アイピーモバイルは、下り最大42.2Mbpsという通信速度を実現する「TD-CDMA E-R7(Evolved Release7)」方式のフィールドテストなど、同社の現在の取り組みを公開した。
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TD-CDMA E-R7の実験用移動機
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ダイバシチアンテナ
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■ 「TD-CDMA E-R7」をデモンストレーション
同社では、今春にもTD-CDMA方式の高速モバイルデータ通信サービスを展開する。サービス開始時には、2GHz帯において、下り最大約10Mbps(平均2~3Mbps)の伝送速度が可能になるとしており、本誌でもこれまでにデモンストレーションの状況などをお伝えしてきた。
今回の実験は、同社が昨年発表した「TD-CDMA E-R7」のもの。この方式は、サービス開始当初のRelease7(R7)の拡張版仕様で、変調方式が従来の16QAMから64QAMに拡大するため、理論上1.5倍のスループットが実現する。また、セル内干渉や、セル同士の干渉で通信速度が低下する対策として、「GMUD」と呼ばれるセル間干渉緩和機能が新たに導入されている。
実験は、東京・上野の同社ラボに基地局を1つ設置し、2.5GHz帯で実施された。複数のアンテナをつかんで通信の高速化も図れるとのことだが、今回は1波だけ利用していた。このため、伝送速度は下り最大15.5Mbps、室内の移動していない環境ではあるが15Mbps弱の通信速度を記録した。MIMOの技術を使うことで、今回の実験環境でセクタースループット最大31Mbpsが可能になるという。
今回明らかにされたスループットの数値は、セクタースループットとなる。セクタースループットとは、1つの基地局がカバーするエリア(セクター)における、セクター全体の実効通信速度のことで、仮に10台のクライアント端末がアクセスすれば、エンドユーザーが得られる通信速度は1/10になる。
また、「TD-CDMA E-R7」は、商用化に向けた通信仕様だが、実験で使われた移動機はまだ非常に大きなものだった。アイピーモバイルでは、今回のフィールドテストなどの結果を踏まえ、2007年末にも通信用のチップを開発、通信カードサイズの端末の提供にはもう少し時間がかかるようだ。
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HD(High Definition)」映像を無線ストリーミング
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コンテンツを一度に沢山ダウンロードして、スループットを測定。15Mbps弱といったところ
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PS3のネット対戦を無線でデモ
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車を使って移動デモも行なわれた。手前の黄色箱はバッテリー
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■ 商用サービスは2007年秋
![](/cda/static/image/2007/01/17/ipmoros.jpg)
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TD-CDMAのロードマップ
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なお、今回のデモンストレーションに際して、今春にもスタートする高速モバイルデータ通信サービスについてあらためて確認した。
アイピーモバイルでは、ゴールデンウィーク前を目途にサービスを開始する予定で、まず、同社の社員や関係者などに対応する通信カードを配布する。当初は、プレスタートのような形になる。
当初のカバーエリアは、23区内の中心部、山手線エリア内程度となる。同社では、カバーエリアを急拡大するのではなく、事業規模に合わせた形で順を追って展開していく考えだ。基地局は、「TD-CDMA E-R7」に仕様を変更する場合でもソフトウェアの更新で済むようになるとのこと。
配布される端末は、PCカードタイプのもので、現在開発を急いでいるCFカード型も5月頃に間に合わせたいとしている。1ユーザー当りの通信速度は1~3Mbpsになるものと見られる。
また、ユーザーから料金を取る商用サービスとして展開する時期については、2007年秋頃とした。気になる利用料金については検討中としているが、広報担当者は「ウィルコムのもっとも高いデータ通信プランよりも割安にする予定」と話した。ウィルコムのデータ通信向けプランでは、8xパケット方式の「つなぎ放題[PRO]」が月額12,915円となっている。
【追記:1/18】
アイピーモバイルでは、無線通信の商用免許自体は予定通り今春にも取得できるとしている。
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実験のシステム構成
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実験結果
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車2台を使った移動実験の結果
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MUDの説明
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GMUDの説明
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GMUDを導入した結果
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■ URL
アイピーモバイル
http://www.ipmobile.jp/
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(津田 啓夢)
2007/01/17 20:32
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