【IFA2018】
「Xperia XZ3」ミニインプレッション――クリエイターとユーザーをつなぐソニーの戦略
2018年9月5日 12:29
ソニーはドイツ・ベルリンで開催されているIFA 2018のプレスデーに、プレスカンファレンスを開催し、同社の社長兼CEOの吉田憲一郎氏らが登壇し、ソニーの戦略を説明すると共に、ソニーモバイルのスマートフォンのフラッグシップ「Xperia XZ3」を発表した。
発表会の模様と、「Xperia XZ3」のミニインプレッションをお届けする。
クリエイターとユーザーをつなぐソニー
世界最大のコンシューマー・エレクトロニクスの展示会であるIFA。一般公開に先立って公開されたプレスデーに開催されたソニーのプレスカンファレンスでは、まず、冒頭に今年4月にソニーの社長兼CEOに就任したばかりの吉田憲一郎氏が登壇し、ソニーの戦略を語った。
ソニーは現在、エンターテインメント、エレクトロニクス、ファイナンスの3つを軸に事業を展開しているが、その中心にあるものとして、「Getting Closer to People(人に近づく)」というキーワードを掲げる。
たとえば、エンターテインメントのジャンルではクリエイターに近づくと同時に、それらを楽しむユーザーにも近づいている。ファイナンスでは保険や銀行などで人々に近づいている。
ゲームの世界においては、PlayStation Networkで月に8000万人を超えるユーザーが参加しているという。エレクトロニクスでは「Capture」「Record」「Watch」「Listen」というキーワードによって、人々のユーザー体験を結びつけている。
共通するのは「Reality」
これらのソニーの音楽、映像、ゲームの製品に共通しているテーマのひとつとして、吉田氏は「Reality」を挙げた。たとえば、音楽では「ハイレゾオーディオ」、映像では「4K HDR」があり、今後はモバイルネットワークが5Gに進化することで、リアルタイムも重要なキーワードになってくるとした。
その具体的な例のひとつに、スポーツのジャンルがある。スポーツは「Real-Time Entertainment」であり、ソニーはその映像を撮影するために、8Kカメラなどを提供する一方、サッカーのワールドカップでも注目を集めた「VAR(Video Assitant Referee)」や「Goal-Line Technology」などのシステムを提供していることも紹介された。そして、吉田氏のプレゼンテーションの最後は、欧州で初お披露目となるロボット「aibo」が紹介されて、締めくくられた。
Netflix の映像に最適化したテレビのフラッグシップ製品
続いて、ホームエンターテインメント&サウンド事業を担当する高木一郎専務が登壇し、吉田氏が触れた「Getting Closer to People(人に近づく)」を引用しながら、最新の製品群を紹介した。
まず、テレビはフラッグシップの「MASTER SERIES」として発表された4K対応有機ELテレビ「AF9」、液晶テレビ「ZF9」を紹介。どちらも画像プロセッサ「X1 Ultimate」を搭載し、高品質な表示を可能にすることを説明した。
この2機種には「Netflix Calibrated Mode」が搭載されており、Netflixのストリーミング映像を最適な状態で表示できる機能を搭載しているという。これも「クリエイターが意図した映像を再現する」という考えに基づいている。
有機ELディスプレイ搭載のXperia XZ3を発表
続いて、今年4月1日付けで社長に就任したソニーモバイルの岸田光哉氏が登壇し、ソニーのテレビやオーディオ、デジタルカメラ、ゲームなどの技術を活かした新製品として、「Xperia XZ3」が発表された。
Xperia XZ3の最初の特徴として、有機ELを搭載したことを挙げ、従来モデルでも搭載されてきた「X-reality for mobile」や「TRILUMINOS Display for mobile」などの技術に加え、「Dynamic Contrast Enhancer」を採用することにより、今までにない美しい映像を再現できるとした。
