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「携帯業界は競争しているか」、総務省で討論会

 14日、総務省で「電気通信事業分野の競争評価についてのカンファレンス」が開催された。6月7日の競争評価案発表を受けて行なわれたもので、携帯電話業界に競争が行なわれているかどうか、各社の意見に対して総務省側の考えが明らかにされたほか、移動体通信の将来についてソフトバンクBBやイー・アクセスなど新規参入希望者がビジネスモデルを紹介した。


ソフトバンク宮川氏、設備共用化やローミングを求める

ソフトバンクBBが求める競争政策は2つ
 新規参入を希望しているソフトバンクBB常務取締役の宮川 潤一氏は、「Yahoo!やYahoo!BBを手掛け、今度は携帯電話事業に進出することで、ソフトバンクとしてはライフスタイルのプラットフォームを提供したい。NTTドコモがかねてより主張している通り、生活に欠かせないインフラである携帯電話の事業者として責任を果たせるインフラ作りに取り組んでいく」と意欲を示した。

 一方で同氏は、「総務省から示された1.7GHz帯への新規配分は非常に少ないという認識。これまで無線LANのインフラを全国展開しており、携帯とともにどう有効活用するか、研究している。我々が求める競争上の政策は、イコールフッティング。1.7GHz幅で新規参入事業者に割り当てられる5MHz幅×2は、採算性を考えると不平等だ」と述べ、仮に新規参入が実現した場合、既存キャリアとの競争を踏まえると不利な立場にあるとアピール。

 また、「インフラを構築する上で、穴ができる危険性を感じている。“圏外だから緊急の連絡ができなかった”といったことがないように、他キャリアとのローミングについて検討会を開催して欲しい。また、キャリアが増えるたびに郊外に鉄塔が新しく建てられるというのはどうか。設備の共用化についても検討会を催していただきたいし、PHSに続いて省電力の携帯電話用基地局の審査簡略化も進めて欲しい」との要望を明らかにした。


周波数割当幅の拡大を求める サービスエリアをカバーするため、ローミングの検討を求めた

イー・アクセスはMVNO中心で

MVNOでのビジネスモデルを紹介したイー・アクセス
 同じく新規参入を求めているイー・アクセスからは代表取締役社長兼COOの種野 晴夫氏が同社の描くビジネスモデルを紹介した。

 総務省が示した競争評価案に、「携帯電話事業は、キャリアがメーカーやコンテンツをまとめて主導している垂直統合型ビジネス」と記されたことに触れた同氏は「ドコモ、KDDI、ボーダフォンの3社ともに同じような垂直統合型ビジネス。評価案を見ても、現状の携帯電話業界は、各社が意図しなくても足並みを揃えやすい、つまり暗黙の協調を取りやすい構造。こういった構造を打開するためには異なるビジネスモデルの事業者が参入する必要がある」と述べ、イー・アクセスではオープンなビジネスモデルを構築するという考えを示した。

 具体的なビジネスモデルの形として、種野氏は「もし当社に周波数が割り当てられれば、ネットワークを構築し、そこを他社に卸売りするMVNO(仮想移動体通信事業者)型ビジネスを手掛けたい。英国でもヴァージングループのMVNOが参入して音楽方面のユーザーなどを集めているように、新たな販売力を持った企業の参入で成長できる」と語り、5月末に明らかにされたニフティとの共同検討のようなビジネスモデルを推進していくとした。


英国での事例も紹介 既存と異なるビジネスモデルが競争を促進するとした

 MVNOを呼び込むという施策については、TDD方式での参入を狙うアイピーモバイルも同じ立場だ。イー・アクセスと同じように“垂直統合型”ではなく、ネットワークと端末、コンテンツを一括管理しない“水平分離型”ビジネスも必要とした同社取締役の竹内 一斉氏は、「オープンなビジネスモデルは、競争を促進するだけではなく、多様なデータ通信のマーケットを切り開いていくのではないか。その結果、競争的で幅広いサービスが産まれてくる。インフラの開放、つまりMVNOの義務化ができれば、ユーザーにより多くの選択肢を与えられ、競争の流れを強められる」と述べた。


