石野純也: NTTドコモ N705i Limited Edition 5000
ドコモの前社長、中村維夫氏が「ケータイの機能は行き着くところまできてしまった」と語ったのは、今からちょうど1年ほど前のこと。確かに、今年発売されたケータイを見渡すと、以前のように次々と新機能が登場するという状況ではなくなったことが分かる。今年は「カメラがメガピクセルに」「ワンセグ初搭載」「初のHSDPA対応端末」と、対応機能をそのまま見出しにできる端末も少なくなった。
だが、機能の見せ方を変えるだけでも、十分売りにつながる。今年の話題をさらったiPhoneは、その典型例といえるだろう。ディズニー・モバイルの「Dボタン」も、ワンクリックでつながるポータルをディズニー独自のものしただけだが、とても斬新だと感じた。また、世界観の演出も欠かせなくなった。先ごろ発表された「Walkman Phone, Xmini」のように、今後は、あえて機能を絞り込んでブランドの持つ力を活かす機種が増えてくるだろう。
というわけで、少々前置きが長くなってしまったが、今年の「俺のケータイ of the Year」は「N705i Limited Edition 5000」に贈りたい。理由は至ってシンプル。デザインや世界観に一目ぼれしたからだ。最近のケータイのデザインは、ミニマルでそぎ落とされたものが多い。以前のように、「あきらかに機能優先でデザインは後回し」という状況ではなくなったが、一方で、あまりにシンプルになり過ぎて、外見上の特徴が薄くなってしまった気がする。シンプルになる過程で、サブディスプレイも徐々に姿を消していった。
だが、N705iはあえてその逆を行くデザインを採用している。大胆に配置された背面のサブディスプレイもその1つで、ドットとアイコンしか表示されないレトロさが新鮮だ。金属でクールな質感を訴えるケータイが増えたなか、逆に木目調パネル(通常版はレザー調)で天然素材のぬくもりを表現したのも、この機種の特徴といえるだろう。さらに限定版は、パッケージにamadana製のイヤホンマイクが入っていたり、電池パックの裏にシリアルナンバーが刻印されていたりと、世界観を非常に大切にしている。世の中に5000台しかないという事実も、所有欲をくすぐる。
機能選択の上手さにも感心している。HSDPAやワンセグ、おサイフケータイなど、「売りになる機能」や「ないと困る機能」は網羅。一方で、ワイドVGA液晶や音楽再生の高音質化などは見送られた。全部入りではないが、優先順位の高い機能だけはしっかりカバーする――N705iに搭載された機能からは、そんな開発思想まで垣間見える。昨年はN905iμに「俺のケータイ of the year」を贈ったが、そこで挙げた条件を完全に満たしているのも、N705iを気に入った理由の1つだ。
機能だけを考えると、この機種も705iシリーズの中の1台でしかない。だが、同じ「きせかえツール」でも「TYCOON GRAPHICSのメニュー」といえば、全く違ったものに見える。当たり前の音楽再生機能も、amadana製のイヤホンが同梱されていれば、一気に存在感を増す。成熟期を迎えたケータイだが、勝負の軸は機能だけではない。むしろ成熟したからこそ、アイディアや見せ方、コンテンツで魅力的な端末を作ることができる。N705iは、そんな時代の変化を反映した1台といえるだろう。
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