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15日、総務省において、通信事業分野の競争状況について議論する「電気通信事業分野の競争評価についてのカンファレンス」が開催された。午後からは、NTTドコモ、KDDI、ボーダフォン、ソフトバンクBB、イー・アクセスの各社から代表が参加したパネルディスカッションが行なわれ、携帯電話事業への新規参入を中心に論議が交わされた。
パネルディスカッションに出席したのは、NTTドコモ 常務取締役 辻村清行氏、KDDI 取締役執行役員専務 長尾哲氏、ボーダフォン 常務執行役 五十嵐善夫氏、ソフトバンクBB 取締役 宮川潤一氏、イー・アクセス 代表取締役COO 種野春夫氏。司会は甲南大学 経済学部教授の佐藤治正氏が務め、総務省側からは、総合通信基盤局 事業政策課長の吉田靖氏、公正競争推進室長の大橋秀行氏が出席した。
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左から司会役の甲南大学 経済学部教授の佐藤治正氏、NTTドコモ 常務取締役 辻村清行氏、イー・アクセス 代表取締役COO 種野春夫氏、KDDI 取締役執行役員専務 長尾哲氏
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左からソフトバンクBB 取締役 宮川潤一氏、ボーダフォン 常務執行役 五十嵐善夫氏、総務省 総合通信基盤局 事業政策課長の吉田靖氏、公正競争推進室長の大橋秀行氏
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■ 携帯の競争状況、既存と新規で意見が対立
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NTTドコモ 常務取締役 辻村清行氏
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ディスカッションでは、イベントの主旨を踏まえ、各社から「競争が行なわれている環境かどうか」という点を中心に、それぞれの主張がなされた。ドコモ・KDDI・ボーダフォンの既存各社は、「基本料や通話料は徐々に低廉化しており、学生向けや家族向けといった割引サービスが登場している」ことや「市場が飽和して成長は鈍化しているとされるが、純増シェアは動きがある」といったポイントを指摘し、競争原理は機能していると主張。
NTTドコモ辻村氏は「割引プランの登場は、市場が成熟してきたため、それぞれのセグメントに適した割引プランを提供したほうが良いと判断した」と説明したほか、KDDI長尾氏は「成熟した現在、ユーザーニーズは非常に多様化している一方で、サービスエリアの品質なども求められている。固定網とはユーザーが求めるもの、価値観が違う」と新規参入希望の2社を牽制するように語った。長尾氏は「ユーザーニーズの多様化にあわせて着うたなどの新サービスを投入した結果、auは純増シェアを伸ばしている。成熟市場でシェアが動くというのは競争があるということ」とした。またボーダフォン五十嵐氏は、各国の通信事業者と日本の事業者における投下資本利益率を比較。その資料によれば、米国は10.0%、英国は13.6%、フィンランドは20.5%、韓国は23.3%、スペインは40.4%となっている一方で、日本は14.3%となっており、同氏は「日本の事業者は“儲けすぎ”とは言えない」と指摘。さらに五十嵐氏は日本国内における他業種との利益率を比較しても「携帯電話業界だけが突出しているとは言えない」とした。
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携帯各社は、基本料・通話料ともに徐々に低廉化していると主張
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ARPUも減少傾向にある
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成熟市場においてシェアの動きがあるのも競争があることとした
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ボーダフォン五十嵐氏は、各国の通信事業者と日本の事業者における投下資本利益率を比較
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国内他業種と比べても、利益率は高くないとした
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KDDI 取締役執行役員専務 長尾哲氏
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一方、新規参入を希望しているソフトバンクBB宮川氏は、世界各国の通話料と国内キャリアの通話料、無料通話分の取り扱いの差異、ドコモとKDDIのARPUといったデータを示しながら「(既存各社は安いと言うが)これは高いと思っている。市場は40倍に拡大したにもかかわらず、マーケットシェアはほとんど変動がない」と述べ、競争原理が働いているとは言えないと主張。
またイー・アクセス種野氏も「現在の移動体通信市場は、IBMがコンピュータ市場を独占していたころに似ている。料金プランは非常に複雑で、理解できないのではないか。割引プランは学生など特定の人、あるいは世代によって(適用の可否があり)不公平だ。また10年間新規参入がないという状況だ」と指摘し、現状の携帯電話市場を改善して活性化すべく、新規参入が必要だと訴えた。