音響では本体前面に「S-FORCE FRONT SURROUND」を搭載し、映像や音楽、ゲームなどに合わせ、本体を振動させる「Dynamic Vibration System」により、臨場感のあるサウンドを再現。ディスプレイもHDRに対応し、PlayStation4 Remote Playも存分に楽しむことができる。
そして、Xperiaの新しい取り組みとして、「AI in Xperia」を挙げ、ユーザーの利用状況や時間、場所などの情報を活かした「Side Sense」と呼ばれる新しいユーザーインターフェイスを紹介した。側面をタップして、その位置にユーザーがよく利用するアプリ、そのシーンに合ったアプリを表示できるようにしている。
また、カメラについては従来に引き続き、4K HDR対応動画やフルHD対応スーパースローモーションの撮影に対応するほか、新開発の13MPフロントカメラには、「Bokeh(ボケ)」や「beauty effect」を搭載し、表現力豊かな撮影をできるとした。プラットフォームは最新の「Android 9 Pie」を搭載する。
最後に、世界各国で導入が計画されている「5G」について触れ、Xperiaシリーズとしても積極的に取り組んでいくとして、プレゼンテーションを締めくくった。
今夏発表の「Xperia XA2 Plus」も
プレスカンファレンス後に公開された展示スペースでは、新発表のXperia XZ3のほかに、今年7月に発表された「Xperia XA2 Plus」も展示されていた。
Xperia XA2 Plusは今年1月にInternational CES 2018で発表されたミッドレンジモデル「Xperia XA2」のディスプレイを大型化したモデルで、6インチのフルHD+対応ディスプレイを搭載する。
チップセットに米Qualcomm製Snapdragon 630、4GB、もしくは6GBのRAM、32GB、もしくは64GBのROMを搭載し、バッテリーは3580mAhのものを内蔵する。金属製ボディは幅75mmと、大画面ながらスリムで持ちやすく、質感の良いデザインに仕上げられている。
背面の指紋センサーの位置などもXperia XZ2などに比べると、自然な位置にあり、操作しやすい。日本での発売は予定されていないが、十分、日本市場でも支持されそうな仕上りだ。
有機ELディスプレイ搭載でスリム化したXperia XZ3
プレスカンファンレンスの終了後、ソニーモバイルはハンズオンセッションを開催し、「Xperia XZ3」の詳しい説明を行なった。Xperia XZ3の内容については、すでに発表直後の速報でもお伝えしており、スペックなどはそちらを参照していただくとして、ここでは会場で試用したミニインプレッションをお届けしよう。
ボディについては、従来のXperia XZ2に比べ、グッと薄くなり、ディスプレイの両端の湾曲や背面のラウンドした形状とも相まって、流線形とも言えるなめらかなボディに仕上げられている。
ボディのスリム化にはバックライトを必要としない有機ELディスプレイ採用が貢献しているが、その他にも本体のフレームもアルミニウム6000番台からアルミニウム7000番台に変更することで、切削や研磨などの加工がしやすくなるなど、ボディ全体の設計が見直されたことも関係しているという。音量キー、電源キー、カメラキーを右側面に並べる形状は、Xperia XZ2までの流れを受け継いでいるが、前後面の湾曲した仕上がりによって、手にしたときの持ち感と操作感は少し違い、Xperia XZ2のような『ゴツさ』は感じさせない。
前面には新たに採用された有機ELディスプレイを搭載する。ディスプレイとしての特性が違うため、当然とも言えるが、液晶ディスプレイを搭載していた従来モデルに比べ、色鮮やかで美しい映像を再現できている。それぞれの発色もいいため、液晶ディスプレイを搭載したXperiaを愛用しているユーザーには、少し色濃く再現されているように見えるかもしれない。動きのあるムービーなどもブレが少なく、映像コンテンツの再生などに適していると言えそうだ。
Xperia XZ3のディスプレイがある意味、特徴的なのは、上部の仕上げだ。
