端末、ネットワーク、サービスで新世代へ加速するドコモ
10月18日、NTTドコモは、2011-2012冬春モデル24機種をはじめ、スマートフォン向け新サービス、Xi向け新料金プランなどを発表した。
NTTドコモは昨年来、スマートフォンのラインアップを拡充する一方、LTEを採用したXiサービスをスタートさせるなど、新しい時代へ向けたビジネスを構成し始めているが、今回は24時間国内通話定額「Xiカケ・ホーダイ」を発表するなど、未だかつてない圧倒的にインパクトのある施策を打ち出してきた。発表会の詳細については、本誌のレポート記事を参考にしていただきたいが、ここでは今回の発表内容の捉え方やタッチ&トライで試用した端末の印象などを踏まえて、解説しよう。
■Xiサービスとスマートフォンで新世代へ
携帯電話業界ではそれぞれの事業者に個性があり、その個性に反映したユーザー層がいると言われる。国内でもっとも契約数が多いNTTドコモは、もっとも古くから携帯電話サービスを提供し、当初から全国にエリアを展開してきた経緯などもあり、他社より幅広い層のユーザーを抱えている。ユーザー層が幅広ければ、サービスを提供する側としては、その分、サービス内容も最大公約数的なアプローチになり、サービスにしても端末にしても料金にしても保守的な傾向を取らざる得ない印象があった。
かつて、当時のJ-フォンが写メールでヒットを飛ばしたときもNTTドコモはカメラ付きケータイで出遅れ、今や当たり前となったパケット定額サービスもauに先を越され、3Gの普及も通信方式の違いなどがあったとは言え、やはり、auに先行を許している。その他にも端末デザインやiPhoneなどのグローバルモデルの調達など、NTTドコモは何度となく、後手を踏んできた経緯がある。iモードやおサイフケータイなど、サービス面で絶対的な強みを持つものの、No.1キャリアであるがゆえの保守性によって、他社に先行を許してしまう事象が起きるのは、なかなか避けられないようだ。
FOMA 905iシリーズ | auとソフトバンクは「iPhone 4S」で攻勢をかける |
ただ、NTTドコモがこうした状況に対し、常に保守的だったかというと、そうでもない。あるタイミングで、No.1キャリアの強みを活かして、一気に反転攻勢を掛けてくることがある。端末で言えば、FOMA 905iシリーズ、料金プランで言えば、パケ・ホーダイ ダブル2などが記憶に新しいところだが、今回の2011-2012冬春モデルの発表会は、まさにこの反転攻勢をかけてきたタイミングであり、No.1キャリアのパワーを活かした豊富なラインアップやサービス内容をきっちりと揃えてきた印象だ。
NTTドコモが積極的な施策を打ち出してきた背景には、やはり、ソフトバンクやKDDIから投入された「iPhone 4S」をはじめ、スマートフォンや高速データ通信サービスによる他社の攻勢があるからだ。iPhone 4Sについては改めて説明するまでもないが、今回から国内シェア2位のauが取り扱いをはじめ、ソフトバンクとの販売競争が話題になっている。
料金プランではウィルコムが「だれとでも定額」で久しぶりに純増を伸ばし、auはiPhone 4S導入でホワイトプランに対抗するため、au同士の通話が時間限定で使い放題になる「プランZシンプル」を開始している。
データ通信ではUQコミュニケーションズのWiMAX網を活かした「+WiMAX」対応スマートフォンや+WiMAX対応モバイルWi-Fiルーターをラインアップに加え、ソフトバンクも「ULTRA SPEED」や「SoftBank 4G」で高速データ通信サービスを強化してきている。
元々、NTTドコモのラインアップやサービスは契約者数が多いため、他社よりも充実している方だが、音声通話の定額やデータ通信サービスについては他社の積極的な攻勢がかなり目につくようになってきた。
こうした状況に対し、今回の2011-2012冬春モデル発表会では、「端末」「ネットワーク」「サービス」について、今までにない積極的な反撃体制を整えてきた。軸となるのは「Xiサービス」と「スマートフォン」で、端末ラインアップからサービス、料金に至るまで、新しい世代へ向けて、本格的に舵を切ってきたというのが素直な感想だ。
通常、こうした発表内容はある程度、事前に予想ができる部分もあるが、今回は発表会でニュースリリースが配られた直後、業界のライター氏と「いやぁ、強烈に攻めてきましたねぇ」と思わず、顔を見合わせしまったくらいだ。ここ数年のNTTドコモの発表の中でも一、二を争うほど、充実したアグレッシブな内容だったと捉えてもらって差し支えないだろう。
■スマートフォン中心にシリーズを再構築
シリーズを再構成 |
「端末」「ネットワーク」「サービス」について、「Xiサービス」と「スマートフォン」を軸に攻勢を掛けてきたNTTドコモの発表だが、それぞれの項目について、順番に説明していこう。
まず、端末ラインアップについてだが、NTTドコモは3年前の2008年秋冬モデルの発表会において、それまでのハイエンドの「FOMA 90Xiシリーズ」、普及モデルの「FOMA 70Xiシリーズ」という構成をやめ、利用者のライフスタイルに合わせるために「STYLE」「PRIME」「SMART」「PRO」という4つのカテゴリーに分けた。各機種のネーミングも「○-01A」といったルールに変更し、ラインアップを構成してきた。