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市場規模が拡大したにも関わらず、マーケットシェアに動きがないと宮川氏は指摘
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宮川氏は海外よりも割高とも述べた
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10年間、新規参入がなかった携帯業界
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■ 論理的なデータで比較を
ソフトバンクBBが高いと訴える日本の携帯電話料金。傍証として挙げられたデータの中には、ユーザーが1カ月間に支払う平均利用額であるARPUも含まれていたが、イー・アクセス種野氏は「ユーザーは、利用料を気にかけながら携帯電話を使用している。思う存分使った結果がARPUの数値とは言えない」と述べ、ユーザーのニーズからは離れたデータであるため、検証する際の参考にすべきではないとの見解を示した。
一方、ドコモ辻村氏は「海外ではプリペイドが普及しているが、日本では利用率が低い。そういった前提があるのにARPUの数値だけ見るのは論理的とは言えないのではないか」と指摘した。また同氏は、「ソフトバンクの示したドコモの通話料データは、ユーザーの95%が加入している1年割引が含まれていない。特定の場所でしか使えない固定通信と、どこでも使える携帯電話の通話料を比べるのはおかしい」とソフトバンクBBの主張に反論。ボーダフォン五十嵐氏は「次回、このような機会がある時は、議論がきちんとかみ合うように互いに納得できるデータを付き合わせるべきだ」とした。
これに対し、ソフトバンクBB宮川氏は、「ドコモのデータを提示したが、そのデータをもって“日本の携帯電話料金は高くない”としている総務省に問題があるのではないか」と総務省に矛先を向けた。総務省の吉田氏は「もちろん現状が十分安いというわけではない。総務省としては、どうすれば現状より良くなるのか、競争が活発になるようにしていきたい」とその立場を説明した。
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宮川氏は、ドコモのFOMAでは、ムーバよりも基本料が高く、ARPUが高くなっていると指摘
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ドコモ辻村氏は、プリペイドが普及している海外とARPUで一律に比較できないとした
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辻村氏は、たとえば米国では、音声通話で着信側にも課金されるため、日本の料金と比較できないとした
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■ 宮川氏、「今より安いサービスを必ず提供する」
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ソフトバンクBB 取締役 宮川潤一氏
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今後の携帯電話市場の動向について話題が移ると、新規参入を望む2社から、それぞれサービスモデルが紹介された。
イー・アクセス種野氏は「(どこでも高速通信可能な)ブロードバンドワイヤレスアクセス(BWA)市場が拡大するだろう。“音声以上にデータ”という発想の3Gサービスは、本当にユーザーが望むサービスを提供していないのではないか。当社は、理論値ではなく、実数値で数百kbpsのモバイルデータ通信を、できれば定額で提供したい。もちろん音声通話もサポートする」と語り、同社提供のADSLサービスとシームレスに繋がるサービス像を描いた。
またソフトバンクBB宮川氏は「Yahoo!BBの登場で、固定通信では通信速度が向上し、利用料は劇的に変化した。今の携帯電話は、パケット単価は安くなっているものの、通信量がそれ以上に上がっている。もし参入できれば、既存キャリアより安いサービスを必ず提供する」と語り、既存事業者の値下げ施策が現実に追いついていないと指摘しつつ、自社サービスはその現実に対応する姿勢を見せた。
具体的なサービスモデルについて同氏は「Yahoo!BBで提供しているADSLモデムには通信カードを装着できるスロットがある。移動体通信事業に参入できれば、ユーザーに通信カードを送付するだけで、家庭にいるときも無線LAN経由で携帯電話を利用できる」と語り、有線と無線の融合を目指すとした。
このほかボーダフォン五十嵐氏は、事業者数と投資動向についてのグラフを示し、「独占状態の市場では、キャリアは投資活動を行なわない。逆に過当競争では利益が落ちるため、投資したくでもできない状況になる」と述べ、「新規参入に反対するものではない」(同氏)としながらも、現在の日本市場は適度な競争状態にあるとした。
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Yahoo!BBが固定通信の環境を変化したことを紹介
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投資活動のサイクルを示した図
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ボーダフォン五十嵐氏は、日本は適度な競争状態にあるとした
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■ MVNOは競争促進に貢献するのか?
