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総務省が設置した携帯電話などの電波が生体に与える影響について研究を行なう「生体電磁環境研究推進委員会」は、ラットを用いた脳腫瘍発生に関する実験結果をまとめ、「携帯電話の電波は脳腫瘍発生に影響が認められない」と発表した。
「生体電磁環境研究推進委員会」は、電波が生体に与える影響を調査する目的で平成9年に設立。今回の実験は平成12年より2年間行なわれたもので、発ガン性物質を与えられたラットなどを用いて、脳腫瘍の発生状況を調べた。
実験に用いられたラットは、雄雌それぞれ250匹ずつ、合計で500匹。まず妊娠中のラットに脳腫瘍を発生させるという発ガン性物質を投与し、そのラットから生まれた雌雄200匹ずつを用意。さらにそれらを、強レベルの電波を浴びせる「高ばく露群」、低レベルの電波を浴びせる「低バク露群」、電波ばく露装置に入れながら電波を浴びせない「偽ばく露群」、通常ケースで飼育する「非拘束群」に分類。残り100匹は、発ガン性物質は投与されず、通常ケースで飼育された「無処置群」となる。なお、いずれも雌雄50匹ずつで構成された。
実験に用いられた電波は、PDC方式の1,439MHzで、1日あたり1.5時間で週に5日間照射された。なお、強レベルのものは脳平均SAR(Specific Absorption Rate、比吸収率)が2.0W/kgで、低レベルの電波は脳平均SARが0.67W/kgとなっている。
2年間の実験の結果、何も投与されず電波も浴びなかった無処置群のラットでは、脳腫瘍および脊髄腫瘍は発生しなかった。発ガン性物質を投与されたラットで脳腫瘍あるいは脊髄腫瘍が発生したものは、高ばく露群が23匹、低ばく露群が27匹、偽ばく露群では30匹、非拘束群で22匹(いずれも雌雄合計)となった。
また下垂体腫瘍については、無処置群で18匹、高ばく露群で12匹、低ばく露群で25匹、偽ばく露群で32匹、非拘束群で31匹でそれぞれ発生が確認された。
実験の結果を受けて、同委員会では、「脳腫瘍や脊髄腫瘍の発生頻度やそのタイプにおいて、生存率や体重などの要因も検討したが、電波の影響は認められなかった」として、携帯電話の電波は脳腫瘍に影響を与えないと結論付けた。下垂体腫瘍については、雄のラットで発生確率が減少しているものの、電波がどう作用したか明らかではないとしている。
■ URL
報道資料
http://www.soumu.go.jp/s-news/2003/031010_1.html
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(関口 聖)
2003/10/10 17:12
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