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【BWA公開カンファレンス】
OpenWin孫氏、「他社に負ける理由なし」

 総務省は22日、2.5GHz帯の免許割当に向けて、申請中の4社が公開された場で議論する「広帯域移動無線アクセスシステムに関する公開カンファレンス」を開催した。

 序盤の各社からのアピールを終えると、4社で自由にディスカッションする時間となったが、Open Win代表の孫氏が「バトルですので真剣に質問したい」と、ウィルコムとワイヤレスブロードバンド企画を質問攻めにする場面が多く見られた。


孫氏、ワイヤレスブロードバンド企画に疑問を呈す

OpenWinの孫氏

OpenWinの孫氏
 孫氏は、「当社とアッカさんは自発的に計画を公開してきたが、その他2社の計画は今回初めて見た。一部でKDDIとウィルコムに内定したと報道されたが、総務省に直接質問しに訪れると『決してそんなことはない。審査する前に勝敗が決まることはありえない』ということだった。今回、両社のプレゼンを見て、想定外の特別な技術や設備投資があるとは感じられなかった」と一刀両断した。

 ワイヤレスブロードバンド企画に対しては、たびたび「パソコン向け中心で行くのか、携帯向け中心なのか」と問いかけたほか、「KDDIは、2000年6月に3G用として2GHz帯を割り当てられながら、7年間で6,200局程度しか展開していないのはなぜか。私からみればKDDIは前科一犯。たとえば子供が『饅頭欲しい』と言っても、その手に持っている饅頭を食べてから並ぶのならわかる。でも7年保有しておきながら十分活用する前に次の饅頭、というのは欲張りすぎではないか」と指摘した。

 これに対して田中氏は、「申請した企業側が熱くなっても仕方ないが」と前置きしつつ「当初はパソコン市場向けで展開するが、B5サイズ以下のノートパソコンは年間200万台以下。それだけではビジネスとしてやっていけないのは明らか。携帯電話とパソコンの隙間が広がっていると見ており、そこに位置する新たな端末の開発を進め、新たな市場を創出する。携帯かパソコンかと尋ねられると、どちらでもないということになる」と説明した。ちなみにKDDIの保有する周波数の活用については、正確な回答を出せる立場ではないためか、触れられることはなかった。

 また孫氏は、「KDDIでなければ、実現できないものとは何なのか?」と尋ねると、田中氏は「今回割り当てられる周波数幅は、30MHz幅が2カ所ということになっているが、そのうち一方は2014年まで20MHz幅に制限される。当社では利用できない10MHz幅を屋内向けにするなどで20MHz幅でも展開できる。また各社の数値だけ見ても、当社のほうが優れていると思う」と返したが、孫氏は「ではぜひ20MHz幅で参入して欲しい。OpenWinとしては、(20MHz幅で)できないことはないだろうが、公平な競争環境という観点から、絶対に2枠とも30MHz幅でスタートできるようにすべきだと考えている。(数値で優れているという点は)そうは思えない。KDDIでなければという内容はないと感じた」と指摘した。


孫氏「ウィルコムには2GHz帯を」と提案

 4社中、2社に割り当てられることから、孫氏は「本心では、全社がどうにかビジネス展開できるよう、落ち着きどころがないかと願っている。特に2.5GHz帯はWiMAX用として世界標準になった。たとえばアイピーモバイルから返上される2GHz帯はウィルコムが利用してはどうか。また2.5GHz帯を利用するWiMAX企業が1社だけという構造は、日本にとって良くないのではないか」と語る。

 これを受け、ウィルコムの喜久川氏は「現在利用している1.9GHz帯は、20MHz幅だが、これはPHS3社で利用している分。関西では現在も他社がサービス展開しており、ウィルコムだけのものではない。さらに、この20MHz幅は、将来的に16.5MHz幅に減る。日本のためにBWAを展開するには、一定の幅がないとできない。当社はこれまでいっさい無駄使いをしていない」と述べたほか、「2GHz帯はIMT-2000、それもTDD用となっているもので、残念ながらPHSは利用できない。むしろ、IMT-2000となったWiMAXこそ2GHz帯に行くのもアリではないかと思うが、ここは総務省側で考えることだろう。少なくともウィルコムが2GHz帯に、という根拠はない」と反論した。

 孫氏は「(ウィルコムに2GHz帯と)押しつけがましく言うつもりはない。ただ、国民の貴重な資源である電波を割り当てるのならば、皆が納得できる理由でなければならない。納得いかないものは健全ではない。割り当て時には、その理由を全て開示して欲しい。現状では、OpenWinが他社に負ける理由として納得できるようなものは1つもないと感じている」と述べた。

