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【WILLCOM FORUM & EXPO 2008】
喜久川社長、ウィルコムの目指す未来を語る

 27日に開催された「WILLCOM FORUM & EXPO 2008」の基調講演では、ウィルコム 代表取締役社長の喜久川政樹氏が登壇し、次世代PHS「WILLCOM CORE」を含めたウィルコムのPHS戦略を語った。


携帯電話とは違う、ウィルコムならではの未来

ウィルコム 代表取締役社長の喜久川 政樹氏
 講演の冒頭、喜久川氏は、ウィルコム以外の携帯電話市場は加入者数が増加する一方で収入増に対する閉塞感があり、また端末メーカーの海外市場での不振を挙げて、「市場は踊り場にきていると考えられる」と指摘する。同氏は情報発信の量と地域に着目したデータを示すと、東京に情報発信が集中していることを紹介し、IT化が進む中で依然として地方との情報格差(デジタルデバイド)が解消されていないとした。

 喜久川氏はこれらの携帯電話市場を、独自の発展を遂げる代わりに国際性やオープン性を失った「ガラパゴスケータイ」として、ウィルコムの目指すものではないとする。そして、ガラパゴスケータイ以外を目指すウィルコムの今後の戦略として、「生活密着型」「スマートフォン」「次世代へ繋がる端末」の3つが大きな軸として紹介された。

 「携帯電話市場の目指す方向性とは違う、ウィルコムならではの付加価値を加えたもうひとつの未来を目指す」のがウィルコムの姿勢だとする同氏は、飽和していく市場でも成長できる商品、世界をターゲットにしたオープンプラットフォーム、デジタルデバイド解消への取り組み、新たなブロードバンド市場の開拓、の大きく4つをウィルコムの取り組みとして示した。


GSM版など、W-SIMはPHSに止まらないプラットフォームへ

中国向けに加え、GSMで動作するW-SIMも紹介
 現世代を含むPHSの今後の取り組みについては、W-SIMに大きく時間を割いて説明された。この中では中国網通と中国版W-SIMを共同開発している事が紹介されたほか、同社のサポート対象ではないと前置きした上で、海外ベンダーがGSM対応のW-SIMを開発し、試作機レベルで動作が実現していることを紹介した。GSM版W-SIMが順調に開発されれば、ほかの通信方式に対応したW-SIMが登場する可能性もあるという。同氏は「PHSにこだわらないW-SIM、世界に通用するという流れを作っていく。これは次世代PHSでも実現したい流れ」と語り、PHSという通信方式を超えてW-SIMというプラットフォームを展開していく考えを示した。

 デジタルデバイド解消への取り組みでは、山形県新庄市での取り組みを例に、インターネットが利用できなかった地域にPHSを導入した事例が紹介された。また、現世代のPHSの特徴として、上り速度の安定性を示すデモンストレーションでライブ中継が行なわれたが、この通信は新庄市に導入された設備を利用して行なわれた。


「WILLCOM CORE」では定点カメラネットワークも構築

ターゲット市場には家庭向けも含まれる

新しい領域ではカメラネットワークの構築なども予定する
 「WILLCOM CORE」の名称も発表された次世代PHSへの取り組みについては、「上下100Mbpsは技術的に実現可能で、いつ導入するかという問題。その2~3倍の通信速度にも取り組んでいく。カタログスペックとの差が出にくいのもマイクロセル方式の特徴」と語った。

 「WILLCOM CORE」のターゲットとする市場については、現在のスマートフォンなどが担う市場の正統進化系といえる「モバイルブロードバンド」市場に加え、「ADSL、FTTHに次ぐ第3のアクセスになるだろう」として、家庭などにおける無線ブロードバンド市場もターゲットになるとした。同氏は「現在も、データ通信カードユーザーの2~3割は家庭でのみ使用している」ことを紹介し、次世代PHSは家庭のインターネット回線を置き換えうるものになるとした。

 さらに喜久川氏は、オープンデバイスとオープンプラットフォームにより新しい領域でサービスを展開するとして、「定点カメラ・センシングネットワーク」の構想を明らかにした。これは、全国に16万局というPHSの基地局を次世代PHSに対応させる際、カメラとセンサーも取り付けて、定点カメラとセンサーによるネットワークを構築しようというもの。

 同氏によれば、ウィルコムがPHSで利用する1.9GHz帯の電波は直進性が高いことから、基地局は必然的に見通しの良い場所に設置されていることが多いとのことで、このことが定点カメラの設置にも適しているという。また、新規にカメラを設置する場合に比べて、用地の確保、配線敷設、人件費といったコストが抑えられるというメリットもある。

 同氏は今夏を目処に、同ネットワークとサービス展開に賛同する企業とともに「定点カメラ・センシングネットワーク研究会」を発足することを明らかにし、定点カメラネットワークを利用したセキュリティビジネス、公共ビジネス、カーナビビジネスなどの検討や、プライバシーや法制度への対応を検討していくという。


定点カメラ・センシングネットワーク研究会を準備中 定点カメラネットワークへの賛同企業

 同氏は講演の最後に、医療のICT化の分野でPHS端末を活用した「ポケットカルテ」の試験サービスを6月に開始すると紹介したほか、四川大地震に関連して、現地でPHSが震災に強かったと報道されているとし、中国での利用に対応した端末を100台寄贈したことを紹介した。同氏は過去の国内での事例を含め、「災害時のインフラとしてもPHSの実力が評価されている」と述べ、「『WILLCOM CORE』でもマイクロセル方式の特徴が社会に役立てば」とし、「社員ともども、もうひとつの未来にむかっていく」と述べて講演を終えた。



URL
  「WILLCOM FORUM & EXPO 2008」
  http://www.willcom-forum.jp/

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(太田 亮三)
2008/05/27 19:17

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