【Mobile World Congress 2018】

2画面スマホ「AXON M」の反響と今後、ZTEキーパーソンに聞く

MWCの中ではかなりの好立地に位置するZTEブース

 ZTEはMWCにおいてスマートフォンの新製品「ZTE Blade V9」と「ZTE Blade V9 VITA」を発表した。同社ブースでもそれらが展示される一方、端末展示エリアの半分ほどを占めるのが2画面スマホ「M」だ。そのユニークかつ目立つデザイン構造から、来場者の注目を集めている。

 「M」はZTEが製造。一方、企画開発はNTTドコモと共同で進められたとのことで、日本独自のスマートフォンとして扱われてもおかしくない製品だが、「AXON M」として、ZTEとNTTドコモが共同で、海外キャリア経由で販売を開始している。デザインや構造だけでなく、そうした開発の経緯や、販売の展開もユニークだ。

 今回のMWCではZTEのSenior Vice PresidentでZTE Mobile Devicesのアシア・パシフィック地域CEOのJacky Zhang氏にグループインタビューをする機会を得たので、AXON Mなど、同社の最新端末の動向や今後の取り組みなどについて、話を聞いてみた。

――まずAXON Mについて、グローバルでの展開の最新情報についてお聞かせ下さい。

ZTEのZhang氏

Zhang氏
 AXON Mについてはメディアに高い関心を持っていただいていて、感謝したいです。最新の動向としては、CESでモバイルデバイスのアワードを受賞したほか、欧州ではiFデザインアワードを受賞しました。

 展開については、日本のNTTドコモを始め、アメリカのAT&T、欧州のVodafoneとTIM、中国ではチャイナテレコムとJD.com(中国で高いシェアを持つECサイト)で販売されています。中国メーカーの端末として、アジア・欧州・アメリカと各国のキャリアでグローバルに販売される端末は、実はAXON Mが初めてでもあります。

 ユーザーからの評価も好調です。アメリカのAT&Tでの評価は5点満点中で4.6、JD.comでの好評度は100%となっています。日本での販売も順調で計画通り。ここまでの販売状況とメディアやユーザーによる評価・フィードバックから、この新しいカテゴリーであるデュアルディスプレイ端末の成功に確信を得ました。引き続き新しいモデルを開発していきたいと思っています。

 発売後、たくさんのフィードバックがありました。発表当初は、一部の人しか興味を持たないのでは、という声もありましたが、フィードバックを見るといろいろな人が興味を持ち、購入し、こちらの想定外の使い方がされているとわかりました。たとえば中国ではゲームをしながらほかのアプリを使ったり、女性の利用も想定より多いというようなフィードバックを得ています。今後はこうしたフィードバックに基づき、UI/UXを改善し、多くの人が使えるようにして、ユーザーの生活に浸透していきたいと考えています。

 こうしたフィードバックはNTTドコモとも共有し、今後の改善に取り組みます。また、日本ではNTTドコモの大手代理店とも話をしつつ、もっと販売に力を入れて、もっとたくさん販売していきます。

 AXON Mは、NTTドコモと共同開発しただけでなく、一緒にグローバルマーケットを開拓するという、いままでにない提携になっています。このようなビジネス提携も今後引き続き展開し、NTTドコモと一緒に市場を開拓していきたいと考えています。

ZTEブースのAXON M。こうした展示テーブルが4つほどある(1機種の展示としては多め)

――「中国メーカー端末のグローバル展開が初めて」というのはどういうことでしょうか?

Zhang氏
 AXON Mは、欧州・中国・アメリカ・日本に展開しています。同じモデルをこれだけの国のキャリアが採用し、同時にローンチするのは、中国のスマートフォンとしては初めてです。たとえばファーウェイはアジアや欧州では広く売られていますが、アメリカでは販売されていません。アメリカを含むグローバルで1モデル展開となると、AXON Mが初めてです。

――AXON Mはなぜグローバルのキャリアから高く評価され、採用されたとお考えでしょうか。

Zhang氏
 ひとつはこの端末はユニークなフォルムを持っていることです。2画面でやれることの自由度も高いです。キャリアから見ると、ハイエンドユーザーがたくさんデータ通信をする、魅力的な端末です。

 また、ほかのスマートフォンはみんな同じフォルムで刺激がありません。新しい刺激という点で言うと、AXON Mは最高です。AXON Mのような製品を投入することは、キャリアにとっても存在感のアピールになります。

