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2つのレトログラードの動きが楽しめる
ジェラルド・ジェンタ「レトロ バイレトロ」
エッジが丸められ、丸っこくかわいい印象を受けるケース。ケースの側面はコインエッジに加工されている
一瞬、何時なのか理解できない文字盤。この画像では、11時11分を示している。2本の針はブルースチール加工がなされている
ゼンマイの力によって動く機械式腕時計のほとんどは、数本の針によって時刻を表示するように作られており、それらの針の多くは右回りの一定方向に回転するものだ。しかし、レトログラードと呼ばれる機構を持った時計の針は、右回りに回り続けることはなく、ある角度まで針が進むと元の位置まで戻るような動きをするのだ。扇のような軌跡で針が動くと表現したほうがわかりやすいかもしれない。
このレトログラード機構を持った時計で有名なブランドが「ジェラルド・ジェンタ」である。ジェラルド・ジェンタ社は、創設者の名前を社名として1970年代に創立された。時計師ジェラルド・ジェンタ氏は、自らブランドを立ち上げる前には、パテックフィリップやオーディマピゲといった超一流メーカーからデザインの依頼を受けたり、時計自体の製作を行なったりしており、当時から技術力やデザイン能力に関して高い評価を得ていた。
「ジェラルド・ジェンタ社」を創立し、それまで行なってきた極めて複雑で高価な時計の製作も行なう一方で、レトログラード機構を用いた時計も発表している。その奇抜な発想と高い技術力から、ジェラルド・ジェンタ氏は時計界のピカソと呼ばれることもある。
今回、紹介する「レトロ バイレトロ」も、レトログラード機構を利用した腕時計で、その名前から連想できるように2つのレトログラードが用いられている。1つは秒針、もう1つは日付である。時計の中心から伸びているのが分針で、一般的な時計の8時30分の位置から3時30分あたりまで右回りに移動していき、3時30分の位置まで移動すると瞬時に左回りで8時30分の位置まで戻る動きを繰り返す。一般的な時計の6時位置から伸びている針は日付を示している。これも左端から右端まで扇のような動きを行ない、右端までくると一瞬にして左端まで戻る動きを繰り返す。
また、分は針で示されるが、時に関しては12時位置の数字で表示される。毎時0分になると、デジタル時計のように一瞬にして表示が変わる「ジャンピングアワー機構」が搭載されている。
このような複雑な動きは、スイス製の時計に多く用いられているETA社の Cal.2892に部品を追加することで実現している。裏のグラスバックから覗くことができる機械「cal-GA4700」は、綺麗に磨かれた手間のかけられたものではあるが、Cal.2892を搭載した一般的な針の動きをする時計と機構的な違いは確認できない。裏から見る限りではレトログラードやジャンピングアワーが搭載されているとは思えないのだ。このあたりが、ジェラルド・ジェンタ氏が天才と呼ばれる所以なのかもしれない。
時計の機械の動きが覗けるブラスバックになっている。ETA社の汎用的な自動巻き機械がベースになっているが、各部品は綺麗に磨かれ、手間がかかっていることが確認できる
ゼンマイを巻くロータも綺麗に磨かれ「gerald genta」の文字が刻まれている
リューズもこった形状で、外見から受けるイメージよりも操作しやすいものだ
この時計を購入したときには、レトログラード特有の針の動きを観ることができる0分時のイベントが待ち遠しく思えたものだ。また、静かな場所にいると0分の機械の動作による微かな音が耳に飛び込んでくる。「カシャ」という乾いた無機質な音ではあるが、一時間経過したんだと確認させてくれる音は、なぜか心地よく感じるものだ。
ちなみに「ジェラルド・ジェンタ社」は、2000年にブルガリグループに買収され、その後ジェラルド・ジェンタ氏はジェラルド・ジェンタ社を飛び出し、「ジェラルド・チャールズ」というブランドを設立し、時計を発表している。このような経緯から、現在「ジェラルド・ジェンタ」ブランドの時計はブルガリグループの会社から発売されていることになる。
品名
購入価格
レトロ バイレトロ(ステンレスケース、革ベルト)
国内正規代理店価格 62万円
(うずまき天符)
2003/01/09 11:08
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ケータイWatch編集部
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