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Act.16「美しき“モバイルビジネス”?」
[2007/03/27]


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Act.15「時をかける“スーパーボーナス”」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、PDAに至るまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindowsXP基本編完全版」「できるポケット LISMOですぐに音楽が楽しめる本」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。asahi.comでも連載執筆中


 この10月、ボーダフォンから移行して生まれた携帯電話事業者・ソフトバンク。そのソフトバンクが9月から開始した割引サービス「スーパーボーナス」が販売の現場などで、注目を集めている。今回はスーパーボーナスの狙い、そこから見えるケータイ業界の置かれた状況などについて、考えてみよう。


スーパーボーナスの実像

 9月から旧ボーダフォン、現在のソフトバンクが開始した新しい割引サービス「スーパーボーナス」。すでに、ソフトバンクショップや家電量販店ではスーパーボーナスによる契約をすすめるポスターやPOPなどを多く見かけるようになってきた。そこには、今までのケータイの販売現場では、あまり見かけることがなかった「頭金」という文字が表記されているのが特徴的だ。

 スーパーボーナスというサービスの内容については、すでに本誌記事でも紹介しているので、詳しくはそちらを参照していただきたいが、平たく言ってしまえば、端末の割賦販売と既存の割引サービスを組み合わせた新しいケータイの販売プランのひとつだ。

 端末を割賦販売、いわゆるローンで購入するというと、今ひとつピンと来ないかもしれないが、スーパーボーナスに加入して契約をする場合、端末は各携帯電話事業者が支払う販売奨励金(インセンティブ)が加味された割安な価格ではなく、スーパーボーナス用販売価格で購入する。つまり、今まで店頭で見かけてきた販売価格ではなく、「頭金」を支払うわけだ。

 ただ、スーパーボーナス加入時の端末購入の頭金は、後述するスーパーボーナスの特典が適用されるため、ユーザーには実質的な負担がない。また、割賦販売の月々の支払いも同様にスーパーボーナスの特典が適用されるため、事実上、ユーザーの負担はない。ただし、いずれの場合も27カ月上、契約を継続することがひとつの条件となる。この期間内に解約することもできるが、解約によって、スーパーボーナスの特典が受けられなくなるため、ユーザーには端末の割賦販売の支払いのみが継続して、残ることになる。


 では、具体的にスーパーボーナスにはどんな特典が用意されているのだろうか。まず、「スーパーボーナス継続割引」として、次のような特典が提供される。

【スーパーボーナス継続割引】
  1. 新規加入と同時に加入した場合、加入月と翌月の基本使用料を無料化
  2. スーパーボーナス加入時に10,000円のキャッシュバック(3カ月後)、もしくは端末の店頭価格を最大10,500円の値引き
  3. スーパーボーナスの契約期間に応じ、12カ月ごとにソフトバンクマイレージサービスを2,000ポイント付与(付与はスーパーボーナスの契約期間が27カ月を超えてから)


 これらをもう少しわかりやすく解説しよう。まず、1つめは新規加入と同時にスーパーボーナスに契約すると、その月と翌月の月額基本使用料が無料になるということだ。ただし、最初の1カ月目は日割り計算になるため、月の後半に加入すると、やや損になる。基本使用料が高い料金プランであれば、その分、メリットも大きくなるが、無料期間中に料金プランを変更することはできない。

 2つめのキャッシュバック、もしくは端末購入価格の割引は、後述する「スーパーボーナス用販売価格」に関係する。端末購入時の負担を軽くすることが目的で、端末購入価格が安い場合(たとえば0円)でもメリットがあるように、キャッシュバックも選択できるようにしている。

 3つめはスーパーボーナスの継続加入を狙ったもので、スーパーボーナスの契約期間が27カ月を経過すれば、毎年、ボーナスポイントが追加される。ポイントは次回以降の機種変更時などに利用でき、500ポイントにつき、1,000円(税込1,050円)の割引が受けられる。つまり、毎年、4,000円分(税込4,200円)のポイントがついてくるわけだ。


