10月29日~31日の3日間、パシフィコ横浜で液晶や有機ELといった薄型ディスプレイ(FPD)の総合展示会「FPD International 2003」が開催されている。同イベントは、昨年までの「LCD/PDP International」が名称変更され、有機ELといった新しいディスプレイ技術なども複数のブースで紹介されている。本誌では携帯電話関連の技術などを中心にお伝えする。
■ シャープ、音声出力機能付きCGシリコン液晶をデモ
シャープのブースでは、CGシリコン技術を使ったディスプレイを展示。この中で、液晶パネルから音声出力が可能なシステム液晶をデモンストレーションしており、多くの来場者が関心を寄せていた。
CGシリコン液晶は、CGシリコン薄膜を利用した液晶パネル。シャープ製の携帯電話やPDA端末などで採用されている。今回のイベントで注目されていた音声出力機能付きシステム液晶は、液晶パネルのガラス基板上にオーディオ回路を一体形成したもので、小型・薄型化が求められるモバイル端末のディスプレイをターゲットにしている。
デモンストレーションでは、イベント会場の音の影響を受けないよう専用のボックスが設けられ、音楽のビデオクリップなどを再生していた。デモ機は一般的なPDA端末のディスプレイと同程度のサイズとなったが、説明員によれば、将来的には携帯電話などにも応用できるとのこと。
なお、こうした技術では、オーセンティックなどもディスプレイから音声出力できるスピーカーシステムなどを発表しているが、基本的な技術はどのメーカーも大差ないという。同社では、音声出力機能付き液晶ではなく、音声出力機能付きCGシリコン液晶として他社と差別化を図りたい考えだ。
このほか、CEATEC JAPAN 2003でも展示されていたVGA(640×480ドット)表示が可能な液晶ディスプレイや、既存のCGシリコンを、携帯電話やデジタルカメラのモックアップに搭載して紹介していた。ブースでは高視認性、広視野角、高コントラスト、高速応答など、シャープのCGシリコン液晶の特長をアピールする傍ら、説明員は「デジカメやケータイ、どんなサイズのどんなものに搭載できる」と汎用性の高さも強調していた。
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音声出力機能付きシステム液晶
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CGシリコン液晶を紹介
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CGシリコン液晶搭載の携帯型モックアップ
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VGA表示が可能な液晶ディスプレイ
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■ エルディス、1つのパネルで両面表示できる有機ELパネル
東北パイオニア、半導体エネルギー研究所、シャープの合弁会社となるエルディスのブースでは、1つのパネルで両面表示が可能な携帯電話向けの有機ELパネル「2.1インチ デュアルエミッションタイプ アクティブマトリクスフルカラー有機EL」を参考出品として紹介していた。
同有機ELパネルは、1つのパネルで同一映像の両面表示が可能。製品化や価格などの具体的な話は未定となっているが、携帯電話でのニーズを見込んで開発したとのこと。なお、文字を表示した場合に裏面の文字は反転して表示されてしまうが、これも裏面の画像を反転させて正常に表示させる機構を設置することで解決できるとしている。
また、同ブースでは、2.4インチ、QVGA(320×240ドット)表示が可能なフルカラー有機ELパネルなども展示。2.1インチ、QCIF(176×144ドット)表示の海外向け有機ELパネルも紹介していた。両モデルとも2004年には量産開始となる見込み。
同社の説明員は、こうした有機ELパネルの価格について「やはり、既存の液晶よりも高く売りたい」としている。また、「バックライト付きの液晶よりも確実に薄くできる」と話していた。
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両面表示が可能な有機ELパネル
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透過型と非透過型を展示していた
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2.4インチ、QVGA表示の有機ELパネル
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2.1インチ、QCIF表示の海外向け有機ELパネル
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■ 各メーカーがQVGA対応などの液晶モジュールを紹介
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三洋電機のQVGA有機ELパネル
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三洋電機のブースでも、現在開発中のQVGA表示が可能な有機ELパネルが展示されていた。こちらの製品についても量産時期は2004年度中になる見込み。ブースでは、デジタルカメラやデジタルビデオカメラ用途の有機ELパネルと、動画対応携帯電話をターゲットにしたモデルを紹介。カメラ向けのパネルのドット配列は「RGBデルタ」方式、携帯電話向けは「RGBストライプ」方式と異なっている。
また、三菱電機のブースでは、QVGA表示の低温ポリシリコンTFT液晶を参考出品していた。高輝度・高解像度が特長。同社の説明員によれば、端末ベンダーの要求は一時期透過型に集中していたが、最近では従来からあった「明るさ」を求める声が高くなっているという。
日立のブースでは、メイン・サブディスプレイ一体型のQCIF表示の透過型TFT液晶を参考出品。従来のQQVGA(160×120ドット)から表示サイズが大きくなったもので、2003年末には量産されるという。開発中のQVGA表示の液晶なども展示されていた。
このほか、国内のモジュールメーカーでは、セイコーエプソンがQVGA表示のCrystal Fine液晶を紹介していたほか、東芝松下ディスプレイテクノロジーが現在国内外で採用されている同社の液晶を紹介していた。
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三菱電機はQVGA表示の低温ポリシリコンTFT液晶を参考出品
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日立のブースでは、開発中の製品も含めて多数の液晶モジュールが展示された
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セイコーエプソンはCrystal Fine液晶を紹介
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東芝松下ディスプレイテクノロジーは同社のモジュールを採用した国内外の端末を紹介
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■ URL
FPD International 2003
http://expo.nikkeibp.co.jp/fpd/
シャープ
http://www.sharp.co.jp/
エルディス
http://www.eldis.co.jp/
三洋電機
http://www.sanyo.co.jp/
三菱電機
http://www.mitsubishielectric.co.jp/
日立
http://www.hitachi.co.jp/
セイコーエプソン
http://www.epson.co.jp/
東芝松下ディスプレイテクノロジー
http://www.tmdisplay.com/tm_dsp/
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・ 各社がディスプレイ技術を紹介
・ シャープ、V401SHや携帯向けVGA液晶を展示
(津田 啓夢)
2003/10/29 17:56
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