 また、孫氏は「ウィルコムの筆頭株主は外資ファンドのカーライル。次世代PHSには多額の投資が必要だが、ファンドがウィルコムを数十年売らないと保証できるだろうか。また、ワイヤレスブロードバンド企画とウィルコムにはKDDIと京セラが出資している。2枠とも両社に割り当てられれば、おかしいのではないか」と問いただした。

 喜久川氏は「カーライルは確かにファンドだが、中長期で当社株式を保有している。実際にカーライル出身の取締役を交えて、今回、2.5GHzに名乗り出ることになったわけで、次世代PHSへの投資もサポートしてもらえるだろう。KDDIと京セラの出資は、歴史的経緯がある。1985年の通信自由化で、当時の第二電電に京セラが出資し、その後携帯電話ではauが、PHSではウィルコムが生き残ってきただけ。ウィルコムの経営に戦略的な意味合いはない。30%保有する京セラも重要事項に反対できる権利しかない」と説明し、KDDI・京セラの出資に実行力はないとした。

 この点については、ワイヤレスブロードバンド企画の田中氏も「喜久川氏の言うとおり。KDDIとしてもウィルコムの経営に関与しないと聞いている。京セラからワイヤレスブロードバンド企画への出資は、安定株主という単純な理由に基づく」と述べていた。


ウィルコムでは中国などでPHSが広がっていることをアピール

ウィルコムでは中国などでPHSが広がっていることをアピール
 WiMAX陣営は、世界標準であることを利点の1つとしている一方、ウィルコムは中国市場などでの展開をアピールしていた。これを受け、孫氏は「中国向け端末メーカートップのUTスターコムは、かつてソフトバンク傘下だったため、私は中国PHS市場に詳しいが、現状は日本メーカーではなく現地メーカーがシェアを握り、端末も売れず、純減傾向にある」と指摘。アッカ・ワイヤレスの木村氏も「次世代PHSのグローバル展開はどう考えているのか?」と質問した。

 喜久川氏は、「現在、中国には160万局もの基地局があり、次世代PHSも評価してもらいつつある。タイはさらに一歩進んでいる状況。両国以外にも、日本で次世代PHSの事業化に成功すれば対応してもらえるのではないか。中国で日本メーカーが健闘していないといっても、チップセットは国内メーカーが占めている」と述べたほか、カンファレンス終了後に駆けつけた報道陣に向けて「中国市場が純減といっても、これからパケット通信という段階」と述べ、影響はないとの見方を示していた。


アッカ木村氏「当社は新規事業者」

アッカの木村氏

アッカの木村氏
 4社のうち、アッカ・ワイヤレスは、親会社のアッカ・ネットワークスが固定網のみ展開し、移動通信を手掛けていない。木村氏は「新規事業者としての視点でやりたい。固定網では世界で最も安く、普及率が高いブロードバンド国家になり、サービスやアプリケーションは劇的に多様化した。ワイヤレスであっても、インフラ事業者だけでは浸透しない」と述べ、他社との協業が重要との考えを示した。

 実際にアッカ・ワイヤレスに対しては、ドコモのほか、放送や鉄道などの事業者が参画することになっている。木村氏は「エコシステムを構築し、低廉な市場の構築を手伝いたい。競争促進と市場活性化に新規参入は重要だ」とアピール。

 11月に入って、2GHz帯を割り当てられていたアイピーモバイルが免許を返上した件を挙げた木村氏は「当社はファイナンスも盤石」としていた。


各社MVNOを推進、孫氏は「情熱を発散できなければ困る」

 質疑を通して、MVNOに関する各社の考え方も説明された。ウィルコムはMVNO事業を積極的に推進しているが、アッカの木村氏は「ドコモにも競合する可能性があると理解してもらった上で、無線関連のサポートをしてもらうことになっている。経営はあくまでもアッカ主体。MVNOも積極的にやっていく」と述べた。

 ワイヤレスブロードバンド企画の田中氏は「端末自身は自社ブランドだが、アプリケーションだけ提供するMVNOと、当社がインフラに徹するタイプのMVNOの2種類で展開することになるだろう。アッカは当社と同じ考えのようだ」と説明した。

 孫氏は「我々は明確にMVNO中心主義。ワイヤレスブロードバンド企画はKDDI中心主義と思える」とした。ただ、各社がオープン志向であることを表明すると、「この情熱を発散できないことは絶対困る。2社だけの割り当てであれば、どこかに必ず不満が残るが、当社に割り当てられない場合は、相手がKDDIであっても一緒にやるのも厭わない」と強い意欲を見せた。



URL
  カンファレンス開催案内
  http://www.soumu.go.jp/s-news/2007/071119_4.html

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(関口 聖)
2007/11/22 22:30

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