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KDDI、動物園をもっと楽しめる「one zoo」をキャリアフリーで提供
オリジナル動画を毎日配信、ドローンを活用した水中・空撮動画も
2018年9月20日 22:46
KDDIと博報堂は、動物園で飼育されている動物の動画閲覧や、実際に動物園を訪問した際に役立つ音声ガイドなどに対応するアプリ「one zoo」(ワン ズー)を9月20日に提供開始し、よこはま動物園ズーラシア(以下、ズーラシア)にて報道関係者向けに発表イベントを開催した。同アプリはiOS向けに先行公開され、Android版は後日公開が予定されている。
通信・デジタル活用で動物園の抱える課題を解決
イベントにはKDDI ライフデザイン事業企画本部 ビジネス統括部長の繁田光平氏が登壇し、one zooの概要を紹介した。
同氏は、入園者数の減少、閉園する動物園の増加、支援する自治体の財政難など、国内の多くの動物園が課題に直面しているとした上で、動物園に直接関わる飼育員や自治体だけではなく、来園者となる市民が動物園の未来を助けるための取り組みとして、KDDIがone zooを提供する意義を紹介した。
KDDIは「auスマートパスプレミアム」会員向けに、毎週日曜日に国内18の動物園の入場料が無料になる特典を提供している。新たに提供するone zooアプリは、auの携帯電話サービスを契約していなくても利用できるキャリアフリーのサービスとして提供される。利用料金は無料だが月額500円(税別)の有料サービスを12月に提供する予定。
one zooアプリは、動物園内外で楽しめる動画コンテンツに加えて、動物園内で使える音声ガイド、園内マップ、スタンプラリーなどの機能も備え、アプリを活用することで動物や動物園をより深く知り、動物園をより楽しむことができる。
音声ガイドは園内に設置されたビーコンにより、園内の現在地に基づいて鑑賞している動物のガイドが流れる仕組み。スタンプラリーは、動物の足跡をかたどったオリジナルスタンプを作成し、スマートフォンの画面上にスタンプが押せる。
有料会員向けサービスでは、無料会員では1日5分までに制限される動物の動画が見放題になるほか、提供時期は未定ながら園内の動物のリアルタイム配信にも対応の予定。また、動物園内で利用できる機能・サービスとして、入園チケットや園内のカフェ・売店で使えるクーポンの配布、会員イベントとしてナイト・ズーへの招待なども計画される。なお、有料会員から得られる収益の一部は全国の公立動物園に寄付され、動物園の運営を助けるという。
動物園におけるIoT活用の将来的な展望として、ライブカメラ映像などで蓄積したデーターを元にした学術貢献・動物の健康管理や、一般的な施設よりも必要量が多い水道や電気の利用量をセンサー管理で最適化するなどの例も紹介された。
one zooは、提供開始時点で「よこはま動物園ズーラシア」(横浜市)、「天王寺動物園」(大阪市)「旭山動物園」(旭川市)の3つの動物園が参画する。これらの動物園は、前述のauスマートパスプレミアムの特典として提供される、動物園の入場料無料の対象の動物園となっている。KDDIでは、参画する動物園は2018年度中に10園を目標に拡大予定としている。
このほか、KDDIはone zooアプリ利用者の動向を分析することで、動物園の導線設計などに活用し、集客力向上や経営課題の解決に貢献するという。
レクリエーション以外の動物園の役割を知って欲しい
one zooのプレゼンテーションに続き、横浜市環境創造局局長の野村宜彦氏から挨拶の言葉が述べられた。横浜市は企業とのコラボレーションを積極的に取り組んでおり、スタジオジブリの映画「コクリコ坂から」でKDDIと横浜市らが共同プロモーションを行った事例などが紹介された。
野村氏は、one zooに期待する役割として、動物園はレクリエーション的な役割だけでなく、動物の種の保存・環境教育・調査研究など重要な役割を担っていることを広く市民に伝えていくことが重要であり、ズーラシアでは、生息地の環境を再現した動物の展示、飼育員による解説や小学校での出前授業などに取り組んでいるとアピール。
これらの取り組みに加えて、one zooの魅力的なコンテンツにより新たな動物園のファンの獲得、動物園の魅力がより多くの方に伝わることで、動物園への来園数増加や生物多様性への関心が高まることに期待したいと述べた。また、収益の一部が動物園へ還元される取り組みにより、動物園の持続可能な経営の一助になることへの期待も明らかにした。
one zoo参加動物園の園長らによるトークセッション
続いて、one zooに参画する動物園の園長らによるトークセッションが行われた。
旭山動物園園長の板東氏は、「動物園はアナログ的なイメージが強いが、旭山動物園では動物の行動展示に取り組むなど、先進的な取り組みを続けてきた。今は多くの方がスマートフォンを利用しており、動物園に来園した方、これから来る方をつなぐためのメディアとして、one zooを活用したい」と意気込みを述べた。
ズーラシア園長の村田氏は、「動物園側で発信できることがもっと沢山ある。新しいメディアを使って、もっと多くの人々に自然や動物園の素晴らしさを伝えたい」とする。また、同園の取り組みとして、病気やケガなどで通学することができない院内学級の児童・生徒らにVRコンテンツを通じて動物の魅力を伝えることができた事例を紹介し、今後は動物園の外に向けた情報発信が重要になると語った。
天王寺動物園の西岡氏は、同園が初めて夜の動物イベントを開催した際に、身動きが取れないほどの混雑となってしまい、満足に動物を観てもらうことができなかったことや、遠足などで同園を訪れる子ども達に多くの動物をみてもらおうとすると、次から次へと動物を観て歩き回るだけの滞在になってしまうことがあるため、本来の動物の魅力が十分に伝わりにくい課題解決に活用したいと述べた。