“MVNO義務化”に警戒する既存各社

 総務省側は、「今回は競争状況を分析する上で、各社との意見交換、情報共有が主目的であり、新たなルール・制度作りの考えはない」としたが、NTTドコモやKDDI、ボーダフォンの既存キャリアはMVNOの義務化について反対意見を示した。

 NTTドコモ常務取締役の辻村清行氏は「設備投資の重要性を共通認識として欲しい。4社3グループで競争している状況だが、ボーダフォンは純減を記録するなどリスクは当然ある。繋がってこそ意味がある携帯電話で、ユーザーの要求するレベルに到達するために必死になっている。当社でも収入の2割をつぎ込んで設備を整えている」と述べ、インフラを持つことはメリットだけではなくリスクもあり、多大な労力を費やして構築したインフラを有効活用するために、自社だけでユーザーを集めるべきか、MVNOを集めていくのかは各事業者が個別に判断すべきこととした。

 KDDI 渉外部長の石津 浩一氏は、「固定網では、NTTがネットワークを独占していたこともあり、その上でやっていくのが有効だった。しかし携帯電話は周波数が割り当てられ、その後サービスエリアの広さなど設備競争があった。最終的にエンドユーザーにどう見られるか、MVNO自体は歓迎するが、既存もやるべきかどうかという点では、まだ規制する段階ではないだろう」と語った。

 またボーダフォン業務執行役員の木全紀元氏は、「基本的にドコモと同意見。現在苦境にある当社だが、サービスエリアやその質など、さまざまな要因がある。設備競争は、他社との競争の内でも重要なものの1つ。そこに自由に乗れるようになるというのはどうか」と懸念を示した。

 このほか、MVNOについてソフトバンクBBの宮川氏は「当社は垂直統合でも、水平分業でも何でもあり。ただし、1.7GHz帯については他社に貸し出せるほどの余裕はない。これは既存キャリアも同じではないか」とコメントした。


端末とサービスのセット販売はどうなる?

 当初の予定にはなかった議題として、司会の甲南大学経済学部教授の佐藤治正氏から「新たな携帯のビジネスを進めるならば、端末とサービスがセットになっているビジネスモデルはどう思うか?」とイー・アクセス、ソフトバンクBBに質問が投げかけられた。

 たとえばNTTドコモの携帯電話を購入した場合、自動的にその端末で利用できるサービスはiモードなどドコモ提供のものになる。これは他社の携帯電話でも同じことだが、海外の携帯電話では、回線契約としてSIMカードを保有し、端末は自由に購入できるというケースも存在する。

 種野氏は「確かにSIMカードと端末を別々に購入するという形はあり得るが、日本では難しい。当社では好ましくないと考えているが、新規参入時にはやらざるを得ないだろう」と渋々ながら、既存のビジネスモデルに沿う形になるとした。

 一方、宮川氏は「ソフトバンクBBとしてはどちらも手掛けたい。チャレンジはしたいが、新たな物にはすぐ飛びついてもらえない。販売インセンティブの捻出などを踏まえると、利用料を下げるためには、端末とサービスを分離するのも1つの手」と語った。

 既存キャリアからはドコモの辻村氏が補足と前置きしてコメント。同氏は「サーバーと端末側が強く結びつかなければいけない場合がある。標準化は重要だが、やり過ぎるとサービスの進化が止まる」とした。

 この点に関しては、総務省側の公正競争推進室長 大橋秀行氏は、「競争評価案でも触れているが、強く懸念しているのは、サービスと端末のアンバンドルは事業の安定性とバランスが取れるかどうかという点。定額制が導入され、デジタルテレビなどとの融合が進み、コンテンツビジネスは有料課金だけではなく広告モデルも出現するだろう。競争環境は活性化しても、事業そのもの、インフラの投資コストが果たして回収できるのか」と述べ、変化を続ける携帯電話業界について、今後も議論を進めたいとした。



URL
  カンファレンス概要
  http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/050526_2.html

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(関口 聖)
2005/06/14 19:15

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