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これで君も「ディック・トレーシー」になれる!?
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現代人は大人も子供もいつもケータイをいじくっていないと落ち着かないように、ディック・トレーシーは70年前すでに現代人の病的な癖を身に付けていた
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黄色いコートを風になびかせて、悪漢と戦う1930年代のヒーローと言えば「ディックトレーシー」だ。アメコミをそのまま実写にしたような1990年の映画「ディック・トレーシー」では、おじさん俳優のウォーレン・ベイティ扮するディック・トレーシーや、アル・パチーノやダスティン・ホフマンなどの豪華キャストで話題になった。酒場のシンガー役でマドンナが結構ケバい酒場のシンガー役をこなしていたのも楽しい映画だった。
「ディック・トレーシー」は、昨今、あまり目立つことがなくなってきたIT産業の話題の中で、「ユビキタス社会」を語るときによく引用される人物だ。理由は常に彼が身につけているユニークな「腕時計」にある。今でこそ、腕時計型ケータイやLinux腕時計などが切羽詰まってきたIT産業界にあって未来の切り札のように語られるが、その発想はなんと1930年代、今からすでに70年以上前のアイデアなのだ。よ~く考えてみると、コンピュータなどいくつかの例外を除いて、我々人類は20世紀以降、大した発明や発見もせずに今まで生き延びてきているのだ。
腕時計を人間同士の音声コミュニケーションツールとして考えたのは、どこかの国の携帯電話会社が初めてというわけではなく、これまでにも数え切れないくらい多くの会社がそのアイデアを実際に使える製品として世の中に送り出している。昨今はあまりにも面白くない当たり前の製品しか提供してくれないIT産業界にあって、今でも本当に夢のある楽しい商品を我々に提供してくれる数少ない企業のひとつが、カシオ計算機だ。
15年も昔、やっと世の中に「MS Windows」とかいう聞き慣れないソフトウェアが登場した頃、その1987年にカシオ社が国内外で発売した「FMトランスミッター」搭載の腕時計があった。
操作説明書などには「トランスミッター661」と記載されているにも関わらず、なぜか商品名は「カシオTM100」と称された、ガジェットキングにはなかなか魅力的な腕時計だ。TM100はFMトランスミッター機能を搭載し、一般的なFMラジオとあらかじめ同じ周波数を設定することで、TM100を腕に取り付けた人間が約60m離れたところに置いたFMラジオに音声を飛ばすことができる。
ごく一般的なクオーツ時計であり、アラーム機能や、ストップウォッチ機能も搭載されてはいるが、この際、そんな機能はどうでも良いだろう。TM100の外見的特長は本体に取り付けられた小さなマイクロホンとトランスミッターのオン・オフスイッチ、そしてなにより、5段に延びる超目立つアンテナだ。受信機側のFMラジオの電源を入れ、既存のFM放送局とかぶらない76MHz~86MHzのどこかにチューナーを合わせ、TM100のトランスミッタースイッチをオンにする。FMラジオからノイズが聞こえなくなるまで、チューニングダイヤルを回して周波数の調整が終了すれば完璧だ。
イヤホン型の超小型FMラジオとTM100をペアで持てば、同じペアを持った友人同志がイージーな「トランシーバー」として使える、FMラジカセとTM100をペアで活用すれば、TM100をした人間が出席しているミーティングなどを遠隔の別の部屋で聞くこともできるし、議事の録音も可能だ。これを「リモート会議システム」と呼ぶか「簡易盗聴器」と呼ぶかは、筆者のあずかり知らぬことだ。15年も昔に、すでにここまで実現していることを考えると、現在のプロトタイプモデルの腕時計型ケータイなど、まだまだ発想自体がその足下にも及んでいないのは誰の目にも明らかだ。
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スルスルと延びるFMトランスミッターのアンテナ。腕時計本体の右側に4つある一番上の切り込みのあるのが周波数変更のネジ
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超小型のFMラジオとペアで持てば活躍範囲はグーンと広がる。平成ディック・トレーシーの誕生だ
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品名 |
価格 |
発売元 |
トランスミッター661(TM100) |
4ドル95セント |
カシオ計算機 |
(ゼロ・ハリ)
2002/10/04 11:01
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