ケータイ Watch
連載バックナンバー
セレブとケータイ節約術
[2009/05/28]

GPSケータイを忘れずに!
[2009/04/24]

モバイル、モービル、モブ……
[2009/03/25]

雪のロンドン
[2009/02/25]

「App Store」で一番高い買い物
[2009/01/28]


2008年

2007年

2006年

世界のケータイ事情タイトルGIF
カナダの忠犬ハチ公
KDDI総研 山條朋子
KDDI総研 制度政策グループ。専門は欧米を中心とした情報通信に関する制度・政策および市場動向。最近のレポートはKDDI総研R&A誌「米国のMVNO最新事情」(2008年9月第1号)。オバマ次期大統領の勝利宣言演説に感動し、来年は「Change!」の年にしようと決意。具体的に何を変えるかは未定。


 今回はケータイ業界で活躍するワンちゃんをご紹介しよう。といっても、ソフトバンクのテレビCMに登場する白い犬のお父さんのことではなく、カナダの携帯電話事業者「fido」の話だ。

 fidoというのは米国やカナダで典型的な犬の名前で、ラテン語の「忠実な」を意味する“fidus”がその語源。日本で言うと忠犬ハチ公といったところだろうか。携帯電話会社の社名が犬の名前とはかなりユニークだが、fidoのホームページを見ると、いたるところに可愛い犬の写真が出てくるし、パンフレットや携帯電話が入っている箱にも犬(しかも機種ごとに犬の種類が違う)がプリントされているそうなので、犬好きの人には相当ウケるに違いない。ちなみに私は大の猫好きなので、もし日本でミケ・モバイルとかタマ・ワイヤレスなんていうのが出てきたら即MNPする!

 現在、fidoはカナダ最大手のRogers Wireless傘下だが、元々はMicrocellという新興事業者のサービスブランドだった。当時fidoは、バンクーバーやトロントなどの大都市で、市内区域内の通話に限り固定電話並みの安い料金で利用できるという定額プランを提供して大手の事業者に対抗し、一人暮らしの若者や留学生など固定電話を持たない人々を中心に加入者を獲得していった。2004年にMicrocellがRogersに買収された後も、fidoはRogersの若者向けサブブランドとして格安のサービスを継続している。

 ここでカナダのケータイ事情について簡単に紹介すると、2007年末の時点で加入者数が約2000万で、固定電話の加入者数(約1900万)をようやく抜いたところ。人口普及率は約61%。ケータイの利用は音声サービスが中心で、SMS(ショートメッセージサービス)以外のデータサービスはあまり普及していない。

 カナダでケータイの利用が進まない原因の一つとしてよく挙げられるのが、料金が高いということ。月々の利用料金については割安のプランも結構出てきているが、問題はほとんど全ての事業者がユーザーに請求する「システムアクセス料金」というもので、これが月額7~9カナダドル(約510円~660円)もかかる。事業者はネットワークの拡大やアップグレードのために必要なコストと説明しているが、請求の根拠がはっきりしないということで消費者からの苦情も多く、いくつかの集団訴訟も起きている。


fido

 さて、fidoに話を戻すと、奇しくも隣国・米大統領選投票日の2008年11月4日、オバマ次期大統領の「Change!」の呼びかけに触発された……かどうかは知らないが、fidoはブランドのロゴと料金プランを一新すると発表した。新料金プランは最も安いもので月額15カナダドル(約1100円)からとかなりの低価格路線。その上、どのプランも悪名高いシステムアクセス料金がかからないのでユーザーの負担はぐっと軽くなる。

 しかし、ケータイに関するネット掲示板などを見ると、ユーザーはまだ十分満足していない様子。その理由はナンバーディスプレイサービスが有料オプションのままだということ。信じられないことに、カナダでは発信電話番号を表示させるために毎月7カナダドル(約510円)も支払わなければいけない。システムアクセス料金とナンバーディスプレイをだけで1600円……。こんなに色々とわけのわからない追加料金がかかるのでは、ケータイより固定電話でいいや、と思ってしまうのも無理はないかもしれない。

 これまでもユニークな料金プランやサービスで奉仕してきた忠犬fidoくんだが、カナダのケータイ業界にさらなる変化をもたらすために、まだまだがんばらないといけないようだ。



URL
  fido
  http://www.fido.ca/


KDDI総研 山條朋子)
2008/11/26 11:40

ケータイ Watchホームページ

ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.