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コルビジェの「シェーズロング」で
究極の寝たきり非モバイル生活!?

自然のポニー柄は多種多様だ。ヤフーオークションなどではそこそこ安く買えるが、専門店のように何種類もある中から気に入った柄を選べない
 日本とも馴染みが深く、世界的な建築家である「ル・コルビジェ」をは読者の方もご存じだろう。有名すぎる「ル・コルビジェ」という名前は実はペンネームであり、彼の本名は「エドゥアール・ジャンヌレ」という。1887年スイスで生まれた、20世紀でも最高クラスの建築家である。著名な作品には「サヴォア邸」や「ロンシャン礼拝堂」などがあり、国内でも有名過ぎるくらい有名だ。また、筆者の自宅の窓からも見える上野の森の「国立西洋美術館」は、日本で唯一、彼の設計による建造物だ。

 ル・コルビジェは家具クリエーターとしても才能を発揮、1920年代には、パートナーであるシャルロット・ペリアンとの共同作業により、有名な「シェーズロング」(Chaise Longue:仏)と呼ばれる寝椅子をはじめ、いくつかの個性的な椅子をデザイン、発表している。ル・コルビジェの建築コンセプトには“垂直と水平”という明快な考え方が根底にあり、どちらかと言えば、建造物にも直線的な美しさを追求したモノが多い印象を受ける。

 しかし、その基本コンセプトとは多少発想を異にする曲線と直線のバランスが見事にとれた「シェーズロング」(LC4)は、コルビジェの建築設計思想に加え、後に世界初のインテリアデザイナーと呼ばれたシャルロット・ペリアン女史のアイデアが大きく反映されていると考えるのが自然だろう。LC7やLC8と呼ばれる回転椅子も、LC4と同様に曲線を見事に扱った、歴史に残る名作椅子だと思う。

 最近、自分が歳をとってヨボヨボの爺になった時に、いったい誰が力になってくれて、何が必要かを考えた時、まず思い浮かぶのは「愛犬」そして「モバイルPC」そして「インターネット」だろうと、ぼんやりではあるが、辛うじて見えだしてきた感じがする。

 ただのモバイルPCなら、いつまでキーボードを叩けるか不安だし、目だっていつまで今のまま見えるかあやしいモノだ。そう考えると、音声入力や音声応答ソフトウェアを今から訓練しておく必要もありそうだ。昔、ちょっとは触ったことのある楽器の「トーキングモジュレーター」の練習をまた始めようかとも考えた。

 将来、こうした機能を満載した超優秀なモバイルPCがインターネットに接続されていても、実際にそれを操作する環境が必要だ。高級ホスピタルの集中治療室に置いてあるような完全リモコンの電動フル・オートマティック・ベッドも悪くはないが、それではまるでただの重病人か、映画「ボーンコレクター」のリンカーンのようだ。できればそこそこ優雅なソファか何かが気分的には最高だ。


 そんな思いを巡らしていた時に、家具の販売面積では圧倒的な広さを誇る大塚家具の新宿ショウルームで、前述の「シェーズロング」を見つけてしまった。以前から興味はあったものの、平均的日本のウサギ小屋マンションのリビングルームサイズに比較して、その法外な大きさや値段が抑止力になって、見て見ぬふりをしていたのが現実だった。横浜から都内への引っ越しを機会に、「リビングにはもう何もモノを置かない!」と誓って、その舌の根も乾かないうちに、以前より沢山のモノを買い込んでしまってもいた。

 しかし結局、清水の舞台から2~3回飛び降りた気分になって、過去収集した何個かの椅子を整理し、“誰もがいつかは欲しいコルビジェの椅子”という表現がピッタリのシェーズロングを導入することに決めた。配送され、リビングに設置された「シェーズロング」は茶色と白のポニー毛皮をまとった長さ160cm、幅57cm、高さ73cmの巨大寝椅子であった。しかし、単に豪華なだけではなく、円弧を描いた「スチールパイプ・ソファ部分」とそれを固定する黒い「スチール製の台座」との間で、シーソーのように連続的に傾きを変えることのできる画期的な寝椅子だ。

 大きさは不変なのに、子供から長身の大人まで、そのサポート範囲は広い。一見しただけでは、固定されているように見えるソファ上の姿勢を想像して窮屈さを感じるが、実際にシェーズロングに寝ころんでみると、膝を上げ、低い位置に腰を置くその姿勢は意外と「楽ちん」で、ソファ部分全体の傾きを変えることで、自然と変わる目線の高さから、毎回、新鮮な感覚が生まれ変わって来る感じなのだ。

 昨今、ホームITの世界は、猫も杓子もワイヤレスLANブームだが、常に“反体制でマイナー”が大好きな筆者は、今回の引っ越しに合わせ、多くはないマンションのすべての部屋に有線LANを引いたので、ちょっとうっとおしい梅雨空を見ながら、遠くに国立西洋美術館を眺め、シェーズロングに寝ころび、有線LANの快適なスピードでインターネットをエンジョイし、ヤフオクで最後の10秒落札の快感に浸りながら、それほど遠くはないであろう「寝たきり非モバイル」生活の実証実験を毎日行なっている。ただひとつ心残りなのは、これで本当に幸せなんだろうか、と時々思うことだ……。


大きくカーブを描いたソファ部分が四角い台座の上を自由に角度を変えて、オーナーの好きな角度で固定できる優れた設計だ 一見使い心地が悪そうに思えるが、超快適なヘッドレスト

品名 購入価格 購入場所
シェーズロング(レプリカ)LC-4 148,000円 大塚家具
新宿ショウルーム



(ゼロ・ハリ)
2003/08/27 11:02

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