本日の一品
どのカメラレンズにするか。1年間の使用焦点距離の統計から決める
2020年1月16日 06:00
今回購入したのは、カメラレンズ。ソニーのフルサイズ対応「SEL24240」なんだけれども、どうしてこれを選んだのか、というお話をしたいと思う。
仕事で長年愛用し、あちこちボロボロになりつつあるニコンD750。いったんメンテナンスに出そうと思っているのだが、そうすると何週間も不在になる可能性があり、その間は仕事ができなくなってしまう。なので、もう1台のカメラ、ソニー「α7 III」を2019年末に入手した。
とりあえず、経験上これがないと仕事にならない場面がある、ということが明らかな16-35mmの広角ズームレンズ(SEL1635Z)をセットで購入したうえで、じゃあ、広角以外の普段使い用にはどのレンズを選ぼうか、となった。
ニコンD750で使っていたのは18-35mmと28-300mmの純正レンズ2本。この組み合わせにはかなり満足していたので、ソニーでも似たようなパターンにしたいと思った。のだけれど、28-300mmを1本でカバーするようなソニー純正Eマウントのフルサイズ対応レンズは今のところラインアップにない。
一番近いのは24-240mm(SEL24240)だろうけれど、240mmを超える範囲を切り捨ててしまって大丈夫だろうか、というのが不安。かといって70-300mm(SEL70300G)にすると、今度は35-70mmの範囲がカバーできなくなるので、24-70mm(SEL2470Z)や24-105mm(SEL24105G)あたりをさらに追加しなければならない。
でも、実のところ105mmを超えるズームを使うことはそれほど多くないのでは? 定番でもある24-105mm(SEL24105G)にはちょっと憧れがあるし、これがあれば万事OKということだったらラッキー? みたいなことを考え出してしまい、決めきれない。
いろいろ悩んで購入できずに年を越した結果、いっそのことデータに頼ってみてはどうかと考えた。2019年の1年間、実際にどの焦点距離で撮影することが多かったのかを調べ、それを元に購入するレンズを決めることにしたのだ。
どうやって撮影時の焦点距離を調べるか。ご存じの通り、カメラで撮影したJPEGデータやRAWデータのなかには、撮影時の各種情報がExifとして記録されている。このExif内には焦点距離の情報も格納されているので、過去1年間の撮影データから抽出して統計を取れば、必然的に選ぶべきレンズが絞られてくる、はず……。
筆者は必ずRAW(ニコンのNEFファイル)で撮影している。焦点距離の情報を知るには、Windows 10ならエクスプローラ上でNEFファイルを選ぶだけ。けれども、過去1年間に撮った写真は大量にあり、それを1つ1つ調べていくと一体何日かかるのか……。何らかの方法で大量のNEFファイルから機械的に、高速に抽出しなければならない。
ネットを検索してみたが、複数のRAWデータから焦点距離を一気に抽出するツールなりライブラリなりは存在しないようなので(そんな都合のいいツールはさすがにないか)、プログラムを自作するしかない。NEFファイルは実質的にTIFFファイルみたいなものらしく、TIFFで定義されているExifの仕様をそのまま踏襲していることもわかったので、抽出はそこまで難しくなさそうだ。
ということで、Exifフォーマットの仕様書などを参考にPython 3でコマンドラインツールを作成した。サブ機であるニコンD7000(APS-C)のRAWデータも一部あったので、その場合は焦点距離を示す値を1.5倍し、フルサイズに換算。NEFファイルの総数、ファイルの合計容量を算出したうえで、NEFファイルを焦点距離別にカウントし、その結果をExcelシートで表とグラフにしている。1年間、正確には2019年2月から12月なので、11カ月分のデータを元にしたものだ。
11カ月間の撮影枚数はトータルで5423枚、容量にして約152GBとなった(原稿内で使用したものだけをカウント。実際の撮影枚数・容量はこれよりずっと多い)。で、焦点距離別のNEFファイル数をシンプルにグラフ化してみたのがこちら。
このグラフでは、18mm、28mm、35mm、300mmあたりが特に多くなっていることがわかる。18-35mmと28-300mmのレンズで、それぞれ一番引いたときと一番寄ったときの値だ。単純にそのレンズで「ギリギリまで引きたい(寄りたい)」と思うことや、微妙なズーム調整が面倒でざっくり撮るようなことが多いためだろう。見方を変えると、広角側・望遠側ともに足りていないとも言える。
それはそれとして、このグラフだけだと新たにどのレンズを購入すべきかがわかりにくい。なので、ソニーのフルサイズEマウントズームレンズのラインアップに合わせて、焦点距離の範囲別でカウントし、総撮影枚数におけるパーセンテージで表したのが以下のグラフだ。最も多いトップ3をオレンジにしている(グレーは購入済みのレンズ)。
これを見ると、24-105mmはそれなりにカバー範囲は広いが、それでも全撮影シーンの7割に満たない。グラフにはないが、購入済みの16-35mmと併用した場合、24-105mmとの組み合わせでは16-105mmで82%となる。撮影できないシーンが2割近く、枚数にして1000枚に上ると考えると、かなり厳しい。
一方、24-240mmであれば8割方カバーできることがわかる。併用して16-240mmとした場合は94%で、これなら許容範囲。残り6%の望遠側は写真のトリミングでなんとかなる部分もあるだろうし、いざというときはサブサブ機のソニーNEX-7(APS-C)に装着して最大360mmで使う手もある。
価格面では、24-105mmのSEL24105Gは実売16万円前後、24-240mmのSEL24240は実売11万円前後と5万円ほどの差があって、コストパフォーマンスを考えてもSEL24240が良さそうだ。
用途によってはレンズのグレードからくる画質の違いや、持ち運び時の大きさ・重量などにも目を向けなければいけないかもしれない。が、とにかく「撮れるかどうか」が重要な筆者の用途では、300mmまでのズームが必要になるシーンは今のところかなり限られ、24-240mmのSEL24240がベストな選択肢であることがわかった。そんなわけで、迷うことなくSEL24240を購入したのである。
製品名 | 発売元 | 販売価格 |
---|---|---|
SEL24240 | ソニー | 14万8000円 |