災害時にはフィーチャーフォンが頼もしい

2011年3月29日 06:00
(白根雅彦)

 3月11日、東北地方太平洋沖地震が発生し、東日本のほとんどの地域を巻き込む巨大な大震災となった。大津波の襲った東北地方を中心に多くの人命が失われ、街やインフラは大打撃を受けた。被害に遭われた方々にはお見舞い申し上げたい。

 東京は震源から遠く離れていたものの、大きな揺れに見舞われた。わたしはちょうどそのとき、東京・市ヶ谷にあるインプレスジャパン(Impress Watchの上のフロアにある)で書籍の仕事をしていたのだが、揺れが大きかったため、すぐにビル管理の人(だと思う)の指示で近所の公園に避難することになった。

 避難先の公園で、わたしはあることに気がついた。そのときのわたしが持っていたのは、iPhoneなど緊急地震速報とワンセグにも対応しないスマートフォンだったのだが、それらの端末は、こういった緊急時にはちょっと頼りないと感じられるのだ。公園に集ったインプレスグループの社員が、フィーチャーフォンや日本製Android端末でワンセグを見たりしている中で、わたしはというと、iPhoneでニュースサイトを見るか、Twitterでフォロワーと一緒にオロオロするしかなかった。

 この大震災の中に遭遇し、ワンセグと携帯電話向けの緊急地震速報の有無は、震災の中にあっては非常に大きな違いとなる、と実感した。

 モバイル向けのテレビ放送であるワンセグは、正確な情報を収集するための道具になる。災害時においては、正確な情報は水や食料に並ぶ重要なものだ。輻輳や基地局故障で携帯電話が通信できなくなっても、放送局さえ生きていれば使えるというのは、災害時には非常に頼もしい。

 ワンセグは、ほとんどのフィーチャーフォンにとっては当たり前の機能で、日本製のAndroid端末も搭載するようになっている。しかしiPhoneなど海外製スマートフォンは非対応だ。iPhoneの場合、ワンセグを視聴できる周辺機器があるが、常に持ち歩くかは微妙なものなので、緊急時への備えという点では、ワンセグ内蔵ケータイの方が安心だ。

 緊急地震速報は、地震を観測したとき、揺れよりも先に地震の発生を伝えるというシステムだ。携帯電話向けの緊急地震速報は、一本の電波を多数の端末が受信する、いわば放送に近い仕組みなので、回線が輻輳しても、遅延や失敗がない。

 携帯電話向けの緊急地震速報は、NTTドコモとauならここ3年で発売されたほとんどのフィーチャーフォンが対応していて、auでは一部のスマートフォンも対応している。しかし、それ以外の端末は非対応だ。緊急地震速報も万能というわけではないが、例えば料理中に緊急地震速報が鳴ったら、火を消して熱いものや刃物を安全なところに置く、といった基本的な対処ができるので、やはりあるとないとでは大きな違いがある。

 緊急地震速報のデータ自体は公開されているので、そのデータをスマートフォンに転送するサービスもある。iPhoneでいうと、「ゆれくる」というアプリがそうだ。しかしこれは通常のデータ通信を使っていて、遅延や通信失敗があるので、本当の携帯電話向け緊急地震速報に比べると、信頼性の面で劣る。

 いろいろ考えてみたが、残念ながら現段階では、ケータイを防災用品として使うならば、ワンセグと緊急地震速報に対応したフィーチャーフォンが圧倒的に有利と言わざるを得ない。災害はいつ訪れるかわからないので、常日頃からの備えるしか対策はない。わたしの場合、仕事で使うので複数キャリアの回線を持っているので、震災後はauのW62CA(コイツがいちばん頑丈そうなのだ)も持ち歩くようになった。

 そろそろスマートフォンの1台持ちをする人も増えてきていると思うが、まだしばらく余震や停電の危険性もあるので、関東や東北の人は、以前使っていたフィーチャーフォンを充電しておくなど、いつでも使えるようにしておいた方が良いかも知れない。