このシリーズ区分とネーミングルールについては、発表当時、利用者に合わせるというより、売れ筋がハイスペック/ハイエンドに偏る傾向を是正し、ミッドレンジのモデルも売りやすくするという意図が見え隠れするため、ユーザーとして、あまり歓迎できないと指摘した。しかし、販売サイドの目論見はある程度、達成できたものの、結果的にSTYLEシリーズにハイエンドとミッドレンジができてしまったり、SMARTシリーズやPROシリーズは少数派向けのようなイメージができてしまい、あまり販売が奮わないなどの歪みもできてしまった。
こうした状況を踏まえ、今回からラインアップがスマートフォン中心に構成されることもあり、従来のシリーズ区分を見直し、スマートフォンの「NEXTシリーズ」と「withシリーズ」、フィーチャーフォンの「STYLEシリーズ」と「らくらくホン」に再構成されることになった。
この新シリーズの内、NEXTシリーズは「先進的で自分の可能性が広がる」、withシリーズが「親しみやすく毎日の楽しさが広がる」というコンセプトが与えられている。具体的な製品を見てもらうとわかりやすいが、NEXTシリーズがグローバル端末やハイスペック端末を中心に構成されているのに対し、withシリーズはより一般的なユーザーが日常的に利用するカジュアルなモデルをはじめ、カラーやコラボレーションによる個性的な端末で構成されている。
フィーチャーフォンについては、結局、従来の4区分のシリーズでもっとも人気が高かった「STYLEシリーズ」、定番の「らくらくホンシリーズ」が残ったが、今回のSTYLEシリーズには従来のPRIMEシリーズに相当するスペックのものもあり、事実上、フィーチャーフォンをひとつにまとめてしまった印象が強い。もっともこの1年間の急速なスマートフォンへのシフトを考慮すれば、当然の結果であり、こういった形の選択しかできなかったのかもしれない。
■スマートフォンの機種数拡大、フィーチャーフォンも8モデル
次に、機種数についてだが、スマートフォンはNEXTシリーズとwithシリーズで7機種ずつラインアップされており、これにNEXTシリーズとして、すでに発表済みのソニー・エリクソン製端末「Xperia PLAY SO-01D」を加えたものが2011-2012冬春モデルの構成になる。ちなみに、夏モデルもこの2シリーズに振り分けて、一定期間は併売されるため、店頭には一時的に10機種以上のスマートフォンが並ぶことがありそうだ
。
フィーチャーフォンについては、8機種が発表されたが、auの2機種、ソフトバンクの1機種に比べると、かなり多い印象だ。ただ、NTTドコモは約5900万の契約数があり、その内、スマートフォンが一気に増えたとは言え、おそらく1/5にも満たないであろう状況を考えると、これくらいが十分な機種数と言えそうだ。
ただ、バリエーションという点では、シリーズを再構成したこともあり、あまり特異なモデルはなく、従来のSTYLEシリーズを継承したスタンダードなモデルがラインアップされている。
ボディデザインについては、スマートフォンはストレートタイプが中心で、スライド式ボディにテンキーを備えたモデル、QWERTY配列のフルキーボードを備えたモデルがそれぞれ1機種ずつラインアップされている。海外のスマートフォンには必ずラインアップされるコンパクトモデルも1機種あり、8月に発売されたソニー・エリクソン製端末「Xperia ray SO-03C」と合わせ、当面は2機種から選ぶことができそうだ。ただ、Optimus chatのようなQWERTY配列キーボードを備えたスライド式モデルがないなど、少し気になる部分もある。フィーチャーフォンについては、スタンダードな折りたたみ式が5機種ともっとも多く、二軸回転式が2機種、スライド式が1機種、ラインアップされている。
■仕様をチェック
意外にバリエーションに富んでいるのがスペック面だ。ディスプレイはNEXTシリーズとwithシリーズを合わせたスマートフォン14機種の内、有機EL(SuperAMOLED)は3機種のみで、残りは液晶パネルを採用する。
もっとも特徴的なのが解像度で、1280×720ドットのHDディスプレイが5機種、960×540ドット表示のQHDディスプレイが3機種、800×480ドット表示のワイドVGAが5機種、640×480ドット表示のVGA液晶が1機種となっており、ハイエンドは急速にHDへのシフトが進みそうだ。ディスプレイサイズはボディサイズとの兼ね合いもあるが、14機種中9機種が約4インチ以上のディスプレイを採用しており、こちらも昨年発表の2010-2011年冬春モデルと比較すると、一気に大型化が進みつつある。この分で進化を続けると、約4.5インチ/HD表示対応くらいのスペックが標準になる日も遠くなさそうだ。
ハードウェアで注目度の高いCPUだが、スマートフォンの14機種中、4機種が米Texas Instruments(TI)製OMAPを採用し、その他の機種は米Qualcomm製を採用する。コアは14機種中7機種がデュアルコア、9機種が1.2GHz以上のクロック周波数を実現している。プロセッサのマルチコア化は、パソコンでは高速化に寄与するイメージが強いが、スマートフォンのようなモバイル機器では、どちらかと言えば、短時間で処理が終了するため、結果的に省電力を実現しやすいという方向性になる。