 あとひとつは、このようなユニークな端末なので、他メーカーが作ると高くなるかも知れませんが、今回のAXON Mはリーズナブルな価格帯になっています。キャリアとしては新しい製品を出しながらも、価格面で魅力を感じてもらっています。

――ZTEはグローバルのオープンマーケットでも一定の存在感がありますが、AXON Mのグローバル販売でキャリアとのビジネスを軸にしたのには何か理由があるのでしょうか。

Zhang氏
 ファーストラウンドはキャリア製品のイメージが強いです。また、高価な端末なので、キャリアが興味を持ち、キャリア商品として市場に投入されているという流れもあります。

 一方で中国ではJD.comにおいて、コンシューマー向けに販売しています。今年はこのようにSIMフリーでのAXON M販売を強化したいと思っています。中国に続き、ドイツとロシアでもコンシューマー向け販売を展開します。

――SIMフリーでの販売を強化するというのは、グローバルのみの話なのでしょうか。

Zhang氏
 日本でSIMフリーで出すには、共同開発しているNTTドコモと相談するというのが大前提になります。NTTドコモには販売力やブランド運営ノウハウがあるので、最適な販売方法を相談していきたいと考えています。AXON Mをどのようにユーザーに届けるか、といったことについて、ZTEでは積極的に取り組んでいきます。

AXON M

――日本にはAXON Mとよく似たスマートフォンとして、かつて「MEDIAS W」がありました。MEDIAS Wはあまり成功しませんでしたが、AXON Mはその後継モデルとも言われることがあります。それをどうお考えでしょうか。

Zhang氏
 まず、各メーカーは新しいものに取り組んでいますが、それを改善していくことも重要な要素です。

 MEDIAS Wは当時の技術的な制約などで、ユーザーが求める製品を作れなかったと考えています。AXON Mは形こそ同じですが、中身を見るとだいぶ違っています。使っていただければ、UI/UXがまったく違うとご理解いただけるかと思います。

 MEDIAS Wは素晴らしいコンセプトだと我々も認めています。しかし技術制約でできなかったことがあったので、それを引き継いで改善しました。AXON Mにもまだいろいろな不備がありますが、そこを我々も、あるいは他メーカーも、常に改善していくことが課題です。

――AXON Mはシリーズ化して今後も新モデルが登場するのでしょうか。また、シリーズ化するとすると、2画面端末のシリーズ名になるのでしょうか。

Zhang氏
 AXON Mを第1世代として、シリーズ化して継続したいと考えています。AXONのほかのシリーズやBladeなどと独立したシリーズとすることで、引き続き新しいMを開発していきたいと考えています。

 また、いまのAXON Mは2画面ですが、今後は新しい部材(折りたためるディスプレイなど)が出てくれば、新しい構造のAXON Mを開発したいとも考えています。

 すでにAXON Mで蓄積したUI/UXのノウハウを元に、「M2」という仮称で、UI/UX改善を重要視した次期モデルの開発を始めています。AXON Mはシリーズ化して展開します。

――今後のシリーズもNTTドコモとの共同開発になるのでしょうか。

Zhang氏
 いちばん大事なのは、最終的にはエンドユーザーが求める製品を出すということです。どういった形で開発するかは、それぞれのタイミングを見て決めていきたいと思います。最初からキャリアと組む、あるいは途中から共同開発する、といったことにこだわらず、良いものを作りたいと考えています。AXON Mを開発したときも、NTTドコモだけでなく、AT&Tも途中で入ってきて一緒に開発し、最終的にはグーグルやクアルコムと一緒になって開発をしています。

 すでにM2の開発情報は各キャリアとも共有しています。そうした中で、各キャリア向けのカスタマイズなどもあると思っています。

新発表のZTE Blade V9シリーズの廉価版Blade V9 VITAもデュアルカメラを採用する

――AXON Mはデュアルカメラなど最新最高スペックというわけではありません。今後もこのスペックレンジを狙うのでしょうか。

Zhang氏
 細かいところはまだ説明できませんが、たとえばカメラでしたら、デュアルにするかどうかはユーザーフィードバックを含め、市場を調査分析して決めます。AXON Mは常にトップスペックを狙う、ということはありません。UI/UXをもっとも大きなファクトとして、Mシリーズを進化させていきます。とにかくより便利な製品をユーザーに届けたいと考えています。

 部品や部材の進化、市場動向の変化もあるので、そういったものを見て、どういったものが最適化を判断しながら、スペックを決めていきます。

――日本市場では防水へのニーズが高いですが、AXON M以外のモデルも含め、防水スマートフォンを開発される意向は?

