2008年7月11日、世界の22カ国で一斉にiPhone 3Gの販売が開始された。晴れて、世界で最初のiPhone 3G所有者となったKiwi(ニュージーランド人を呼称する際のニックネーム。由来は同国に生息する飛べない鳥から)のJonny Gladwell君の第一声は「Right now, I just want to go home, sit down and play with it. But I want to sleep as well」。iPhone 3Gを早く使いたいというより、「早く家に帰って寝たい」というニュアンスの強いコメントだった。それもそのはずで、iPhone 3Gを手に入れるまでの3日間の彼の睡眠時間は何と6時間半。
時差の関係(日本との時差は3時間)で、世界で最初にiPhone 3Gを入手できるのはニュージーランドである。ボーダフォン・ニュージーランドはオークランド、ウェリントン、クライストチャーチの3店舗での販売を予定していたが、オークランドのQueen St店では定刻通り7月11日午前0時に販売を開始した。数分遅れでウェリントンやクライストチャーチ店でも販売を開始したため、世界で最初にiPhone 3Gの所有者となったのはオークランドでの行列の先頭でキャンプ・イン中だったAUT(Auckland University of Technology)の物理療法学科の22歳の学生であるJonny Gladwell君になった次第である。
Gladwell君はiPhone 3Gを手にするまでに、最終的には55時間も待ったことになるが、オークランド店には7月10日の早朝までに10人程度の行列ができ、販売開始の3時間前の午後9時までには約100人程度の行列ができた。もちろん、全員が手袋にスカーフ(マフラーの意味で用いられる。なお、ニュージーランドや豪州ではセーターのこともsweaterでなくjumperというのが一般的)の完全防寒装備。この行例のためにボーダフォン側はコーヒー、マフィン、ハンバーガー、ソフトドリンクを提供し、また、屋外用ヒーターやテレビも準備されたとのこと。なお、この行列の4番目には24歳の米国人男性が並んでいたが、彼は米国よりも一足早くiPhone 3Gを手に入れるため、わざわざ、米国カルフォルニア州のSan Luis Obispoからやってきたとのことであった。
さて、今回のiPhone 3G購入作戦であるが、その動機はヘビーユーザー特有のオタク心理とは別の所にあるようである。この購入作戦実行の真相は「Yellow Pageの協力だけで、iPhone 3G購入のために路上で3日3晩サバイバルできるか」という友達との賭けだったらしい。友人達も食事を運んだり、トイレのために代わりに並ぶというサポートをしたようであるが、この3日3晩作戦貫徹のために、Gladwell君はYellow Pageに掲載されているお店から、防寒対策グッズやで食事提供等の各種協力を取り付けたようである。
どんなお店がサポートしたのかをYellow Pageの HPを見ていくと、ダウンジャケット、ガスヒーター、マッサージ、髭剃り、スリーピングマスク、コーヒー、マフィン、ピザ、ハンバーガー提供の他に、何と警備を提供する会社もある。総勢17のお店や企業の中には「Renkon」という日本レストランの名前もあった。よくぞ多くのスポンサーを見つけたものと感心していると、なぜか「Click here to win ‘that phone’」のボタンがある。ということは、Gladwell君が世界で最初に手に入れるiPhone 3Gは最初から懸賞の対象? そういえば、行列に並んでいた数人は複数台数の購入を示唆していた。Gladwell君のそばにはサポートしていたガールフレンドもいたが、彼が購入したのは8GBの1台だけであった。