CPUのメーカーについては、auやソフトバンクの2011年秋冬モデルのレポートでも触れたが、Android 4.0のリファレンスプラットフォームにOMAPが採用されたこともあり、将来的なバージョンアップを見越して、OMAPを搭載したという判断もあるようだ。もっともOMAPを搭載しているからバージョンアップが早いことが確約されているわけではなく、Snapdragon搭載モデルが先にバージョンアップするケースも十分に考えられるので、ひとつの目安程度に捉えておくのが得策だろう。
■Xi対応スマートフォン登場
次に、ネットワークについてだが、今回、はじめてXi対応スマートフォン4機種がラインアップに加わった。前述の通り、NTTドコモはLTE方式を採用したXiサービスを2010年12月から提供しているが、これまではデータ通信端末やモバイルWi-Fiルーター、9月発表で10月に順次、発売されるタブレット端末と、いずれもデータ通信専用端末のみだった。サービス開始から約1年近くが経ち、いよいよ多くのユーザーが利用するスマートフォンでXiサービスが利用できるようになるわけだが、本格的にXiサービスを普及させるため、NTTドコモではXiサービスのみで契約できる「Xiカケ・ホーダイ」やパケット定額サービスの提供を開始する。詳しくは後述するが、その内容を見てもわかるように、NTTドコモとしては、かなり思い切った施策を打ち出してきたと言えそうだ。
ラインアップとしては、グローバル市場でもLTE対応スマートフォンを発表しているサムスン、LGエレクトロニクスに加え、国内勢はいち早くLTEに取り組んできたことで知られるNECカシオと富士通の製品が並ぶ。いずれもかなりハイスペックなモデルだが、今のところ、連続待受時間などの情報が開示されておらず、FOMA対応のスマートフォンに比べ、どの程度、バッテリーを消費するのかが今ひとつ見えてこない。
同じ高速通信を実現するスマートフォンとしては、auが採用したWiMAXがあるが、Wi-Fiの発展形とも言える形で規格化されたWiMAXに対し、LTEは3Gの発展形であるため、どちらかと言えば、LTEの方がバッテリーを消費しないのではないかという指摘がある。その一方で、+WiMAX対応スマートフォンは必要に応じて、WiMAXのON/OFFを切り替えられるため、バッテリー消費を節約しやすいという意見もある。Xi対応スマートフォンは魅力的だが、いずれにせよ、+WiMAX対応スマートフォン同様、バッテリー消費が選択のポイントになりそうだ。
■Xiサービスへの移行を積極的に促す
Xiのエリア展開 |
Xiトーク24 |
ところで、Xiサービスについて少し補足しておこう。
Xiサービスで採用されているLTE方式は、この10年近くの間、広く利用されてきた3Gケータイの最終形を意味する「3.9G」、もしくはそれに続く「4G」と呼ばれることが多いが、パケット通信のみをサポートする規格で、高速/大容量通信/低遅延という特徴を持つ。海外の携帯電話事業者でもLTE方式を採用するところが増えつつあり、将来的に業界標準になることが期待されている。
新しい世代の通信サービスということで、かつてのFOMAが開始されたときのように、エリアを心配する向きがあるかもしれないが、Xiサービス対応端末は、Xiのエリア内ではLTE方式、エリア外ではW-CDMA/HSDPA方式をサポートするデュアルモードで動作するため、初期のFOMAのときのように、つながらない心配はほとんどない。
料金体系についても同じで、Xiサービスを契約し、Xiサービス対応端末を利用していれば、XiとFOMAのどちらのエリアで利用していてもXiサービスで選んだ料金体系が適用される。
■Xiの料金
さて、そこで気になるのが料金だが、今回、NTTドコモは音声通話も利用できるスマートフォンの登場に合わせ、新たに音声通話に対応したXi向けの新料金プランを発表した。バリュープランとベーシックプランはあるが、実質的に選べるのは「タイプXi にねん」というプランのみで、2年単位での契約になる。バリュープランで月額780円なので、FOMAのタイプシンプルバリューと同等と考えればわかりやすい。
そして、もっとも注目されるのが月額700円を追加することで、NTTドコモへの国内通話が24時間いつでも無料になるという割引サービス「Xiカケ・ホーダイ」だ。これまでもソフトバンクの「ホワイトプラン」、auの「プランZシンプル」、ウィルコムの「だれとでも定額」、イー・モバイルの「通話定額オプション」のように、各社とも何らかの形で通話料を定額にできる割引サービスや料金プランを提示してきたが、国内No.1キャリアのNTTドコモがXi対応スマートフォン限定とは言え、こういった割引サービスを打ち出してきたのは、かなりインパクトがある。
たとえば、同じ事業者内ということであれば、ソフトバンクは約2700万、auは約3400万の契約者に対し、条件付で通話が定額で利用できたが、Xiカケホーダイは対象契約数が約5900万もあり、24時間いつでも掛けられるというのだから、無料で掛けられる相手の数は明らかに多い。
