第470回:回転2軸ヒンジとは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「ヒンジ」とは、蝶番(ちょうつがい)を意味する英単語「hinge」のことです。蝶のような形の金具を2つ組み合わせて軸を作り、2つのものを開閉できるようにする金具です。たとえば、家の扉と壁をつなぎ合わせる部分などに使われています。

 「回転ヒンジ」は、ヒンジの一種で、つなぎ合わせた一方を、一回転以上回すことができるような形のものをいいます。そして「回転2軸ヒンジ」は、軸が縦方向と横方向に2つ作られており、かつ、軸の1つが回転ヒンジになっているもののことです。国内の携帯電話では、使う場面に合わせて液晶部分を回転できる機種が商品化されています。この回転を可能にしているのが、携帯電話の上半分と下半分を繋いでいる回転2軸ヒンジです。

 ヒンジの軸が2つになっていることで、携帯電話の折りたたみとディスプレイ部分の回転という2方向の動きが可能になりました。

 国内の携帯電話ではこの機構は比較的以前から使われています。たとえば、2003年には、NTTドコモの第2世代携帯電話となる「P505iS」(パナソニック製)で液晶ディスプレイが反転して背面側を向くようになっていました。

 2005年には「Active Turn Style」を謳うボーダフォン(当時)の携帯電話「902T」(東芝製)が発売されており、テレビ電話利用時に、相手と自分の顔をみやすくするよう使ったり、カメラ撮影時に使いやすいようになったりする点がポイントとなっていました。

 現在も、回転2軸ヒンジはよく使われています。2010年の夏モデルでは、ドコモの携帯電話「SH-07B」(シャープ製)にも採用されています。「SH-07B」は、回転2軸ヒンジを採用しながら、防水・防塵性能も備えた携帯電話になっています。

 携帯電話のほかにも、ビデオカメラのモニタ部分と本体部分の間に組み込まれモニターをさまざまな角度から見られるようにしたり、タッチパネル搭載のノートパソコンなどにも採用されています。ノートパソコンではキー側ボディとディスプレイ側を繋ぎ、通常のノートパソコンと同じように折りたためるほか、ディスプレイを表にして折りたたんでタッチパネルでタブレット型端末のように使うこともできるような機種があります。

 最近のモバイル機器では、視野角の広い液晶ディスプレイが搭載されており、ユーザーの「さまざまな角度から見たい」という要望、あるいは機器の使いやすさに影響する小型化や軽量化でのニーズに応える仕組みとして、回転2軸ヒンジがよく採用されています。

部品形状の工夫で回転角度に制限なども

 回転2軸ヒンジの仕組みを見ると、一般的には、縦方向の回転を実現する軸と、横方向の回転を実現する軸の部品を組み合わせて作られています。

 先述した「P505iS」では、2軸回転を実現する仕組みとして、“開閉する”縦方向と、“ディスプレイを左右回転”させる横方向と、2つのヒンジが組み合わされていました。同じパナソニック製の2010年夏モデル「P-06B」を見てもわかるように、最近の回転2軸ヒンジは、さまざまな工夫で部品を軽量化、かつ、小型したモジュールが開発されています。

 形状を工夫した2軸を組み合わせることで、一方の軸が回転したときにもう一方の回転に制限をつけるというような作りにすることも行われています。
 これは、たとえば、携帯電話のディスプレイが横方向へ回転しているとき、開け閉めをする“縦方向の回転”が可能になってしまうと、ディスプレイによってキーボード側の筐体を傷つけてしまうというような可能性があるため、それを避けるためにこのような仕組みも取り入れているのです。

 

(大和 哲)

2010/6/8 15:50