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レンジの電磁波を遮断する「レンジバリア」で無線LANは速くなる?
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レンジバリア 製品のパッケージ。最近パソコン量販店でよく見るシートタイプの液晶フィルターに似ている
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昨今急速に普及しつつある無線LAN。中でも、先日正式承認された2.4GHzの無線LAN規格「IEEE802.11g(以下11g)」は、理論値54Mbpsの高速通信が可能なことと、障害物に強いことから、一般家庭における無線LAN規格の本命とされている。数枚の壁をまたいで通信できるというのは、確かに日本の住宅環境において大きなメリットである。ところがこの11g、その電波特性ゆえに他の機器と干渉しやすい欠点も兼ね備えている。つまり、周囲に同じ2.4GHz帯の電波を出す機器があると、速度がガクンと落ち込むのだ(筆者の経験では、環境や時間によってスループットが5~10Mbps変動することはザラである)。
家庭内にある「2.4GHz帯の電波を出す機器」のうち、影響が大きいものは2
つ存在する。ひとつは11g無線LANの下位規格である「IEEE802.11b」(以下11b)の無線LAN、もうひとつは電子レンジだ。現状で11gを用いて快適に通信するためには、これらの機器の干渉をなるべく防ぐのがコツである。無線LAN機器メーカーはそれぞれ11g機器に干渉低減の通信モードを用意しているが、干渉の対象となる機器がないに越したことはない。
このうち、11b製品については対応は容易である。機器そのものを思い切って11gに買い換えるか、有線に戻せばよい。実際、筆者宅ではクリーンな環境で11gを使いたいがために、半年前に購入した11bの無線プリントサーバーを売り払って有線LANに戻してしまった。もともと11gは11bとの互換性がウリの規格なので本末転倒といえばそうなのだが、現状ではまあ仕方がない。
一方、電子レンジの場合は少々厄介である。そもそも電子レンジは、2.4GHz帯の電磁波を食品に照射し、分子レベルで水分を振動させることで温度を上昇させるという仕組みである。その際、電磁波の一部がレンジ外に放出され、無線LANに悪影響を与えるというわけだ。経験のある方も多いと思うが、無線LANを利用していて「あれ?急につながらなくなったぞ?どーして?」という場合に限って、台所で電子レンジが回っていたりする。冗談のような話であるが、事実である。
とはいえ、いくらスループット向上のためとはいえ、電子レンジを処分するわけにはいかない。そんなことを家庭内で強硬に主張しようものなら、逆に無線LAN機器をポイッと捨てられるのがオチである。
そこで今回、メイワパックスから発売されている「レンジバリア」という製品を用いて、無線LANのスループット低下を抑えることが可能か検証してみた。この製品は電子レンジの窓に貼り付けて使用するシートタイプの製品で、「漏洩量の多い電子レンジの窓のすぐ近くの電磁波を90%カット」と銘打たれている。さすがにパッケージには無線LANに関する記述は見当たらないが、文面をそのまま解釈する限り、2.4GHz帯無線LANのスループット低下を防止する効果があってもおかしくないと思われる。
実験に用意した環境は以下の通りである。
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シートを剥離紙からはがしたところ。シートは透明なので貼ったままでもレンジ内部が見える
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11g対応の無線LANルータ(メルコ製WBR-G54)と、11g対応無線LANカード(エレコム製LD-WL54AG/CB)を装着したノートパソコンを用意し、電子レンジの両側に設置。ルータに有線接続したサーバーマシンから約30MBのファイルをFTPで転送して所要時間を測定するという実験を、電子レンジの非動作時/動作時(レンジバリアあり)/動作時(レンジバリアなし)の3つの環境下で行なった。ちなみに電子レンジ動作時は冷凍グラタンを連続して解凍する。解凍時間は一皿につき約8分で、解凍したグラタンはそのまま食卓に並び、筆者の胃に収まるものとする。
さて、それぞれの環境で、約30MBのファイルをダウンロードした結果(※2回試行しての平均値)はというと……。
電子レンジ |
バリア |
所要時間 |
非動作 |
- |
1分08秒 |
動作 |
なし |
3分47秒 |
あり |
4分03秒 |
……って、オイ。レンジバリア貼った時のほうがスループット低下してますがな(苦笑)。電子レンジを動作させた時に速度が1/3以下に落ち込むことはよ~く分かったが、肝心のレンジバリアの効果はまるで見られない。う~~~む。
実験回数を増やせば多少違った結果が出るかもしれないが、解凍済みの冷凍グラタンをこれ以上大量生産するわけにいかないので、とりあえず今回の実験はここで終了である。できれば電子レンジをオーブンモードで使用した場合や、中の食品を冷凍ピラフや唐揚げにした場合も試してみたかったが、今回はちょっとパス。まあ、別にピラフに変更した途端スループットが急上昇するとは思えないけど。
そんなわけで今回の実験は「効果なし」という結果に終わってしまったが、レンジバリアという製品そのものは、人体への有害説も囁かれる電磁波を低減してくれる有益なアイテム、のはず(と一応フォロー)。価格的にも手頃なので、興味がおありの方は是非ご家庭の実環境でお試しいただきたい。筆者も効果のありそうなアイテムを発見したら、あらためて実験したいと思っている。
(kizuki)
2003/07/04 11:01
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