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ボーダフォン 常務執行役 五十嵐善夫氏
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「携帯業界の競争を促進させるには料金やサービスだけなのか」という点を巡り、司会役の佐藤教授から「MVNO(仮想移動体通信事業者)や番号ポータビリティはどうか?」との質問が投げかけられた。
番号ポータビリティについては、2006年導入予定という方針が総務省から明らかにされていたこともあって、各社ともに賛成の姿勢を示した。一方のMVNOについては、既存各社は足並みを揃えて「インフラ投資は、自社ユーザーを収容するために行なっている。それを不用意に他社へ渡すというのはあり得ない」との意見を示した。中でもボーダフォン五十嵐氏は「MVNOへ帯域を用意することを義務づけているオーストラリアなどでは、あまり契約者がいない。一方、規制をかけていない米国やカナダ、デンマークではうまく行っている」と海外事情を紹介した。
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イー・アクセス 代表取締役COO 種野晴夫氏
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それに対して、ソフトバンクBB宮川氏は「MVNOについては、昔お願いしていたことはある。しかし、『自社分だけで一杯であり、余裕がない』と言われた。これは仕方ない」と既存事業者の意見に納得しつつ、「開放政策として行政が指導すべきではないか。こうものらりくらりでは、今のままでは絶対にMVNOへ帯域は開放されない」と総務省の動向に批判的な意見を述べた。さらに同氏は「ドコモに対しては、民営化以前に800MHz帯をもらっているのだから、そこはMVNOへ明け渡すべきではないか」と主張した。
またイー・アクセス種野氏は「MVNOがきちんと制度化されていて、設備投資なしでいけるのなら検討しただろうが、MVNOはありえないという現状がある」と述べ、新規参入を妨げているとの考えを示した。
ソフトバンクBBの意見を受けたドコモ辻村氏は「ドコモが分社化した92年のユーザー数は80万人。しかもアナログ方式だった。その後、デジタル方式に移行し、リスクと責任を持って現在のユーザーを収容できる設備を作ってきた。参加するのであれば、設備投資を行ない、リスクを持って、正々堂々とやってほしい」と反論したが、宮川氏は「我々も電波さえあればリスクを持ち、設備投資をやっていきたい」とさらに反論した。
最後に各社からまとめの意見が出されたが、宮川氏は「免許制度であるので、結局は行政次第だ。新規事業者が10年間出てないという現状を考えて欲しい」と訴えたほか、ドコモ辻村氏は「競争は有効に働いていると捉えており、その結果、日本のユーザーは高い利便性を受けていると言える。これは、各事業者が一生懸命取り組んできた結果であり、ある程度評価して欲しい。もちろんこのままで良いという意味ではないが、フェアな競争をゆがんだ形にしてしまってはいけない」と語った。また、KDDI長尾氏は「携帯電話は、まだ発展して、さらなる可能性を秘めているが、価格だけではなく携帯電話が生み出すいろんな価値をどう評価するのか。価格から価値への転換点ではないか」と述べ、価格競争を導くだけではなく、サービス面での競争にも注目すべきではないかとした。
■ URL
「電気通信事業分野の競争評価についてのカンファレンス」の開催(総務省)
http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/040924_1.html
NTTドコモ
http://www.nttdocomo.co.jp/
KDDI
http://www.kddi.com/
ボーダフォン
http://www.vodafone.jp/
ソフトバンクBB
http://www.softbankbb.co.jp/
イー・アクセス
http://www.eaccess.net/
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(関口 聖)
2004/10/15 22:51
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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