気をつけなければならない点があるとすれば、タイプXi にねんには無料通話分(無料通信分)が含まれておらず、ソフトバンクの「Wホワイト」のように、他社に掛けたときにも割安になるサービスも提供されないため、NTTドコモ以外の相手には21円/30秒の通話料が掛かるということだ。
もし、他社宛にたくさん発信するのであれば、FOMAのタイプMバリューやタイプLバリューなどの方が割安になるケースが考えられる。ただ、Xiサービスの契約はファミリー割引の対象にもなるため、家族がFOMA回線の契約のままであれば、無料通話分の多い料金プランに変更しておき、無料通話分を分け合うことで、通話料の超過をある程度、抑えることもできる。
パケット通信料 |
パケット通信料については、FOMAサービスと同じように、定額プランの「Xiパケ・ホーダイ フラット」、二段階定額の「Xiパケ・ホーダイ ダブル」が用意されるが、FOMAのように端末のみのパケット通信なのか、テザリングによるパケット通信なのかの区別がなく、定額料もFOMAのパケット定額サービス「パケ・ホーダイ フラット」「パケ・ホーダイ ダブル2」に相当する金額が設定されている。
2012年10月以降はデータ転送量が7GBを超えたときに128kbpsになる制限されるが、少なくとも現状で見る限り、テザリングなどを使うのであれば、FOMA対応のスマートフォンを利用するより、Xi対応のスマートフォンを利用する方が明らかにお得ということになる。極端な例を挙げてしまうと、いずれかのXi対応スマートフォンでXiを契約し、利用するエリアのほとんどがFOMAエリアだったとしてもXiサービスを契約する方がお得というわけだ。
今回の発表ではFOMAのパケット定額サービスのテザリング利用時の上限額を8190円まで値下げしたが、それでも現時点で3000円以上の開きがあり、FOMA契約のまま、テザリングを利用するメリットがほとんどないということになる。
これらの施策を見ると、NTTドコモはかなり強力にXiサービスへの移行を促しているようだが、それには理由がある。
これはあくまでも推測に過ぎないが、NTTドコモとしてはパフォーマンスだけでなく、コスト面でもXiサービスを明確に有利にすることで、頭痛のタネとなっているヘビートラフィックのユーザーをより周波数利用効率の高いXiサービスに移行してもらい、既存のFOMAサービスのトラフィックを少しでも軽減したいという考えなのだろう。
フィーチャーフォンが中心の時代は、パケット通信のデータ量をある程度、コントロールできたため、音声トラフィックの方がネットワーク負荷の懸念材料だったが、スマートフォンの生み出すトラフィック増による負荷はその比ではなく、早急な対策が求められていることの表われなのかもしれない。今後、スマートフォンの市場が拡大し、より幅広いユーザーが利用し始めることを考慮すると、Xiカケ・ホーダイのために音声利用が急速に増えたとしても早めに対処しておきたいというわけだ。ユーザーとしては、料金的にかなり魅力的であるものの、前述したバッテリー駆動時間などの不安もあるため、本当に移行するべきかどうかは、かなり悩むところだろう。
■新サービス「dメニュー」「dマーケット」
また、少しサービスについても触れておきたい。
NTTドコモは新たに「dメニュー」「dマーケット」というサービスの提供を開始することを発表した。dメニューは従来のiモード公式サイトで培われてきたコンテンツをスマートフォンで楽しめるようにするポータルサイトで、実際の操作画面もiモード端末の雰囲気をうまく継承している。すべてのコンテンツが利用できるわけではないが、サービス開始時に約700社、約3600サイトが利用できるとのことで、iモードを利用していたユーザーにとってもかなり移行しやすい環境が整うことになる。
一方のdマーケットは、「VIDEO」「MUSIC」「BOOK」「APPLI」の4つのストアから構成されるコンテンツマーケットだが、個人的に気になったのはVIDEOストアだ。先般、Xi対応タブレット端末の発表時、Huluとタイアップし、月額1480円で見放題の同サービスをNTTドコモのスマートフォン及びタブレット端末であれば、最大3カ月まで無料で視聴できるというキャンペーンを打ち出していたが、dマーケットのVIDEOストアは約5000タイトル、約2万エピソードが月額525円で見放題という料金体系が設定されている。
まったく同じタイトルが見られるわけはなく、サービスの仕様も異なるため、一概に比較できるわけでないが、比較的近いタイミングで似たようなサービスが2つも選べるようになってしまうあたりは、NTTドコモらしいというか、ユーザーにとっても戸惑ってしまいそうな印象だ。
ちなみに、VIDEOストアで提供される映像は最大1.5Mbpsで、スマートフォンのHDMI端子でテレビやディスプレイに出力することもできるそうだ。欲を言えば、映画会社や海外ドラマなどのコンテンツ配給会社とタイアップして、映画を割引で見られるようにするなどの工夫もして欲しいところだ。
■個性的なスマートフォンのラインアップ
