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クアルコム、Snapdragon車載システムをデモ

ハンドル、エンジン以外をほぼ全てコントロール

 米クアルコムは現地時間12日~13日にかけ、本社のあるサンディエゴにて同社の最新の取り組みを披露する「International Editor's Week 2015」を開催した。さらに14日には、サンフランシスコで「From the Internet of Hype to the Internet of Everything」と題した、「Internet of Everything(IoE:あらゆるもののインターネット)」周辺の製品・技術・動向を紹介するイベントも行われた。

 ここでは、2つのイベントで披露された車載システムのデモンストレーションの内容についてお伝えする。

米クアルコム本社があるサンディエゴで各国メディア向けのイベントが開催
サンフランシスコのイベント会場

複雑な車載システム、通信、先進安全機能をワンチップでカバー

 あらゆるものがインターネットにつながることを意味するIoE/IoTの分野の1つに、自動車のシステムをインターネットに接続するコネクテッドカーがある。クアルコムもすでにこのカテゴリーに対してアプローチしており、2014年に「Snapdragon 602A」という車載向けチップセットを発表。翌2015年のInternational CESでも、同チップを採用するシステムを実車に搭載して展示していた。

 Snapdragon 602Aは、クアッドコアCPUとAdreno 320を採用するなどSnapdragon 600の高い基本性能を踏襲しているのはもちろんだが、3画面までのHDディスプレイと4つまでのカメラを同時にコントロールでき、GPSに加えGLONASSにも対応することで、より精度の高い位置情報の収集を可能にしている点でそれとは異なる。

 今回の2つのイベントでも、International CESと同様Snapdragon 602Aによって実現した車載システムをマセラティとキャデラックの車両に搭載し、仮想的に走行している状態を再現しながらデモが行われた。

Snapdragon 602Aを使用したシステムが車載されたマセラティ
センターコンソールの大型ディスプレイ

 例えばマセラティでは、車内前方のセンターコンソールに比較的大きな縦長のメインディスプレイを備え、運転席のメーターパネルも全面がディスプレイになっている。運転席と助手席の間にはリアシートに座る人が操作するための小型ディスプレイがあり、さらにバックミラー、左右のドアミラーもディスプレイ化され、車載カメラの映像が映し出されるようになっている。また、4つの近接センサーで数十メートル先の障害物や人の接近を検知する仕組みも備える。

メーターパネルは速度やエンジン回転数だけでなく、ナビの内容なども映し出す
運転席と助手席の間、リアシートの足元にあるディスプレイ
ドアミラーもディスプレイ化。横にあるのは近接センサー
車両前方にも2つ、近接センサーが設けられている

 これらのディスプレイやカメラ、センサーによって可能になるのは、1つは3Dグラフィックを使ったナビゲーション。メインディスプレイ上でマップが滑らかに動き、進むべきルートを示すとともに、メーターパネル上でも進行方向や走行レーンなどを表示する。道路の制限速度と実際の車両スピードを比較して、スピードが出すぎていれば警告する機能もある。

こちらはキャデラック
ナビゲーションとともに再生中の曲、予定なども表示している
メーターパネル部にはカメラ映像に重ねる形でルート案内を表示
カメラ映像をもとに車両の周囲360度の視界を再現可能

 ボイスコントロールによる操作も可能となっており、行き先を告げてナビシステムの目的地を設定したり、ウインドウを開け閉めする様子も実際に披露してみせた。その他、メインディスプレイのタッチ操作によって、車内エアコンの温度・風量調整、ラジオや音楽の再生、音量設定などもレスポンスよく実行された。

 このように、ディスプレイ表示、位置情報の取得、4Gネットワークを利用した地図データの取得、音声認識、サウンド処理、カメラ・センサー・車載装備のコントロールをリアルタイムに行い、同時に無線(IEEE802.11p)によるDSRC技術を利用した車両対車両、車両対人の相互通信による位置情報の交換といった安全に寄与する機能などを実現した車載システムを、Snapdragon 602Aチップセット1つが司ることになる。

 したがって、内部ハードウェアがシンプルに構成され、クアルコムがもつ高速で安定した通信機能を車両へ容易に実装でき、コストメリットも追求できることがSnapdragon 602Aを採用するメリットと言える。詳細は別途リポートするが、現地時間の14日に機能強化が発表された「Qualcomm AllPlay」もこの車載システムに組み込まれ、スマートフォンと連携してオーディオのシームレスなワイヤレス再生を可能にしており、コネクテッドカーの実現可能性だけでなく今後の進化もかいま見えるデモンストレーションとなった。

Qualcomm AllPlayも利用可能。車内に持ち込んだ個人のスマホで再生している曲を車載オーディオから流したり、その後すぐに他の人のスマホから別の曲に切り替えたり、といったことが可能
EV向けワイヤレス給電技術「Qualcomm Halo」もデモ
車両の下に置かれた送電モジュールと、車両に取り付けられた受電モジュールを接近させ、充電する
モジュールに内蔵されているコイル

日沼諭史