スーパーボーナスで提供される特典

 次に、前述の端末購入の割賦販売に関連する部分で「スーパーボーナス特別割引」が提供される。

【スーパーボーナス特別割引】

  • 加入後3カ月目から24回に渡り、スーパーボーナス特別割引額を月々の支払いから割り引く
  • 割引額は基本使用料、定額料、サービス使用料、手数料、情報料などの合計を上限とする

※スーパーボーナス特別割引一覧表、機種別グループ分類表はこちら


 これをわかりやすく説明すると、端末をローンで購入したことで必要になる月々の支払い(ケータイの月々の利用料とは別)について、スーパーボーナスを継続して利用していれば、ソフトバンクが補填するという形になる。その結果、ユーザーとしては端末をローンで購入したときの負担が事実上、なくなるわけだ。


スーパーボーナスでは、携帯電話本体は割賦販売される
スーパーボーナスでは、携帯電話本体は割賦販売される

 この2つに加え、SoftBank 3Gを契約している場合は、パケット通信料の定額制サービス「デュアルパケット定額」が2カ月、無料で利用できる。つまり、加入から2カ月間は事実上、パケット通信料がタダになるわけだ。ただし、デュアルパケット定額の2カ月無料が適用されるのは、スーパーボーナスに新たに加入(回線は新規契約、機種変更のどちらでも可)したときのみで、継続加入では適用されない。

 ここまでがスーパーボーナスの内容だ。実際にはもう少し細かい条件などもあるが、それらについては割愛する。既存のケータイの販売や契約と比べるとわかりにくいが、要するに、端末をユーザーに割賦で販売し、各種サービスの割引や特典も分割で提供するというものだ。


ユーザーにとってスーパーボーナスの損得勘定

705SHをスーパーボーナス契約で購入する場合は……

705SHをスーパーボーナス契約で購入する場合は……
 一見、得なのか、損なのかが今ひとつわかりにくいスーパーボーナスだが、リアリティを持って考えるため、ひとつ実例を挙げてみよう。

 都内のあるソフトバンクショップで確認したところ、現在、705SHをスーパーボーナスに加入して、新規契約で購入する場合、15,540円になるという。この金額からスーパーボーナス継続割引の10,500円(3カ月後の10,000円キャッシュバックも選択可)が差し引かれるため、実際に購入時には店頭で5,040円を頭金として支払うことになる。一括払いで購入するときの代金は、50,160円(1,880円×24回+5,040円)になる。

 購入後、何事もなく、そのまま、27カ月間、705SHを使い続ければ、割賦払い分の1,880円が毎月、割り引かれ、27カ月後にはスーパーボーナスの期間が満了となり、ソフトバンクマイレージサービスのポイントも付与される。

 ここで注意しなければならないのは、この27カ月という期間だ。スーパーボーナスの契約中に契約変更や買い増し、解約、機種変更をするには、スーパーボーナス用販売価格の残金を支払う必要がある。つまり、スーパーボーナスに加入したユーザーが機種変更をしようとすると、それまで補填されていた端末代金の割賦払いの残金を精算しなければならないわけだ。機種変更できないわけではないが、27カ月に達する前に機種変更をするユーザーには、かなり負担が大きくなってしまう。特に、半年や1年といった短い周期で最新サービスに対応する端末を購入し続けてきたヘビーユーザーやアクティブなユーザーには、かなり不満が残るだろう。


9月28日の発表会では、補償サービスを検討する考えも明らかにされた

9月28日の発表会では、補償サービスを検討する考えも明らかにされた
 事故や水没などでケータイが壊れたときのように、機種変更をせざるを得ない状況になることがあるが、このようなとき、回線契約を解約しても結果的に割賦払いだけが残ってしまい、ユーザーは壊れた端末のローンを払い続けなければならなくなる。ただ、この点についてはソフトバンク側でも問題を認識しているようで、9月28日の記者会見でも質問に答える形で「スーパー安心ボーナス」のような形でトラブルに対する補償サービスを充実させたいとしている。