さて、ここからは発表会後に行われたタッチ&トライコーナーで試用した実機の印象や各モデルの捉え方などについて、紹介しよう。今回も全24機種とモデル数が多く、とても一人ですべてを触りきることができなかったことをお断りしておく。また、いずれも開発中のモデルであるため、発売された製品とは差異があるかもしれない点をご理解いただきたい。
なお、各機種の詳しい仕様などについては、本誌のレポート記事を参照して欲しい。ちなみに、今回はスマートフォンの機種数が多いため、フィーチャーフォンについても紹介は割愛させていただいた。
【NEXTシリーズ】
▼ARROWS X LTE F-05D(富士通)
今回発表されたXi対応スマートフォンで、もっともハイスペックなモデル。9月に発表されたタブレット端末同様、富士通製端末の「ARROWS」のネームがつけられており、三種の神器(おサイフケータイ、ワンセグ、赤外線通信)に加え、防水や1310万画素カメラ、DTCP-IP対応DLNAなど、機能的にもハードウェア的にもほぼ全部入りのモデル。
CPUがデュアルコアのOMAP4430/1.2GHzを採用していることもあり、次期バージョンへのアップグレードも期待できる。F-12C同様、卓上ホルダでの充電に対応している点も評価できる。Wi-Fiの簡易登録はWPS/AOSSに対応するが、撮影した画像を指定サイズに切り抜く画像編集機能は確認できなかった。らくらくホンシリーズで培われた「はっきりボイス」などの音声サポート機能も充実しており、発表会では記者の関心がもっとも高かったモデルだ。
▼GALAXY S II LTE SC-02D(サムスン)
昨年来、すっかりNTTドコモのスマートフォンの看板となりつつあるGALAXYシリーズのLTE対応モデル。CPUに米Qualcomm製デュアルコアプロセッサAPQ8060/1.5GHzを搭載し、4.5インチのSuperAMOLED Plusディスプレイ、810万画素カメラを搭載する。
ネーミングは2011夏モデルの「GALAXY S II SC-02C」と似通っているが、ボタン部分のスペースは少し狭くなり、背面がマットな仕上げになるなど、若干デザインが異なる。スペック上はボディ幅が3mm増した69mmとなっているが、背面の処理が変わったこともあってか、それほど大きくなった印象はない。
従来モデル同様、オプションで卓上ホルダやジャケット型電池パックも販売される。ワンセグや赤外線通信などの機能はないが、3G部分は下り方向で最大14Mbps対応のHSDPAに対応するなど、基礎体力がしっかりと充実した1台だ。
▼MEDIAS LTE N-04D(NECカシオ)
NTTドコモ向けでは、スリムなモデルで人気を得たNECカシオのMEDIASシリーズのXi対応スマートフォンだ。今回はモックアップのみの展示だった。
防水やワンセグ、赤外線通信、おサイフケータイなど、日本仕様をしっかりとサポートしたモデルだが、意外に面白そうなのが省電力版Bluetoothの「Bluetooth Low Energy」を利用し、カシオ計算機製の腕時計「G-SHOCK」と連携する機能だ。G-SHOCKに電話やメールの着信を知らせてくれたり、置き忘れ防止ができるとのことだが、個人的にはこうした機能こそ、スマートフォンを胸ポケットに入れて持ち歩けない女性ユーザーなどに好まれるのではないだろうか。
ボディサイズは他のXi対応スマートフォン同様、少し大きめだが、すでにスマートフォンを使ってきたユーザーなら、それほどストレスなく、持つことができそうだ。
▼Optimus LTE L-01D(LGエレクトロニクス)
LGエレクトロニクスお得意のIPS液晶を搭載したXi対応スマートフォン。4.5インチのHD液晶はサイズが大きいだけでなく、視認性もたいへん良く、今回の発表会のタッチ&トライコーナーではもっとも人気の高かった1台。グローバルモデルをベースにしながら、おサイフケータイ、ワンセグも搭載しており、日本市場を強く意識したモデルとなっている。
防水対応ではないが、卓上ホルダもオプションで用意される。背面はマットな仕上げで、指紋が付きにくいうえ、曲面で構成されたボディは、手になじむ印象だ。金属調のホームボタンやディスプレイ周囲の枠など、アクセントの効いたデザインでまとめられており、シンプルながらも華やかな雰囲気も持つモデルと言えそうだ。
▼MEDIAS PP N-01D(NECカシオ)
NECカシオ製スマートフォンの「MEDIAS」に、「Power Plus」の意味を持つ「PP」というサブネームが付加されたモデル。1700mAhの大容量バッテリーを搭載し、ロングライフの駆動を可能にしたほか、Qi対応による「おくだけ充電」にも対応する。
ディスプレイは有機ELディスプレイを採用しており、視認性や発色は良好だ。「高感度タッチ」と謳われたタッチパネルの操作感は、従来のMEDIAS2機種に比べ、グッとレスポンスが改善された印象。SIMカードはmicroSIMカードを採用しているため、フィーチャーフォンから機種変更し、元の端末を使いたいときは注意が必要だろう。
MEDIAS LTE N-04D同様、Bluetooth Low Energyにも対応しており、G-SHOCKとの連携も利用可能だ。「MEDIAS WP」と同じように、ホームキーなどがタッチセンサーだが、慣れない内はディスプレイ最下段のアイコンを触ってしまうこともある。