昨年のiPhone X登場以来、各社が発表するモデルは、形状を変更しやすい有機ELディスプレイの特長を活かし、ディスプレイ上部に「ノッチ」と呼ばれる切り欠きを作り、そこにインカメラなどを内蔵する構成でデザインされていた。
これに対し、Xperia XZ3はディスプレイの上部も下部もフラットなデザインで仕上げ、ベゼル(額縁)を黒く仕上げている。これにより、本体を横向きに構え、映像コンテンツなどを再生したとき、没入感が高められるという特長を持つ。
ノッチについてはユーザーによって、かなり好みが分かれるとされるが、敢えてスタンダードなデザインにしつつ、黒いベゼルで没入感を追求するあたりは、映像をじっくりと楽しんで欲しいというソニーらしいアプローチと言えそうだ。
また、有機ELディスプレイが搭載されたことで、焼き付きなどを防ぐため、基本的には画面をオフにする仕様だが、待受時でも時刻や通知を表示できる「Always on display」もサポートされる。「Sticker」表示や音楽再生時のアルバムジャケット表示などもサポートされている。
背面の仕上げは従来モデルよりもかなりスリムになったものの、指紋センサーやカメラの位置は変更されておらず、使いはじめは指紋センサーの位置に戸惑う印象だ。
ボディ周りで少し目を引くのが下部のUSB Type-C外部接続端子付近で、独特のカバーのようなもので覆われており、下部のデザイン上のアクセントのようになっている。ちなみに、従来モデルに続き、3.5mmイヤホンマイク端子は備えられていない。
ボディカラーはBlack、White Silver、Forest Green、Bordeaux Redがラインアップされる。4色の内、これまでのXperiaシリーズに見かけなかったのがBordeaux Redで、まさにワインの赤のようなシックな印象に仕上げられている。White Silverも美しい仕上がりで、光の当たり方によって、白っぽさとシルバーっぽさが変わるような印象を受ける。
ユーザビリティでは本体の側面をダブルタップしたときに表示されるメニュー「Side sense(サイドセンス)」が新たに搭載された。
メニューに表示される内容は、ユーザーの利用シーンをAIが学習し、時間帯や場所、利用シーンなどに応じて変更される。
ユーザー自身で常に表示するアプリを選んでおくことができるほか、メニュー内には通知エリアの表示、画面を縮小表示する片手モードなども用意されている。
サイドセンスのメニューはユーザーがダブルタップした位置に表示される仕様のため、左側面をダブルタップすれば、左側に表示され、右側面をダブルタップすれば、右側に表示される。上下の位置もダブルタップする位置によって違ってくる。
ちなみに、サイドセンスでタップする位置については、端末を握っっている他の指などを誤検知しないようにチューニングされているという。
実際に触った印象としては、最初はディスプレイとボディの境目をうまくタップできなかったものの、何度か触っている内にコツ(位置)をつかみ、慣れることができた。
サイドセンスはアプリのメニュー表示のほかに、スライド操作でバックキーの機能が利用できたり、カメラ起動時にダブルタップでシャッターを切ることができるなど、他のアプリや機能にも応用されている。大画面ディスプレイを搭載した端末は、どうしても指先の移動量が増えたり、持ちにくくなる傾向があるが、Xperiaとしてはサイドセンスをひとつのキーに、新しいユーザビリティを作り出そうとしている印象だ。
カメラについては基本的にXperia XZ2の仕様を受け継いでいるが、スマートカメラ起動と呼ばれるカメラをすぐに起動できる機能も用意されている。もっともXperiaシリーズは元々、側面にカメラキーを備えており、これを長押しすることでカメラを起動できるようにしているため、この使い方がどこまでユーザーに受け入れられるのかは未知数だ。カメラ周りで変更されたのはフロントカメラで、ボケ味の利いた写真やビューティーモードなどがサポートされたことで、今どきのユーザーのニーズにしっかりと応えてきた印象だ。
Xperia XZ3は今秋以降、日本を含む国と地域で発売されることがアナウンスされており、従来モデルと同じような形であれば、国内の主要3社から秋冬モデルとして発表される可能性が高い。今後の各社からアナウンスに期待したい。