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注文から届くまで5カ月 ザ・レジェンド・オブ「線香花火」!?

25本の「ひかり撫子」は桐箱に入って届けられる
 近頃、「線香花火」で遊んだことがあるだろうか? かくいう筆者も、もう何年も「線香花火」はやったことも実物を間近に見たこともなかった。日本の夏のおもちゃ花火の代表的存在である「線香花火」。日本人である我々はこの線香花火をよく知っているようで、実はあまり知らないのかもしれない。線香花火は見た目は非常にシンプルだが、完璧な線香花火を作り上げるには相当の技術と経験が必要なようだ。

 材料は極めてシンプルだ。和紙(こうぞ紙)と硝石と硫黄と松煙。これだけの材料があれば日本の伝統的な線香花火は確実にできるのだ。しかし、美しく咲く線香花火を作るに、質の良い材料以外に、経験に裏付けられた確実な技術が必要なのだ。最近は、紙縒(こより)を見ることもなくなったが、筆者の祖父もそうだったように、昔の日本人なら誰でもできたものである。昔の日本人の器用さが実現した紙縒が線香花火の重要なキーコンポーネントなのである。質の良い和紙をバランスのとれた堅さで縒ることで光り輝く松葉のような火花が飛ぶ。単に紙縒の見かけだけを真似ても、ほんの少しの違いで綺麗な火の玉は落ちてしまうのだ。

 関東地方で見かける線香花火は、この紙縒に0.01グラム以下の微量の火薬を織り込んだモノだが、筆者の生まれ故郷である大阪やそれ以西では、俗に「スボ手」と呼ばれる線香花火が普通なのだ。使用する火薬はほとんど同じ調合ではあるらしいが、水で練った火薬を藁(わら)の穂先に蒲(がま)の実のようにつけて乾燥させた線香花火がお馴染みだ。

 伝統的な本物の線香花火を最近見ることができない理由は、これらの伝統的な技術を持った花火職人が極めて少なくなったことと、すべてが完璧な手作業であるがゆえの、膨大な人件費の吸収方法が産業として見つからないのが大きな理由だろう。しかし、それと同時に、線香花火に必要な原材料である「楮」(こうぞ)で作った日本の伝統的な和紙や、松の切り株を焼いたときにしか出ない「松煙」等の材料の不足も同じくらいクリティカルな問題なのだ。化学的に同等の物質を使用しても、なぜか本来の線香花火の味は出ないと言う。


乾燥剤の入ったパッケージにひかり撫子の由来も書かれている 野山で摘んだ草花の汁で染め上げた和紙を使って縒り上げられたひかり撫子

 幸いなことに、これらの全てを完璧なまでに再現した線香花火が日本にはまだ存在する。今日、ご紹介する「ひかり撫子(なでしこ)」と名付けられた線香花火は製造後2~3年近く経過した後がベストな状態らしい。今回購入した線香花火を楽しめる頃は日本のe-Japan構想は完了している頃だろうか? 群馬県の伊香保温泉に向かう途中にある小さな町、吉岡町で35年間、線香花火の研究を続け、昔のすばらしかった線香花火を目指して「ひかり撫子」を作っておられる斉藤公子さんが居られる。線香花火を作り始めたのはお客さんから「最近の線香花火は火花が小さくなった……」と言われたことがきっかけらしい。全てを手作業で、材料を選んでじっくり作ると国産の線香花火は1本作って製造コストが100円以上になってしまうらしい。日本国内で販売されている中国製の線香花火は1本1円だそうだ。この百倍という価格差に何を感じるかは、人それぞれだろう。

 ひょっとすると、そろそろ、「何でも安ければ良い」という日常の考え方を見直すべき時なのかもしれない。衣服やパソコン、旅行や日用品、手間と時間、良心を込めて作った製品はそれなりの値段がしてしかるべきなのだろう。大事なことは、だからそれなりの価格になっているモノと、ただ意味もなく高いモノの区別を、我々消費者が見抜く目を養うことだろう。一方的に、何にでもただ安いことだけを求め続けることが現在の日本をおかしくしている可能性はないのだろうか? 筆者は、お世話になった人や親しい友人にもお裾分けするために、「ひかり撫子」(5本×5セット=25本入り)を5箱買い求めた。

 最高の線香花火の噂を聞いて、感動して、2002年の春に注文をして、「ひかり撫子」を受け取ったのは11月の末だった。2年後にこの「ひかり撫子」に火をつけて、落ちることなく踏ん張る大きな火玉とそこから分離して大きく輝く火花を見た時には「安い買い物」をしたと感じるだろうか。2年後にはそういう大らかな気持ちと心の余裕を持っていたいと思う。

品名 製造元 価格
線香花火「ひかり撫子」
5本×5セット(桐箱入り)
(有)群馬火工製造所 3000円/箱



(ゼロ・ハリ)
2003/01/20 11:07

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