▼ARROWS μ F-07D(富士通)
スマートフォン最薄となる6.9mmを達成し、フィーチャーフォンで超薄型端末に使われてきた「μ」のネーミングが与えられたモデルだ。これまでのスマートフォンでは、「MEDIAS N-04C」で7.7mm、防水対応の「MEDIAS WP N-06C」で7.9mmだったので、それよりも1mm以上、薄く仕上げ、なおかつ防水対応となっている。この薄さながら、濡れたときの操作を考慮してか、前面はボタンを装備し、タッチパネルも他の富士通製スマートフォン同様、「サクサクタッチパネル」を採用する。ディスプレイはGALAXY Sなどと同じワイドVGA表示が可能な有機ELディスプレイを搭載し、視認性もかなり良好だ。薄さ、消費電力の面でもアドバンテージがある。
「MEDIAS WP N-06C」に比べ、CPUが1.4GHzと高速化されていることもあり、熱対策が課題になりそうだが、三種の神器もすべて揃え、「ウルトラタフガード」と呼ばれる剥がれにくく、キズの付きにくい塗装も施されるなど、かなり注目度の高いモデルと言えそうだ。
▼BlackBerry Bold 9900(Research In Motion)
今夏、グローバル向けに発表されたBlackBerryシリーズの最新モデル。最新のBlackBerry OS 7を採用し、ディスプレイはタッチパネルに対応する。CPUもMSM8655/1.2GHzを搭載したことにより、全体的なキビキビ感がグッと向上している。
ディスプレイサイズが2.8インチと大きくないため、「タッチ操作は難しいのでは?」と考えそうだが、基本操作は中心のトラックパッドを使い、写真やブラウザなどで拡大操作をしたいときに、タッチ操作をするという使い方になる。ボディは周囲に金属調のフレームが装備されたことにより、従来のものに比べ、ソリッドなイメージに仕上がった印象だ。市場ではAndroidスマートフォン全盛だが、BlackBerryシリーズには法人向けに根強いニーズがあり、今後もNTTドコモは継続的に販売しそうだ。欲を言えば、BlackBerry Torchなどの少し違った方向性のモデルもラインアップに加えて欲しいところだ。
【withシリーズ】
▼ARROWS kiss F-03D / F-03D GIRLS’(富士通)
コンパクトなボディで女性ユーザーを強く意識したモデル。ホーム/メニュー/バックの3つのキーをジュエリーのようなカッティングで仕上げ、ボディ周囲のフレームでエレガントなイメージを演出するなど、女性ユーザーに好まれそうなデザインに仕上げている。
サイズ的には2011年夏モデルとして登場した「F-12C」とほぼ同じで、女性のような大きくない手でも持ちやすく、操作しやすいレベルにまとめられている。ディスプレイのタッチパネルは静電容量式だが、撮影した写真に手書きなどをするため、タッチペンが付属しており、ストラップとして提げておくことができる。
このARROWS Kiss F-03Dのバリエーションモデルとして、ティーン向け雑誌「Popteen」とのコラボレーションによる「F-03D Girls'」も発売される。ホームキーがリボンの形になっていたり、インカメラとアウトカメラの周囲がハート型、カラーバリエーションのネーミングを「ガチピンク」にするなど、10代の女性のこだわりを存分に活かしたモデルとして、仕上げられている。
中高生がスマートフォンを持つことについては、保護者側の抵抗もかなり強そうだが、これだけの作り込みをされると、当事者である女子中高生たちもフィーチャーフォンには目が向かなくなってしまうかもしれない。
▼LUMIX Phone P-02D(パナソニック)
パナソニックのデジタルカメラブランド「LUMIX」の名を冠したスマートフォン。フィーチャーフォンではNTTドコモ向けに2機種、ソフトバンク向けに1機種が発売されたが、スマートフォンではソフトバンク向けに続き、2機種目になる。提供される高速データ通信サービスが違うため、下り方向の最大通信速度などが異なるが、基本的な仕様はソフトバンク向けと共通となっている。
LUMIXでおなじみの「おまかせiA」、メールやSNSに写真をすぐに送信できる「ピクチャジャンプ」などの機能も継承されている。従来の「P-07C」ではタッチパネルのレスポンスが今ひとつだったが、今回のLUMIX Phone P-02Dは幾分、改善されている印象だ。ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信、防水にも対応し、バランスのいいモデルに仕上がっている。
▼REGZA Phone T-01D(富士通東芝)
2010年秋冬モデルで高い人気を得た「REGZA Phone T-01C」の後継モデル。東芝はすでに富士通東芝モバイルコミュニケーションズに統合されているため、実質的には同社が開発し、東芝のREGZAブランドを活かして展開するモデルだ。
