KDDIは19日、都内で定例会見を開催した。前日の18日にモバイルWiMAXに関する発表を行なったこともあり、今回同社からの新たな発表はなく、会見は報道関係者から代表取締役社長兼会長の小野寺 正氏に質問する形で進められた。
■ WiMAXに対する考えを改めて説明
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KDDI小野寺氏
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新会社設立発表の翌日とあって、WiMAX関連の質問に多くの時間が割かれた。小野寺氏は「インテルやJR東日本、京セラなどから、当社が本気でモバイルWiMAXに取り組んでいることを評価してもらった結果、資本参加してもらえたと思う。WiMAXの標準化にも積極的に取り組んでいる。大和証券と三菱東京UFJ銀行が入って、資金面でもしっかりした体制をとらせてもらった」と述べ、免許取得の動向はまだ不透明な段階であることを指摘しつつも、事業展開への自信を見せた。
通信事業者として固定事業と携帯電話事業を展開してきたKDDIだが、モバイルWiMAXの事業化に取り組むのはなぜか。その理由について、同氏は「携帯電話が“モバイル”、WiMAXが“ワイヤレス”とするならば、モバイルとワイヤレスは異なる市場になると理解しているから」と説明する。
小野寺氏は、モバイルの定義は「移動しながら音声やデータがシームレスにハンドオーバーし、途切れないサービス」とし、一方のワイヤレスは「スポットではないが、音声通話と同等のハンドオーバーは保証しないサービス」とした。続けて同氏は「データ通信であれば、モバイル・ワイヤレスともに途中で途切れても、平均スループットが確保されていれば、問題ないとまでは言えないが、ユーザーには気づかれない。だが、音声通話は1秒途切れれば、すぐわかる。そういう意味で、モバイルとワイヤレスはカテゴリーが異なる」と説明した。
2.5GHz帯免許に関連し、ウィルコムが進める次世代PHSに対する意見を求められた場面で、小野寺氏は「他社を誹謗したくない」と直接のコメントは避けながら、WiMAXの優位性は国際標準と指摘。同氏はパソコンでの利用で市場が立ち上がり、その後は無線LANと同じようにノートパソコンにWiMAXのモジュールが内蔵されるようになるとの見方を示し、その理由として、インテルがWiMAXに注力していることを挙げた。「もしワイヤレスがauと同じカテゴリーならば、KDDIがあえてWiMAXをやる必要がない」と述べたほか、「米国や欧州でも国際ローミングで利用できるようになるだろう。携帯電話との違いはそこになる。導入時期は日本だけ先行するかもしれないが、最終的に海外との差分が生じることはない」と断言した。事業計画については、昨日の会見同様、免許を取得できるまで何も明らかにできないとした。
■ auの秋冬モデルでRev.A対応端末
対して、auで用いる通信方式についての考えはどうか。まず現行方式で、昨年12月にスタートしながら春・夏モデルでは新機種が登場していないRev.Aについては、「Rev.Aのシステム導入に端末が必要ということで発売したが、正直言って、Rev.Aに適したコンテンツやサービスが揃っていないと思う。Rev.Aでテレビ電話サービスを提供しているが、『他社にあって当社にない唯一のもの』ということで、営業サイドからの意見で(テレビ電話サービスを)出したのが本音」とした。
ただし、まもなく発表と見られる秋冬モデルでは、「全てではないがRev.Aに対応する。その後、Rev.Aは標準方式にする。つまり、WINは全てRev.Aになると思う」と説明した。
CDMA2000方式の開発を手掛ける米クアルコムでは、Rev.Aに続く、Rev.Bなど進化版と言える通信方式を発表しているが、auが今後導入する通信方式については「いろいろと勉強しているところ。携帯電話の形状で、どれほどの通信速度が要求されるのか。ある程度のスピードを超えると端末側の処理能力が問題になる。もう1つはコスト。さらに高速な通信方式にすれば、ビット単価は下がるだろうが、インフラ投資はEV-DOよりも大きくなるだろう。ビット単価とインフラ投資を考慮し、どちらが効率的か。現時点では、まだ決定できる段階ではないと思う。また、国際標準の流れもある。海外の状況を見ながら決めていきたい」と述べた。
■ MNP、モバイルビジネス研究会について