705SHとiPod nanoのセットを購入するには、スーパーボーナスに加入する必要がある

705SHとiPod nanoのセットを購入するには、スーパーボーナスに加入する必要がある
 また、スーパーボーナスの話をさらに難しくさせているのが705SHとiPod nanoのセット販売だろう。今のところ、705SHを単独で購入するときの10,000円高程度で販売されているそうだが、他の商品を組み合わせることで、端末本体の価格を一段とわかりにくくしている。来店するお客さんの中には新聞広告などを見て、705SHにiPod nanoがオマケでついていると誤解している人もいるそうだ。もちろん、こうした人たちはスーパーボーナスがどういう内容の販売プランなのかを知る由もない。本誌読者なら、説明するまでもないだろうが、705SHには音楽再生機能が搭載されており、基本的にはiPod nanoと同じようにCDから取り込んだ音楽を再生することができる。音楽再生の性能は、若干、差があるかもしれないが、iPod nanoをセットにする理由がわからないとする声は多い。だからといって、冷蔵庫や掃除機が付いてくるセットも困りものだが……。

 損得勘定という点では、すでに旧ボーダフォン時代から提供してきた「ハッピーボーナス」の方が得だろうという見方もある。ハッピーボーナスは2年単位の契約を約束することにより、基本使用料が割り引かれるというものだ。一概に比較できないが、端末購入価格の割賦販売という要素が絡まないだけ、ハッピーボーナスの方がわかりやすく、リスクも少ないと言えるだろう。ただ、ハッピーボーナスは旧ボーダフォンの9月のカタログには掲載されておらず、今後、継続して提供されるかどうかは微妙だ。さらに、これまでハッピーボーナスなどの長期割引サービスを契約していた場合、スーパーボーナスに乗り換えると、これまでの契約期間は引き継がれないことが明らかになっているほか、「今後、ハッピーボーナスは基本的に受け付けない」というコメントも出している。


スーパーボーナスの背景

 では、どうして、このような新しい契約形態や割引サービスが生まれてきたのだろうか。そこには日本のケータイ業界が展開してきたビジネスモデルが関係している。MNPを控え、そのビジネスモデルに歪みが生じる可能性があるため、ソフトバンクとしては先手を打った格好になる。

 現在、国内で販売されているケータイは、インセンティブと呼ばれる販売奨励金が加味された価格で販売されている。たとえば、メーカーからの端末納入コストが60,000円でも携帯電話事業者が40,000円の販売奨励金を付けて代理店に販売を依頼するため、ユーザーは20,000円程度で最新端末を購入できるしくみになっている。


8月8日の決算会見で示された「新規獲得手数料」のデータ
8月8日の決算会見で示された「新規獲得手数料」のデータ

 販売奨励金は新規契約や一定期間利用後の機種変更などに基づいて、代理店に支払われるが、ユーザーがその回線(ケータイ)を継続利用することを前提にしている。販売奨励金は端末の販売を伴う新規契約や機種変更だけでなく、各事業者が提供する各サービスの契約によって、支払われるケースもある。たとえば、MNPを控え、ここ数年、各社が積極的に取り組んできた年間割引の契約が取れればいくら、家族割引が契約されるといくら、パケット通信料割引サービスならいくら、コンテンツ閲覧サービスの契約が取れればいくらといった具合いに支払われることもある。あるいはモデルチェンジなどを控えた機種を販売したいために、特定の機種に一定期間、販売奨励金が追加されるケースもあるようだ。こうした販売奨励金を積み重ねることで、0円や1円といった価格で販売されるケータイが生み出される。

 ただ、こうした仕組みもユーザーが新規契約後、あるいは機種変更後、各サービスを継続利用しているからこそ、成立する。新規契約をした直後に、すぐに解約してしまう「新規契約即解約」と呼ばれる方法を採られてしまうと、携帯電話事業者としては販売奨励金を出すことがムダになってしまうわけだ。改めて説明するまでもないが、解約した端末は「白ロム」と呼ばれる電話番号が投入されていない状態になるため、販売店に持ち込んだり、USIMカードを装着すれば、基本的にはすぐに利用を開始することができる。そのため、オークションを通じて個人間で売買されたり、白ロムを専門的に扱う業者なども登場している。

