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技術革新を振り返る一品「マルティン・ルターの聖書」
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全編カラーでインクのシミなども完全にオリジナル版を再現している
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敬虔なクリスチャンでなくても、読者の皆様も一度は「聖書」を手に取られたことがあるだろう。国内外で、出張先のホテルの客室で、ベッド脇のナイトテーブルの一番上の引き出しは、たいていは聖書の収納指定席だ。聖書には多くの意味や目的があるが、一番大きな目的は、それを多くの人に読んでもらって信者を増やし、同時に理解を深めることだ。
最近でこそ、CD-ROMになった聖書や、Web上でPDFフォーマットで閲覧できるソフトコピー聖書が登場してきたが、本来は見ての通りの「印刷物」である。しかし、現代の印刷技術の基礎となった「グーテンベルグの印刷機」が15世紀の中頃に発明される以前は、キリスト教を広めるもっとも重要な役目の1つを担う「聖書」も手書きの時代だった。当時は、教会の僧侶がオリジナルの聖書から一字一句を羊皮紙に手書きで転写するのが唯一の量産手段であったのだ。
その面倒な手作業に革新的な変化をもたらしたのが、前述した「グーテンベルグの印刷機」だ。ヨハネス・グーテンベルグは、単語をアルファベットという活字である最小リソースに分解し、聖書が求める単語をその都度、再構成し、作り上げるという活版印刷を発明した。製品そのものは当時既に存在した、葡萄を搾る機械を応用した単純なものであるが、重要なのはそのメカニズムではなく、頻繁に使われるであろう単語という文字の集合を「最小のリソースに分解して、必要に応じて再構成する」というフレキシブルな概念を思いついたことなのである。
グーテンベルグの印刷機の発明以降、数十年の間にヨーロッパには多くの印刷工房ができ上がり、従来は写本による人海戦術だけで書物を出版していた世界に新しいテクノロジートレンドが見え始めた。ただまだこの時代は写本で作られた「本物の本」が珍重され、すべての製本出版が活版印刷機に移行したわけではなかった。しかし、16世紀に入って「人は 信仰によってのみ救われるのであり、信仰のよりどころは聖書である」と言う有名な言葉を生んだマルティン・ルターが登場、従来ラテン語であった聖書をドイツ語に翻訳し、幅広い層の読者を急激に増やし、印刷技術が社会の上層部だけではなく広く一般的な技術となる突破口を開いたのだ。そして、宗教面でもヨーロッパ全土を巻き込んだ宗教改革を精力的に推し進めることができたのである。
1534年に既にヨーロッパ全土に広がった活版印刷技術を用いて作られた「マルティン・ルターの聖書」は単に宗教の世界だけではなく、多くのその後の社会に多大なる影響を与えたのだ。その後、社会の重要な情報インフラの1つとなった「印刷メディア」は、1765年のジェームズワットの蒸気機関の発明により、蒸気エネルギーによる機械の前後運動を輪転機の回転運動に変換した。これが従来の1日1台300ページにしか満たない手作業に近い活版印刷技術を大きく変革する原動力となり、現代の新聞、インターネット、Webメディア等のファーストメディア誕生のスタートポイントとなったのである。
マルティン・ルターの聖書は、より多くの人に情報を伝えるということにおいて、プリントメディアが重要な役割を果たすことを、現実のテクノロジーを持って証明した歴史上の重要なイベントなのである。IT業界がこれから先、どのようになってゆくのか全く見当すらつかなくても、マルティン・ルターの完全レプリカの10kg近い聖書に右手を置いて過去の偉人の偉業を考えれば、ひょっとして何か閃くかもしれないと思っているのだが……。
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2分冊になっており、徒歩で持ち帰るには気合いが必要だ
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米国からの通販で購入すれば99ドル。日本までの送料を考慮すれば国内販売価格15,000円はきっとお得!?
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携帯電話と比較すると、その大きさが簡単に想像できる
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品名 |
価格 |
購入場所 |
マルティン・ルターの聖書 |
15,000円 |
神保町三省堂本店 |
(ゼロ・ハリ)
2004/01/26 10:55
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