携帯電話業界の動向に関する質問で、MNP開始から約1年を経た感想を尋ねられると「MNPは永遠に提供されるものであり、それに向けた新しい施策を実施することはないという考えは以前の通り。利用してもらうには満足度向上が唯一の道。現時点ではうまく言っていると思う。他社に優位なサービスが登場する場合、MNP導入後は以前より流動性が高まる効果はあるだろうが、すぐ何か起こることはないと思う」とした。
またソフトバンクが純増1位を続けていることに対しては、質問が寄せられる前に自ら触れて「営業としてはお金を使ってでも打って出たいという希望がある。(純増数が)取れているのは、それなりに努力し、お金を使っているということ」とした。
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モバイルビジネス研究会が最終報告書を決定したことを受け、「官主導の料金プランには違和感」とコメント
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販売奨励金については、総務省で開催されたモバイルビジネス研究会でも話題になっていたが、小野寺氏は「軟着陸という言葉をこれまでも使ってきたが、奨励金をなくせば、端末販売数が減少し、販売店やメーカーには死活問題。特に販売店には非常に大きな影響がある。ショップが減少すれば、故障受付窓口が少なくなるなど、結果的にユーザーに迷惑がかかる。ある程度ショップを維持しないと顧客満足度が下がることになる」として、販売数量の減少が店舗数の減少に繋がり、顧客の不満が募る結果を招くという“負のスパイラル”は「絶対に避けたい」と語った。同氏は「奨励金減少は、キャリアとしては営業費用の削減に繋がり、料金を値下げできる、と議論されているようだが、そう簡単な話ではない。よほど慎重にやらなければダメだ」と従来からの持論を強い調子で改めて訴えた。
モバイルビジネス研究会で触れられた分離プランについては「携帯電話業界は自由競争でやってきた。最初から3社3グループではなく、淘汰が進んで今がある。料金は競争の大きな要素。官主導で料金体系を決めていくのは、正直言って違和感を覚える。端末についても携帯電話業界の要素の1つではあるが、その問題だけ取り上げてやるのはいかがなものか」と述べ、モバイルビジネス研究会、ひいては総務省の姿勢に対して疑念を呈した。
■ 割引サービス、PC向け定額制、三洋の携帯事業、政治の話題も
スタートしたばかりの「誰でも割」については「契約数は別の機会に発表するので待って欲しい。ただ、評判は良い」と述べたほか、長期契約者への施策も検討しているとした。
NTTドコモがパソコンでも利用できる定額制サービスを発表したことを受けた質問では「検討していないと言えば嘘になる。だが、無制限な定額制サービスを導入するのは不可能だ。何か制限してやることはあるかもしれない」と述べた。
三洋電機の携帯電話事業が京セラに譲渡される、との報道についてコメントを求められると、小野寺氏は「私も報道でしか知らない。両社ともに否定と受け取れるコメントを出していて、本当かどうかわからない」と苦笑しながら、「もし一緒になるのであれば、当社にとって悪い話ではない。両社ともにシェアが大きいメーカーで、特に三洋電機は米Sprintへ納入している。良い方向で、規模が大きくなるのは良いこと」とした。
しかし、スケールメリットを中心に据える事業戦略については「こんなことを申し上げて良いか知らないが、ノキアやモトローラ、サムスンは規模だけでやっている。それだけで良いのかは疑問だ。携帯電話に限らず、さまざまな業種を見ていると、マスマーケットとニッチマーケットがある。いろんな形態があってしかるべきだ」と安易な肯定は避けた。
このほか自民党の総裁選挙についても尋ねられると「政治はわからない」としながら、一般論として「政治が安定しなければ経済への良い影響はでないのではないか。ぜひ安定政権になって欲しい」とした。総裁候補についても「福田さんと直接話したことはない。麻生さんは総務大臣だったので、そのとき何度か話したが……そういうわけで、両者を比べる立場にない。ただ、小泉政権の路線は間違っていない。構造改革を進めなければ結果的に経済が衰退し、社会保障も成り立たない。結果ではなく、機会の平等を担保していく必要はあるだろう。その結果が個人の努力で変わっていくのは当然。でなければ共産主義と同等になる」とコメントした。
■ URL
KDDI
http://www.kddi.com/
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(関口 聖)
2007/09/19 17:04
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