レビュー

「ZenFone 3」ファーストインプレッション

au VoLTE&デュアルスタンバイ対応モデルの魅力

「ZenFone 3」(ZE520KL)

 ASUSが国内発表したAndroidスマートフォンの最新モデル「ZenFone 3」(ZE520KL)。発表に先駆け実機を試用する機会を得たので、ファーストインプレッションをお届けする。

DSDS+au VoLTEの意義

microSIMとnanoSIMを装着し、LTE(4G)と3Gの同時待受が可能

 ZenFone 3最大の魅力は、幅広いネットワークへの対応だ。この秋からは、いわゆる「DSDS」(Dual SIM - Dual Standby)と呼ばれる、2つのSIMカードスロットを装備し(Dual SIM)、LTE(4G)と3Gを同時に待ち受けられる(Dual Standby)に対応した端末が国内でも数機種登場しているが、ZenFone 3は、それに加えてauのVoLTEに対応した初の端末となる。

 auのVoLTE端末は、2014年の冬モデルとして登場して以来、国内においては3Gネットワークに繋がらないLTE専用端末となっている。裏を返せば、auのVoLTE対応SIMおよびau系のMVNOのVoLTE対応SIMは、au VoLTEをサポートした端末でなければ通話サービスが利用できず、事実上、電話機としては使えないという状況になっていた。つまり、富士通のarrows M02やarrows M03など、ごく一部のモデルを除けば、市場を賑わせているSIMフリースマホのほとんどは、ドコモ系とソフトバンク系のネットワークでしか使えないという状況だったのだ。

 ZenFone 3の場合、SIMスロット1にmicroSIMとSIMスロット2にnanoSIMを装着可能で、SIMスロット2の側はmicroSDカードと排他利用となっている。デュアルSIM状態で使うには、microSDの利用を諦める必要があるが、この点は多くのデュアルSIM端末と同じ構造だ。

DSDSとau VoLTEの実際のところ

設定メニューには「デュアルSIMカード設定」の項目がある

 筆者は、SIMスロット1にドコモのmicroSIM、SIMスロット2にauのnanoSIMを装着する形でしばらく端末を使ってみた。利用にあたっては、それぞれAPNを選択・設定する必要があるのだが、APN情報が開示されていないau本家のVoLTE SIMをそのまま使う場合で、ネット上を探せばそれらしき情報にたどり着けるものの、難易度は高い。逆に言えば、au系を含め、あらかじめ多くのMVNOのAPN情報がプリセットされているので、ドコモやMVNOのSIMを使う場合であれば、とくに設定に戸惑うようなことはないだろう。

「デュアルSIMカード設定」の中でメインSIMの選択などを行う
電話の着信画面。どちらの番号宛にかかってきたのかが分かる

 試しに編集部のスタッフ2人に頼んでドコモ側の番号とau側の番号に対して同時に電話をかけてもらったところ、ある時はドコモ側で、またある時はau側で着信した。繋がらなかった側には圏外の時と同じ内容のガイダンスが流れ、しばらくするとSMSで不在着信の通知が届くという具合だ。これにより、仕事用とプライベート用の番号を1台の端末で同時に使用することが可能になる。

 データ通信については、どちらかのSIMを選択して利用することになる。賢い使い方としては、通話定額サービスが提供されている大手キャリアのSIMを音声通話に、割安な料金でデータ通信サービスが利用できるMVNOのSIMをデータ通信に使うというようなことも可能だ。

メインSIMを他のSIMに切り替えると、au VoLTE側は圏外の状態になってしまう

 注意したいのは、au VoLTEのSIMはメインSIM(優先データサービスネットワーク)に設定しないと通話できないという点だ。筆者の利用パターンで言えば、メインSIMをドコモ側に切り替えると、ドコモ側のLTE通信が有効になり、au側ではLTE通信が行えなくなる。結果的にLTEでの通信を必要とするau VoLTEが利用できず、au側での音声通話が行えない状況となる。この状態では、au側ではSMSの受信も行えないため、不在着信にも気づけないことになる。大事な着信を待つ場合は通話転送の設定を行っておきたい。

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背面に搭載されたカメラと指紋センサー

 それ以外のZenFone 3の魅力としては、ハイレゾ対応やソニー製のモジュールを搭載することによるカメラ機能の底上げもある。F値2.0ということで、昨今の明るいレンズをウリにしたハイエンドスマホと比べると、暗い場面ではやや見劣りするところもあるが、光学式手振れ補正やコンティニュアスAFといった機能により、快適な撮影が可能だ。このほか、4K動画の撮影にも対応している。

 背面のメインカメラの下には指紋センサーが搭載され、ロック解除もスマートに行える。充電端子はUSB Type-Cとなり、世代交代を感じさせる。

充電端子はUSB Type-Cになった

 評価が分かれるのは、外観のデザインだろう。前面と背面を2.5Dのガラスで挟み、側面をアルミニウム合金のフレームで囲むという造形は、良く言えば洗練されたデザインと表現することもできるが、これまでの背面がラウンドしたZenFoneシリーズの印象とは異なり、なんだか今風のありふれたスマホの見た目になってしまったとも感じさせる。いつまでも同じデザインである必要はないが、個人的には、持ちやすく、一目でZenFoneと識別できた以前のフォルムも悪くないと思うのだ。

 いずれにしても、ZenFone 3は、基本機能、デザインともに、しっかりとトレンドを押さえた端末であることは間違いない。DSDS+au VoLTE対応という初の試みは、ユーザー獲得を狙うMVNO各社にとっても魅力的な機能で、今シーズンのSIMフリースマホの中でも注目の1台と言えるだろう。

ZenFone 3で撮影した写真(1)
ZenFone 3で撮影した写真(2)