スペック的にはXi対応スマートフォン「ARROWS X F-05D」をFOMA向けに再構成したもので、ディスプレイサイズや解像度、カメラのスペック、ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信、防水などの対応もまったく共通となっている。REGZA Phoneの名を冠しているため、映像高画質化技術の「モバイルレグザエンジン6.0」を搭載しているが、独自のものとして、スマートフォン初のなる指紋センサーの搭載が上げられる。防水モデルということもあり、パソコンなどに装備されているものとは違い、読み取り面の少し大きい指紋センサーが背面に備えられる。withシリーズ内ではAQUOS PHONE SH-01Dと並び、もっともハイスペックなモデルに位置付けられる。
▼AQUOS PHONE SH-01D(シャープ)
スマートフォンでは最大クラスとなる約4.5インチの3D液晶パネルを搭載したモデルだ。先にソフトバンク向けに発表された「AQUOS PHONE 102SH」とほぼ同じスペックとデザインを採用している。シャープは、2011年夏モデルまで、各社向けごとにデザインなどを変更していたのに対し、統一したデザインを採用してきたことになる。
ディスプレイサイズの大型化はバックライトによる電力消費が大きくなる傾向にあるが、シャープ製スマートフォンで共通採用される「エコ技」により、バックライトの消費電力を制御することで、ロングライフを実現する。3Dについては「SH-12C」でツインカメラを搭載していたのに対し、今回は1210万画素カメラ1基となったため、3D動画の撮影などはできない。カメラには新たに光学手ブレ補正が搭載され、暗いところでの撮影などに効果を発揮する。今回発表されたwithシリーズ中では、REGZA Phone T-01Dと並び、もっともハイスペックなモデルになる。
▼AQUOS PHONE slider SH-02D(シャープ)
NTTドコモ向けとしては初となる、Androidスマートフォンでありながらケータイ的なデザインを継承したモデル。スライド式のボディを採用し、ケータイと同じようなテンキーを備える。通常は閉じた状態で操作し、文字入力など、テンキーの操作に慣れている用途のときはボディをスライドさせて、テンキーを使うスタイルとなる。
今回試用したモデルは、開発中ということもあり、スライド式ボディを開いた状態で方向キーで項目が選べないなど、まだこなれていない印象も残ったが、製品版では改善されるという。シャープはau向けやソフトバンク向けにも同様のテンキーを備えたスマートフォンを提供し、一定の支持を得ているが、保守的なユーザーが多いとされるNTTドコモのユーザーにとって、スマートフォンに移行しやすいモデルとして、人気が出そうだ。ディスプレイサイズなどは標準的だが、ワンセグやおサイフケータイ、赤外線通信、防水はひと通りサポートしており、機能的には申し分のないレベルに仕上げられている。
▼P-01D(パナソニック)
今回発表されたスマートフォンの内、唯一、型番以外のネームがつけられていないモデルだが、特徴的な4つの空バリエーションが映えるボディデザインを採用したコンパクトなスマートフォンだ。
手に持ったサイズ感としては、ソニー・エリクソン製の「Xperia ray SO-03C」と変わらない。コンパクトなボディながら、ワンセグと赤外線は搭載しており、必要な機能を絞り込んだシンプルなスマートフォンという位置付けになりそうだ。多くのスマートフォンが4インチ前後以上のサイズを採用する中、P-01Dは3.2インチと小さい。デザイン的にはなかなか完成度は高いが、キャッチコピーで謳われている「ファーストスマートフォン」というポジションがマッチするのかどうかはちょっと気になる端末だ。
▼Q-pot. Phone SH-04D (シャープ)
2009年の「SH-04B」、2010年の「SH-04C」に続く、Q-pot.デザインの第三弾モデル。従来の2機種がフィーチャーフォンだったのに対し、今回はスマートフォンでデザインされている。残念ながら、今回はモックアップのみの展示だったが、タッチ&トライコーナーでも「美味しそう」という声が多く、従来モデル以上に争奪戦になりそうな気配だ。
スペック的には2011年夏モデルの「AQUOS PHONE f SH-13C」をベースにしており、おくだけ充電にも対応する。ちなみに、ワイヤレス充電の充電台はSH-13Cなどに採用されたものではなく、チョコレートをアクリルケースに収めたようなオリジナルデザインのものが同梱される。発売時期は2012年の2月ということで、バレンタインデーやホワイトデーの贈り物としても人気が出そうなモデルだ。
■他社を圧倒する充実のラインアップはユーザーに伝わるか
発表会にはCMキャラの堀北真希と渡辺謙が登場した |
今から約1年半前。NTTドコモはソニー・エリクソン製「Xperia SO-01B」を発売し、スマートフォン市場への歩みを始めた。その後、国内市場ではauの「IS01」、アップルの「iPhone 4」、ドコモの「GALAXY S SC-02B」、auの「IS03」と注目モデルが登場し、2010年の秋冬モデルではようやく各社のスマートフォンが出揃い、2011年夏モデルでは、ほぼ全メーカーがスマートフォンへの参入を果たした。わずか1年半の間に起きた出来事だが、まさに「目まぐるしい」という言葉で表わしたくなるほど、国内市場はフィーチャーフォンからスマートフォンへドラスティックに動いたという印象だ。
