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「希望」を届けるケータイメール
KDDI総研 藤原正弘
 KDDI総研 第二市場分析室。専門は情報通信全般の社会・経済分析ということになっているが、まだネットワーク経済を勉強中の学生の身でもある。最近は、コンテンツ産業の調査にも手を出しており、「アキハバラ」にも馴染みたいのだが、なかなか踏み込めない二人娘の父親でもある。


 毎年12月1日は世界エイズデー。全世界のHIVエイズ患者は約3300万人と言われているが、南アフリカ共和国は、その1/5近くを占めている。近年、エイズの発症をおさえる薬も開発され、罹患率の上昇は止まっているが、それでも、南アフリカの若い女性の感染者は多く、15%を超えている。

 これまでにも政府は大規模な予防キャンペーンを行ってきたが、新聞の人口普及率が3%、テレビの世帯普及率が59%という状況もあって、効果は限定的であったようだ。そこで、今度は携帯電話の出番というわけだ。

 今回のプロジェクトは「マシルレーグェ」と呼ばれ、現地のことば(Zulu語)で「希望」とか「暖かい助言」とか「手をさしのべて!」といった意味を持っている。キャンペーンの規模も大きく、毎日100万通のメッセージを1年間送り続けるというものだ。

 メッセージの内容は、「体の不調が続いたり、HIV陽性の心配があるなら、AIDSヘルプライン○○までお電話を」といった感じだ。こんなに大量のメッセージを送るのは相当なコストもかかるし、毎日毎日キャンペーンのメッセージが送られてくるのでは、まるでスパムメールではないかと心配になるが、実は、そういう心配は無用なのだ。

 アフリカや中米の携帯電話では、PCM(Please Call Me!)というサービスがあって、これを使うとタダでメッセージを送ることができる。読んで字のごとく、「電話をかけてね」っていうメッセージで、たとえば、「*141*相手の電話番号#」とダイヤルすると、相手の携帯電話にメッセージが届くのだ。プリペイドタイプの携帯電話だと、ちょうどチャージが切れたところで連絡を取りたいときに重宝するのだが、もちろん、タダ=広告がちゃっかり入っている。このPCMをうまくキャンペーンに活用としようというのだ。

 南アフリカの携帯電話の普及率は8割を超え、毎日3000万通のPCMが飛び交っている。今回、そのうちの100万通に広告としてエイズ予防のメッセージを入れようという作戦だ。だから、新たにスパムメールが発信されるわけではないのだ。また、広告料のほうも、携帯電話会社のMTNがスポンサーということで発生しない。こうして、毎日100万通のエイズ検診をうながすメッセージが送られることになる。

 南アフリカでは、住民のあいだに「エイズ=不名誉」という感覚が根付いていて、検診をためらう人が多いそうだが、一人でも多くのいのちが救えることを祈っている。



URL
  MTN(英文)
  http://www.mtn.co.za/
  Project Masiluleke(英文)
  http://www.poptech.org/project_m/


KDDI総研 藤原正弘)
2008/12/24 14:31

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