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袈裟とケータイ
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KDDI総研 菅谷知美 KDDI総研 調査1部制度政策グループ。専門は諸外国の情報通信政策、市場動向の調査。旅先では、携帯電話を使うわけでもないのに、国際ローミング圏内かどうか確認してしまう。最近のレポートは、KDDI総研R&A誌「中南米の最大手携帯電話事業者America Movil」(2008年1月号)、「カナダの携帯電話市場の動向」(2007年7月号)など。 |
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ポタラ宮からラサ市内の眺め
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昨年、初めて年末年始を海外で過ごした。場所はポタラ宮で有名なチベットのラサ、富士山頂ほどの高度にあるチベット仏教の聖地である。ラサまでは、中国青海省の西寧から青蔵鉄道を利用した。
青蔵鉄道は、世界一高いところを走る鉄道。全長約2000kmの半分近くが標高4000メートル以上である。途中、永久凍土地帯を通るため、線路の敷設には先端技術が駆使されているそうだ。この鉄道は、2000年に開始された中国の国家プロジェクト「西部大開発」の目玉事業の一つで、その運行にはICT技術が利用されている。GSM-R(GSM for Railway)システムで、列車と司令部間の音声・データ通信や制御信号の伝送を行い、地理情報システム(GIS)を応用して、列車の位置や速度、酸素レベルや電気系統状態を、中央管理センターで常時監視している。緊急時は、現場の写真や衛星写真を検証し、ヘリコプターの着陸場所を検討するそうだ。
さて、西寧からラサは、約25時間の長い長い列車旅であった。夕方西寧で電車に乗り込み、1等寝台車(軟臥車)で横になった私は、朝になったら車窓の風景や食堂車を楽しもうと考えていた。ところが、目覚めたときには高山病にかかっていた。頭のズキズキは止まらない。手も指もパンパンに膨れてきた。ここで終わりなのか……という考えが頭をよぎる。高山病にかかっていないツアー仲間は、最高地点5072mで写真を撮り、永久凍土を見て感動したそうだが、私にはあまり記憶がない。終着駅のラサに着くまでに、標高が3640メートルへと下がり、なんとか救われた。
ラサ滞在中は、巡礼に来た大勢のチベット人がお寺やその周辺で熱心に五体投地を捧げる姿を何度も目にした。信仰心の篤さと体力に圧倒される。高地に慣れていない日本人は早歩きしただけで心臓が痛くなるというのに。
夜になると、ホテルの前の通りにネオンが灯り、そのカラフルさにぎょっとした。ラサの町は、特に鉄道の開通以降、急速に変化し続けているという。新しい橋やトンネルが開通し、下水道の整備が進み、デパートやインターネットカフェさえ街中で見かけた。多くの漢民族が移住してきているらしく、ポタラ宮からは団地が見えた。携帯電話やデジカメをもっているチベット仏教僧もめずらしくない。郊外の山の頂上に立つお寺を訪れても、China Mobileの国際ローミング圏内。こんなところで携帯電話が使えるなんて……と不思議な気分で寺院の境内を歩いていると、オレンジ色の袈裟を着た一人のチベット僧が携帯メールを打っている姿に遭遇し、びっくりした。
そういえば、サンスクリット文字のようなチベット語、携帯メールで使えるのだろうか?
注:外国人観光客によるチベット自治区への旅行は、2008年3月中旬に一旦禁止されたが、2008年6月に解禁となっている。なお、日本の外務省は、引き続きチベットへの「渡航の延期をお勧めします」としている。
(KDDI総研 菅谷知美)
2008/07/24 12:18
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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