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【mobidec 2005】
クアルコム松本氏、携帯向けテレビ放送技術「MediaFLO」を語る

クアルコムジャパン 松本氏
 mobidec 2005でクアルコムジャパン 取締役会長の松本徹三氏は「携帯向け放送サービスの将来像~MediaFLO~」と題した講演を行ない、クアルコムが推進する新技術「MediaFLO」を紹介した。

 MediaFLOは動画や音声などを配信する技術の名称。FLOは「Forward Link Only(下り線のみ)」の略で、サーバー側から端末への一方向通信のみで構成される。双方向通信を行なうインターネットや電話とは異なり、テレビやラジオなど「放送」に分類されるものだ。

 MediaFLOは従来の地上波テレビ放送と同様に、東京タワーのような大きな電波塔で広い範囲をカバーさせる。松本氏はケータイのように多数の基地局がいらないことも利点だと語る。そうした電波塔から発信されるデジタル化された動画や音声番組を、ケータイで受信するのがMediaFLOの仕組みだ。さらにMediaFLOでは受像の一部処理をCDMA2000やW-CDMAのチップで行なわせるので、従来のケータイに20ドル程度のMediaFLOチップを付加するだけで対応できるのもメリットだという。

 ビジネスモデルとしては、放送専門会社が放送を行ない、携帯電話会社が放送専門会社から放送受信権利を購入し、ユーザーに受信に必要な鍵をケータイのネットワークで提供する、といった形を想定しているという。受信に必要な鍵はケータイのネットワーク経由で販売し、iモードなどのコンテンツと同じように料金を徴収できる。松本氏は「ワンセグは、携帯電話会社の収入にはならないが、ユーザーの時間をワンセグに取られてしまうので通信が減り、逆に収入を減らす可能性もある」とし、従来型の放送に対するMediaFLOの優位性を強調した。


MediaFLOは通信と放送の融合の理想型、と語る
 松本氏はMediaFLOについて「モバイルにおける『通信と放送の融合』の理想型」と表現する。「テレビには番組表があり、ユーザーがそれにあわせる必要がある。一方のモバイルには番組表はなく、短い空き時間を利用してメールや暇つぶしをする。いまのワンセグ放送では番組表にあわせて放送されるので、空き時間に見たい番組が見られるとは限らない」とし、ワンセグ放送がモバイルに最適化されていないことを指摘。一方のMediaFLOには、従来型の放送に近いリアルタイムストリーミング型配信に加え、配信された番組を端末側にキャッシングし、好きなときに見る「クリップキャスト」という仕組みも利用できる。クリップキャストはユーザーの興味のある番組だけをキャッシングし、また新しい番組が配信されればキャッシュは上書きされていく。クリップキャストの仕組みについて松本氏は「一定のメモリ量で、常に新しいものを蓄積しておく。これはメモリの節約ではなく、ユーザーの時間を節約するもの」と説明する。

 すでにクアルコムは米国で、オークションなどにより必要な周波数ライセンスを取得し、放送専門の会社も設立して、サービス展開の準備を整えているという。さらに松本氏は「おそらく1~2週間のうちに」と語り、近日中に正式な発表があることも示唆した。米国の大手キャリアが2006年10月に試験放送を開始し2006年11月に本放送を開始するという。

 米国でのサービスの内容としては、700MHz帯の6MHzを利用し、ストリーミング型配信を15チャンネル、ステレオ音楽配信を10チャンネル、蓄積型クリップキャスト配信を40チャンネルが放送されるという。動画はH.264フォーマットを用い、毎秒30フレームを目標としているという。ストリーミング型配信としてはFOXやCNN、Discovery Channelといった番組を配信する予定で、クリップキャスト配信については「柔軟に対応できるので、まずは希望者を募り、サービス開始直前に決定する」と説明した。


米国におけるMediaFLOの事業家について 米国におけるMediaFLOの計画内容

 松本氏は「欧米での周波数配分はオークションで決定されることが多いが、日本では『美人コンテスト式』とも呼ばれる方法で配分される」と紹介する。欧米の多くの国では、お金をいちばんかけた会社が電波を利用できるが、日本では優れたプランを提示した会社が審査で選ばれ、電波の利用権を得られる。松本氏は「クアルコムはアメリカの会社だが、コンテスト式の方がよいと思う。そしてMediaFLOはコンテストに勝てる自身がある」と技術的優位性への自信を示した。

 MediaFLOの技術的な利点の説明として、松本氏はほかのデジタル放送方式との比較表を紹介した。たとえばワンセグ放送(ISDB-T方式)と比較し「ワンセグ放送は実によくやったと思う。しかし悲しいかな、429kHzしか帯域がなく制限が多い」と説明。MediaFLOは地上波デジタルの余った帯域を利用するワンセグとは異なり、最初からケータイ向けに最適化して設計されているので、周波数効率がよく消費電力も小さいと説明した。


MediaFLOの送信技術について。標準化も予定されている MediaFLOとほかのデジタル放送方式の比較表

 日本でのMediaFLOの展開について松本氏は「できないと考える人もいるが、わたしたちはできると考えている。問題は周波数帯」と語る。日本では地上波デジタル放送の導入により、従来13CH~62CHまであったUHF帯のテレビ放送が、13CH~52CHまで減らされる。余った周波数帯のほとんどは携帯電話事業で利用されることが決定しているが、53CH~54CH(12MHz)はまだ利用目的が決定していない。松本氏は「天の恵みで53CHから54CHに余裕がある」と説明。「われわれがやるわけにはいかないが、どこかの日本の会社が近いうちに手を上げていただけると期待している。放送と通信で取り合うこの周波数帯を、それらが融合した事業が利用するというのは美しい話じゃありませんか」と語った。

 また松本氏は「よくワンセグをつぶそうとしているのでは、といわれるがとんでもない。ワンセグは最初の1歩。ワンセグでケータイのテレビに対する関心が高まれば、次の2歩目としてMediaFLOを展開したい」と語る。「ワンセグとMediaFLOで同じコンテンツを流してくれればよいと思う。放送会社はすぐにはMediaFLOを高く評価しないとは思うが、いつか良さを理解してもらって導入してもらえると思っている」とも述べた。


日本の周波数再編計画について 日本でMediaFLOを展開する際に想定されるビジネスモデル例


URL
  クアルコムジャパン
  http://www.qualcomm.co.jp/
  MediaFLO(米クアルコム)
  http://www.qualcomm.com/mediaflo/index.shtml
  mobidec 2005
  http://www.mobidec.jp/

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クアルコム、「MediaFLO」をデモ


(白根 雅彦)
2005/11/30 18:41

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