 特に、旧ボーダフォンの場合、一部端末のSIMロック(自社向けの端末では自社のSIMカードしか動かないようにするための仕組み)が解除できることが知られたため、SIMロックの解除が可能なボーダフォン3G端末を調達するために、業者が新規に何回線も契約して、すぐに解約することがくり返されたことも少なからず影響しているようだ。

 さらに、10月24日に開始されるMNPで予想されているユーザー動向もスーパーボーナス導入に関係している。MNP導入後は各社の激しいユーザー獲得競争がくり広げられることが予想されているが、ソフトバンクとしてはそれを逆手に取るユーザーが出てくるかもしれないことを危惧し、スーパーボーナス導入に踏み切っている。


28日の発表会で、孫氏はスーパーボーナス導入の背景を説明

28日の発表会で、孫氏はスーパーボーナス導入の背景を説明
 9月28日に行なわれたソフトバンクの「2006年秋・冬サービス&プロダクト説明会」の席において、孫正義社長はスーパーボーナス導入の背景について、「MNPに関する調査を行なったところ、いいものがあれば、何回でも乗り換えるという層が潜在的に存在していることがわかった」「MNPを利用し、次々と新しい端末を手に入れながら、事業者を乗り換えられたのでは、インセンティブを出す事業者側はたまったものではない」「数カ月使って、タダで乗り換えるという間違ったビジネスモデルを是正するため、割賦販売を導入することにした」「割賦販売で端末の価格が高くなっては意味がないので、ユーザーの負担が変わらないように割引サービスを組み合わせた」と説明している。

 こうした背景もあり、ソフトバンクでは端末に付加する販売奨励金も事実上、分割で支払うスーパーボーナスを始めたというわけだ。つまり、ユーザーには端末本来の納入価格に近い価格で販売し、きちんと使い続けるユーザーに対し、従来の販売奨励金に相当する金額を分割で支払うことにより、自社の販売奨励金を有効に活用しつつ、ユーザーにも負担を増やさないように考えた販売プランというわけだ。


スーパーボーナスから見えること

本誌のアンケートでは、75%が「割賦販売を利用したくない」と回答

本誌のアンケートでは、75%が「割賦販売を利用したくない」と回答
 ここまでスーパーボーナスの内容と背景について解説してきたが、読者のみなさんはどう考えられただろうか。本誌の「ケータイお題部屋」で行なった、割賦販売に関するアンケートによれば、約75%の読者が「利用したくない」と答えている。「2年も同じ端末を使えない」「制約が厳しすぎる」といった主旨のコメントも数多く寄せられている。

 少し話を整理してみよう。まず、ソフトバンクのスーパーボーナスという販売手法そのものは、「インセンティブによる端末の安価な販売」というビジネスモデルが抱える『新規契約→即解約』などの問題に対処できる1つの方法であり、法に触れるような問題があるものではない。特に、MNPに際し、格安で端末を入手しながら、各事業者を転々とするユーザーが増えてくるようであれば、他事業者も何らかの方法で対策を打ってくる可能性もある。

 ただ、インセンティブを有効に活用したいという考えは、サービスを提供しているソフトバンク側の論理であって、ユーザーにとっては直接、関係のない話だ。すでに、現状である程度、安価に端末を購入できているユーザーがわざわざ制約の厳しいスーパーボーナスを契約するかというと、現時点で提示されている割引内容ではそれほどメリットを感じないのではないだろうか。少なくとも筆者は乗り換えるメリットをまったく感じない。ただ、一部の販売店では機種変更に際し、スーパーボーナス加入を必須にする動きもあるという。

 むしろ怖いのは、こうした背景や内容を十分に理解することなく、割引サービスの内容に釣られて、契約するユーザーがいるかもしれないという点だ。前述のように、スーパーボーナスは回線契約と端末販売が従来のように、完全にセットになっているわけではないので、スーパーボーナス加入から27カ月後までの間に、機種変更や解約が発生すると、端末代金の割賦払いを精算しなければならなくなる。契約時の説明でユーザーが十分に理解していれば、問題ないが、正しい情報が伝わっていないと、機種変更時や解約時にトラブルになる可能性が十分あるだろう。