こうした動きを受け、2011年の秋冬モデル及び春モデルでは、9月に発表会を行ったauとソフトバンクはスマートフォンを主軸に据えたラインアップを展開した。機種数もグッと増やし、今まで以上に内容も充実してきた印象だ。
また、10月14日には「iPhone 4S」がauとソフトバンクから発売され、今年の秋冬商戦は一段とスマートフォンのカラーが強く打ち出されることになりそうだ。今回発表されたドコモの2011-2012冬春モデルでは、全24機種中、14機種のスマートフォンがラインアップされた。『ドコモ史上最多となる「28機種72色」の携帯電話を開発~』と銘打たれた昨年の2010~2011冬春モデルに比べれば、機種数こそ、わずかに少なくなっているが、スマートフォンの機種数は2倍以上に増えた計算だ。
その内容も他社以上に充実しており、単純にスマートフォンを開発したというだけでなく、それぞれの年齢層や好みといったユーザーセグメントに合わせた機種を作り込み、なおかつグローバルマーケットで発表されたばかりのモデルを最速でラインアップに加えるなど、「これでもか!」と言わんばかりの力の入れ具合いだ。
これに加え、Xi対応スマートフォンの発表に合わせ、新たにXiサービス向けの料金プランとNTTドコモ同士の音声通話定額サービスを発表するなど、かなりアグレッシブな発表だったと言えるだろう。
ただ、個々の端末を見てみると、以前から指摘していたWi-Fiの簡易設定などはほとんどの機種が対応し、非通知着信拒否や伝言メモなどの機能も対応製品が増えているものの、最大サイズで撮影した画像をiモード端末へ送るときのリサイズや画像編集、公衆無線LANサービスへの自動ログインなど、実用面での改良はまだまだ残されている。ユーザーセグメントを考慮したスマートフォンを開発し、デザインやユーザーインターフェイスのところまでは作り込みができたが、実際の利用シーンに合わせた細かい使い勝手の工夫は、もう一歩足りない製品が目につく。
もちろん、スマートフォンなので、ユーザー自身がアプリをダウンロードしてくるなどの工夫をすればいいのだろうが、これからスマートフォンへ移行しようかと考えているような人たちは、必ずしも自分自身で探すことができなかったり、諦めてしまうケースも多いので、キャリアとして、メーカーとして、もっと利用シーンに合わせた機能の作り込みが必要ではないだろうか。
そして、それ以上に今回のNTTドコモの発表で気になったのが機種数だ。NTTドコモは約5900万の契約数を持ち、幅広いユーザーのニーズに応えるため、ラインアップも増える傾向にある。ここ何年かは、ユーザーが買うタイミングを逸しないようにすることも考慮してか、10~11月に催される発表会では約半年分のモデルをまとめて発表してきた。
フィーチャーフォンの時代ならば、ユーザー自身も過去十数年程度の情報の蓄積があり、たくさんの機種が登場しても自分が見るべき、注目すべきモデルは、ある程度、予測や判断ができるだろう。ところが、今、フィーチャーフォンを使っていて、これからスマートフォンへの移行を検討している人たちは、スマートフォンについての情報を十分に持ち合わせていない可能性が高く、できれば、ひとつひとつをていねいに紹介して欲しいと考えているはずだ。
こうした状況において、スマートフォンへの移行が始まったからと言って、いくら半年分とは言え、いきなり14機種をドカンと並べ、それぞれの製品のアピールポイントや良さ、楽しさがユーザーに伝わるのだろうか。
本誌の発表会記事に対するTwitterなどでの反応でも「多すぎてわからない」「把握できない」「どれにすればいいの?」といった声が散見されるが、本誌読者のように、ケータイやスマートフォンに興味を持ち、ある程度、状況をわかっている人たちでもこうした声が上がってくるということは、ごく普通のケータイのユーザーには、とても製品の内容が伝わっているとは言い難い。
「わぁ~、ドコモからたくさんスマートフォンが出たんだ」くらいの情報しか伝わらず、結局、イメージやデザインなどでしか選ぶことができずに、十分にスマートフォンを使いこなせなかったり、不満を持ったり、間違った知識で使ってしまうことになり兼ねない。
NTTドコモは一昨年、「ひとりひとりのあなたに」というキャッチコピーを使っていたが、今回の発表に関しては「スマートフォンが気になっているみなさんへ。たくさん揃えておきました」という感じで、ややもすると、大ざっぱな発表になってしまった感は否めない。たとえば、Xi対応スマートフォンとXi向けの料金プランは別途、発表するなどの工夫も考えられたはずだ。もちろん、費用などの問題もあるため、そう簡単に片付けられる話でもないのかもしれないが、せっかくこれだけのラインアップを揃えられるのだから、一人ひとりのユーザーに対し、きちんとNTTドコモやメーカーの思いが伝わるようなスタンスで取り組んで欲しいところだ。
さて、今回発表されたモデルは、11月から順次、販売が開始される予定だ。発売までには少し時間が空くが、今後、本誌に掲載される開発者インタビューやレビュー記事を参考にしながら、自分のための1台を見つけていただきたい。
2011/10/21 19:50