Zhang氏
 ZTEもMONOシリーズなど、防水の技術を蓄積しています。しかしAXON Mを防水にするかどうかは、重さやサイズ、価格など、全体への影響を考えてから決めたいと思います。ほかのモデルについても、防水対応は増えていくと思っています。

――日本市場の戦略について、海外メーカー、とくに中国メーカーの参入で競争が激しくなっています。この環境で、ZTEはどのような戦略を採られるのでしょうか。

Zhang氏
 日本のスマホ市場はキャリア販売がメインになっているので、引き続き全キャリアと一緒に新しいもの、ニーズのあるものを開発して投入していきます。それと同時に、AXONやBlade、あとは今後登場する5G端末などもZTEにはあるので、今後も継続して日本市場を開拓していきたいです。

 日本市場はグローバル市場から見ると、ハイエンド端末ばかりです。一方でZTEは通信技術が世界トップレベルで、たとえば特許出願数は7連続トップ3です。日本市場においてはすでに8年以上展開し、トータルで800万台を出荷しています。そうした日本・グローバルでの実績を元に、どういった製品を日本で出すかが課題だと考えています。

新発表のZTE Blade V9。5.7インチのウルトラワイドディスプレイとデュアルカメラを搭載するモデル

――今回発表となった新モデルのBlade V9/V9 VITAは日本でも発売されそうでしょうか。

Zhang氏
 Bladeシリーズはグローバルで8000万台を出荷しています。V9のファーストローンチ地域に日本は入っていませんが、日本市場展開について、いろいろなところと商談をしているところです。

――ZTEは日米欧のトップキャリアとビジネスをされています。とくにアメリカは、ファーウェイが展開できていない一方、ZTEは成功しています(シェア4位)。その成功の理由をどう考えているでしょうか。

ZTE Blade V9 VITA。価格は179ユーロ(約2.4万円)から。買いやすい価格帯でウルトラワイドディスプレイ・デュアルカメラを備える

Zhang氏
 ZTEは長年、アメリカ市場で展開しています。最初からコンプライアンスと透明性を確保し、キャリアやユーザーとの関係を重視してやってきました。こうしたことが、アメリカでの展開が上手く行った理由だと思います。

 たとえばアメリカではZTEのオンライコミュニティを作り、ユーザーのフィードバックを得やすくして、製品企画にも反映しています。また、スポーツマーケティングも強化していて、NBAと最近ではPGAについても、独占のスマホスポンサーになっています。また、ZTEのアメリカのローカル社員は、8割以上がアメリカ人です。

ZTEブースでの1.2Gbpsの高速LTE通信デモ。机の下に仮想基地局があり、近づくと排気がやや暖かかった。ただし通信は有線の模様

――今回のMWCでは5Gがひとつのテーマとなっています。ZTEとしての5Gへの取り組みは。

Zhang氏
 5Gは一言でいうと、「もう目の前」です。ZTEでは、「4Gは個人の生活を変え、5Gは社会を変える」と考えています。5Gが使われるいろいろな利用シーンを考えると、これから大きく社会が変わっていくと思います。

 あと、ZTEでは無線技術中心に展開していましたが、これからは有線、端末、サービスを加えた4つの柱で5Gのビジネスを加速させていきたいと考えています。

ZTEはインフラベンダーとして、クアルコムと共同でチップセットレベルでの5Gの相互接続テスト(IODT)を実施している

 4G向けにも、5Gの一部技術を先行導入して商品を作ってきました。他社よりも素早く商品化できているので、これからも流れを加速させ、いろいろなところで我々の力を出して貢献していきたいです。

 業界内では「ZTEは技術の会社」として考えられていますが、一般ユーザーにも、ZTEのブランド力を明確にして、貢献できるのではないかとも考えています。キャリアと一緒に協力し、2019年の早い時期に5G端末をローンチしたいと考えています。日本においても、オリンピックごろに提供されているサービスに貢献したいと考えています。

――ありがとうございました。