 また、販売店や代理店にとってもスーパーボーナスは、厄介な存在と言えるかもしれない。ユーザーにスーパーボーナスを説明するのがたいへんという話もあるが、それ以上に今まで自分たちのところを経由して、端末の販売価格に転嫁していた販売奨励金がなくなり、事実上、携帯電話事業者(ソフトバンク)からユーザーに直接、支払われることになる。そのため、代理店は販売価格をコントロールしにくくなるばかりか、販売体制のしくみ的にも存在の位置付けが変わってしまう可能性がある。


 ケータイのサービスの進化という面でも気になる。ここまでくり返し、説明してきたように、スーパーボーナスは27カ月間、ソフトバンクのケータイを解約することなく、同じ端末を使い続けることを推奨している。つまり、既存ユーザーの機種変更のタイミングも27カ月周期で十分と考えていると判断できるわけだ。

 日本のケータイは提供されるサービスやコンテンツと端末の機能が相互に作用しながら進化してきたため、異質と言われるものの、海外では例に見ないほど、急速な進化を遂げ、高度なサービスが利用できる環境が整っている。新しいサービスを普及させるため、キャリアは次々と新しい端末を投入し、積極的に新しい世代のケータイに買い換えてもらう手法を採ってきたからこそ、ここまで進化したわけだ。

 しかし、27カ月もの間、同じ端末を使い続けることが推奨されるのであれば、端末の機能に依存する新サービスが提供されても気軽に乗り換えられないということになる。仮に、ソフトバンクにそういう意図がなかったとしても現時点のアナウンス状況では、「27カ月、同じ機種を使ってください」というメッセージばかりがユーザーに強く伝わっている。スーパーボーナスが「早いタイミングでの機種変更を推奨しないという考えに基づいた割引サービス」と捉えられてしまうと、「ソフトバンクのケータイのサービスはゆっくりと進化する」と受け取られてしまう。厳しいかもしれないが、そんなケータイのサービスに、13機種54色もの端末バリエーションが必要なのかどうかは疑問が残る。


 ヨーロッパは回線と端末の販売が切り離されているという話を耳にしたことがあるだろうが、英ボーダフォンはコンテンツやサービスとしっかり連携するキャリアブランドの端末を販売するという日本のビジネスモデルを欧州や世界各国に持ち込み、ある程度、成功を収めている。そのボーダフォンから携帯電話事業を引き継いだソフトバンクが日本型のケータイのビジネスモデルを否定するというのも何とも皮肉な話だ(実質的には旧ボーダフォン時代に始めたことだが……)。

 厳しいことを書いてきたが、筆者はスーパーボーナスという新しい販売スタイルを否定するつもりはない。MNPを迎える時期にあたり、継続して契約して欲しいと考えているのは、どの携帯電話事業者も同じことであり、インセンティブによる販売方法を見直す動きがあることも報じられている。

 ただ、どんな形で割引サービスを提供するにせよ、一般ユーザーや販売店などに対し、きちんと内容を説明し、周知を図ることが重要なはずだ。少なくとも現時点のスーパーボーナスは、そのネーミングもさることながら、説明を十分に果たしているようには見えない。業界的なことを言えば、正式なプレスリリースも発行されておらず、本誌では9月1日からサービスが提供されたことを店頭で確認して、ニュースとして取り上げている。ユーザーから見ても今ひとつメリットを感じられる部分が少なく、条件となる制約も多いため、あまり積極的に加入しようという気にはなれない。特に、機種変更時にスーパーボーナス加入を必須とするような販売方法を採るのであれば、ソフトバンクとの付き合いを再考するユーザーが出てきてもしかたがないだろう。

 かつて、旧ボーダフォンが「ハッピータイム」の提供と終了で混乱を招き、ユーザーの反感を買ったが、今回のスーパーボーナス導入がそのくり返しにならないようにするためにもソフトバンクにはきちんとした説明ができる体制を整え、正しい情報をアナウンスすることが大切だろう。そして、何よりもユーザーにわかりやすいサービスが展開されることを期待したい。



URL
  ソフトバンクモバイル スーパーボーナス 案内ページ
  http://mb.softbank.jp/mb/price_plan/3G/discount/super_bonus.html

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(法林岳之)
2006/10/06 11:31

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