第589回:かざしてリンクとは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「かざしてリンク」とは、NTTドコモの2012年冬モデルから使えるようになった新サービスです。具体的には「NFC」という近距離通信技術を使った、機器連携に関するものです。

 2012年11月現在、ドコモの機種では「ARROWS V F-04E」「Xperia AX SO-01E」「ARROWS Kiss F-03E」「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」「ARROWS Tab F-05E」の5機種がNFC搭載機種となっています。

 携帯電話をかざすことで、決済サービスやポイントカード、乗車券などが利用できるサービスの総称として、これまでは「おサイフケータイ」が用いられてきました。ドコモでは今回、NFC対応スマートフォンの導入にあわせて、周辺機器と繋がる利用スタイルを「かざしてリンク」と名付け、1つのブランドとして展開することにしました。

 つまり、簡単に言えば、NFC搭載携帯電話を使って電子マネーやクーポンなど決済関連で使う場合は「おサイフケータイ」、それ以外の使い方で、周辺機器と連携するものを「かざしてリンク」という名前にしたことになります。

対応家電ならかざすだけ

 新たな利用スタイルとして名付けられた「かざしてリンク」ですが、ケータイ同士をかざす、あるいは家電やスマートポスターなどにケータイをかざすだけで、情報を取得したり、交換したり、設定したりといった操作を、ワンタッチでできるようになります。

 たとえば、NFCタグが内蔵されたスマートポスターにNFC対応ケータイをかざすと、そのポスターに記されている映画やイベントなどの情報を紹介するWebサイトへアクセスできます。また家電機器にかざして、その家電から情報を得て、使い方の参考にする、といったことも可能です。

 2012年11月時点で利用できる例としては、名古屋の東山動植物園がかざしてリンクに対応しています。展示物案内板に、おサイフケータイやNFC対応機種をかざすと、動物の映像を見たり、情報を得ることができるようになっています。

東山動植物園での展示を再現したデモNFC対応スピーカーがソニーから提供されている

 これまでのおサイフケータイでは、店頭に設置されているリーダーライターの多くがPOSレジそばに設置されていましたが、NFC対応スマートフォンが広がれば、NFC対応のICタグをテーブルに貼って、店舗会員へ登録するよう誘導したり、クーポンを発行したりするなど、店舗とユーザーの接点を増やせる効果が期待できる、とドコモでは説明しています。

 同様のことは、QRコードなどでも可能ですが、かざしてリンクの場合、携帯電話をかざすだけで情報取得、設定が可能で、QRコードをカメラで読み取ったりといった面倒な操作が不要になることもメリットの1つでしょう。

 また、ドコモが提案している使い方の1つとしては、周辺機器と携帯電話をワンタッチで接続できる、というような使い方があります。たとえば、スマートフォンとスピーカーの連携があります。スマートフォンで音楽を聴いている最中に、NFC対応Bluetoothスピーカーへスマートフォンをかざすと、スピーカーから音が鳴る、という使い方です。

 このスピーカーは、Bluetooth対応なのですが、従来、Bluetoothでは、2つの機器を接続するために「ペアリング」と言う作業が必要です。Bluetoothスピーカーとスマートフォンを繋ぐためには、まず互いの機器をペアリングできるモードにして、暗証番号を入力する、といった手作業が必要だったのです。

 一方、かざしてリンクに対応したスピーカーでは、NFCが自動的にBluetoothの接続情報を周辺機器と交換します。かざすだけで、スマートフォンからBluetoothを使ってスピーカーに対して音楽データを送るようになる、という仕組みになっているのです。

 このように、本来、BluetoothやWi-Fiといった無線で機器と機器を接続するには、事前のセッティングが必要でした。しかし、NFC対応の「かざしてリンク」では、NFC対応機器同士をかざすだけでセッティングが済みます。Bluetoothであればスピーカーのほかにも、キーボード、マウスといった機器、Wi-Fiであればプリンタなどの機器の接続がワンタッチでできると期待でき、より便利になるでしょう。

 ほかにも、ドコモでは自社のWebサイトで、「かざしてリンク」対応携帯電話に貯めた写真や動画をテレビやパソコンなどで閲覧したり、ゲームのアイテム交換など、気軽に楽しむことができる、としています。これからさらに対応機器やアプリケーションが登場すれば、よりスムーズに利用できるようになっていくでしょう。




(大和 哲)

2012/11/20 12:02