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SDNの導入が期待される通信キャリアにおける3つの課題
(2015/6/5 11:31)
モバイルキャリアを含めて、通信キャリアネットワークではまだSDN(Software Defined Networking)の具体的な事例は出ていない状況である。各ネットワーク機器ベンダーは現状のキャリアネットワークが持つ課題を挙げつつ、キャリア向けのSDNコンセプトを提示している段階である。2016年頃からキャリアネットワークにもSDNの導入が始まるものと予測される。
SDNのキャリアネットワークへの導入が期待される背景には、現状のキャリアネットワークが抱える以下の3つの課題が顕在化しているからである。
1. 複雑なネットワーク管理
キャリアネットワークには、通信レイヤーや各ネットワーク・ドメインでさまざまな機器が導入されているため、ネットワーク管理がより複雑となっている。このためサービスの開通や変更の工数が増加し、ネットワーク運用管理コストの肥大化を招いている。
SDNを導入することで、既存ネットワークに比べ、設定の自動化などでコスト削減につながることが期待される。
2. 低いサービス付加価値
キャリアは多様な通信サービスを提供しているが、多くのサービス内容は固定的であり、オンデマンドでの帯域の増加など、ユーザーの利用状況に応じたサービスは提供できていない。異なるアプリケーションを利用しても同一の通信サービス品質を共有している。例えば、動画視聴アプリケーションとクラウド・ストレージ・サービスに対して同一の通信サービス品質が提供されており、各アプリケーションに最適な通信環境とは言えず課題を抱えている。
SDNは仮想的にネットワークを構築できるため、特定のサービスに特定の機能を有効にするといった細かいネットワーク制御ポリシーを設定することが可能となる。
3. 長期化する新サービスの市場投入
クラウドサービスは短期間でサービスを提供することができるが、これはプラットフォームであるサーバやストレージが仮想化されており、リソースをオンデマンドで確保することが可能だからである。一方、キャリアが新サービスを始めるためには、まず基本要件を策定し、ベンダーに開発を依頼、試験運用を行ってからサービス開始となり、1年近くの開発期間を要することが多々ある。
こうした課題に対して、SDNを導入してネットワーク・リソースを仮想化すれば、コントローラーとオーケストレーションでネットワーク・リソースを集中的に管理することができ、キャリアはアプリケーションと連携した付加価値の高い通信サービスを提供可能となる。また、新しい通信サービスを仮想ネットワーク上に動的に配置することにより、サービスインまでの期間も大幅に短縮することができる。