルの質、それからMMCXコネクタの嵌合の件が、気になったトコロです。ほかは特にありません。

 全体的には、前述の装着方法でなら快適に使えておりますし、ある程度慣れれば操作もスムーズに行えます。また、音質もまずまず満足できる感じ。ケーブル接続と比べると解像感が少し減ったり若干の音質変化も感じられはしますが、主には外出時の使用なので(音楽にガッツリ集中しているわけではないので)ほとんど気になりません。

 ただ、MMCXケーブル式のBluetoothアダプタと考えつつ、細々した使いにくさを思い返すと、2万円前後の実勢価格はちょっと高いかもな~、的な。現実的なライバル機であるソニー「ワイヤレスオーディオレシーバー MUC-M2BT1」(メーカー製品情報ページはコチラ)も1万8000円前後ということで、まだまだ競合製品が少ないジャンルだから、まあこんなモンなのかな~とも思います。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。