ニュース
「KDDI ∞ Labo」第8期の5チーム発表、IoT関連は2チーム登場
(2015/3/26 15:34)
KDDIは、スタートアップ企業やチームを支援する取り組み「KDDI ∞ Labo」の第8期として採択された5チームを発表した。今後KDDIやメンター企業とともにサービスや製品を開発し、3カ月後に成果を発表する。
選ばれたチームのサービス名は、「シンデレラシューズ」「LYNCUE(リンキュー)」「Oshareca(オシャレカ)」「Bee Sensing」「PICK UP!」の5つ。開発を支援するメンター企業としてKDDIがそれぞれ参加するほか、パートナー連合からも企業が参加する。
「シンデレラシューズ」
「シンデレラシューズ」は、靴擦れの痛みから女性を解放するというコンセプトで、自分の足のデータをもとに、足に合う靴を既存の通信販売サイトの中から選び出すサービス。代表は、未法人で靴デザイナーを13年務めたという松本久美氏。松本氏は「たくさんの靴が売られているのに、靴擦れの悩みは無くなっていない。今必要なのは橋渡しで、選んであげること」と企画の背景を語った。
パートナーから参加するメンター企業は三井不動産で、担当の光村圭一郎氏は「明確なニーズがあり、的確なソリューションが提供できればと思った」と採択理由を語った。
「LYNCUE」
「LYNCUE」は、日常生活に自然と入り込むというコンセプトで、照明やプロジェクターのコンテンツを遠隔地同士で共有するというもの。代表は未法人でシステムインテグレーターの塩塚丁二郎氏。塩塚氏は、過去にセンサーを内蔵した座布団などを発表したことにも触れながら、体験や空間を共有する際にポイントになるのが照明とし、遠隔地同士が繋がるというコンセプトを紹介した。
メンター企業は日立製作所。担当の岡田亮二氏は、「採択した最大の理由は、面白いから。私たちの物づくりも役立てられると思った。コンセプトをもう少し絞る必要はあるだろう。3カ月は厳しいかもしれないが、なんとかモノを作れるところまでいきたい」と語った。
「Oshareca」
「Oshareca」は、行きつけの美容院の美容師個人にフォーカスを当てて、直接予約ができるプラットフォームを提供するというもの。代表は横浜国立大学在学中で、株式会社えほむ CEO兼CMOの佐竹夏美氏。佐竹氏は、美容師は競争や待遇などさまざまな面で厳しい環境にあるとした上で、美容院では電話での予約が7割を占めるというデータを示し、Webサイトなどでの既存のツールも新規顧客の獲得向けがほとんどと指摘。「既存顧客に特化した予約のプラットフォームにする」とコンセプトを紹介した。
メンター企業はクレディセゾン。担当の浦田文秀氏は、「単なる予約だけだと面白くないが、美容師に着目しているのが面白い。美容院は年間1万店がオープンし、8000店が閉店すると言われている。美容師が抱えている悩みを解決するプラットフォームになるのではないか」と採択した理由を説明した。
「Bee Sensing」
「Bee Sensing」は、養蜂業にIoTとAIを導入し、センシングにより負担の大きい巣箱管理から生産者を解放するというもの。代表は未法人で、日本IBMの営業から養蜂農業家に転職したという松原秀樹氏。松原氏は、蜂蜜の国内流通量の93%が輸入品であると指摘し、国内においては、人による巣箱の管理数の限界や、ピーク時で3~5万匹の蜂を扱うリスクといった問題を挙げる。「Bee Sensing」ではIoTを活用したデータで生産性の向上を図るほか、生産履歴も残せることで、これまでにない透明性を確保した商品も作れるとし、「7%を50%にしたい」と日本産の蜂蜜の生産量拡大を意気込んだ。
メンター企業は凸版印刷。担当の永野武史氏は、自身が事業創出の担当で農業にも関わり、「スマートアグリ」という言葉も広がっているとするものの、「現在は大手企業によるもの」と指摘。「アイデアの段階で多くの人がイイというものは、うまくいかないと言われている。1人の悩みを解決すると、その先に広がりがあるともいわれる」と永野氏は語り、IoTや農業というテーマを抱えながら、自身の養蜂業にフォーカスを絞っている点などを採択理由として挙げた。
「PICK UP!」
「PICK UP!」は、モノづくりへの欲求を喚起するというコンセプトの「DIYハウツー動画メディア」。代表は株式会社SUPERSTUDIO CEOの林絋祐氏で、プレゼンはCOOの真野勉氏が担当した。クリエイターによるライフハック系のDIY動画を制作し、主婦から美大生までさまざまなターゲットを設定するほか、足立区の倉庫と連携するなどイベントも企画。Eコマースなども予定しているとした。
メンター企業はテレビ朝日。担当の里見諒氏は、サイバーエージェントに出向し動画配信サービスも手がけていたとのことで、「ネット動画を新規に立ち上げて成功するのは難しい」と率直に分析するものの、「プレゼンテーションの資料で“日本のおじいちゃんの威厳復活”と書くのは今どき珍しい(笑)。元祖動画屋として、アウトプットの形を変えれば、できることはあるのではないか。ネット動画の市場に風穴を開けたい」と支援していく姿勢を語った。
1割がIoTで応募、件数も過去最高に
各チームのプレゼンテーションに先駆けて、KDDI 新規ビジネス推進本部 KDDI∞Labo長の江幡智広氏から第8期の取り組みやこれまでを振り返った説明が行われた。
江幡氏は、メンター企業などで参加するパートナー企業が業種を超えた15社にまで拡大した様子を説明。パートナー企業がスタートアップチームと連携できるようさらにマッチングを強化していくとした。
すでに発表していた大阪イノベーションハブとの連携についても、「大阪から有力なチームが出てきたら、(KDDI ∞ Laboに)参入もあるかもしれない。8期のチームと競争ができれば」などとした。
江幡氏によれば、過去7回を振り返ると、初期はソーシャル系や、アプリ単体で完結するツール系が多かったという。2013年頃からはジャンルが多様化し、北米の動向を反映する形で、BtoBも出てきたとのこと。そして第8期で明確になったのはIoTで、応募全体の1割がIoTでの応募だったことが明らかにされた。
応募件数については、それをアピールする目的はないとして公表されていないが、パートナー企業によるプログラムを開始した第7期から大幅に増加したとのことで、第8期も過去最高になったとした。
江幡氏は、質問に応える中で、3カ月というスタートアップ支援の期間について、「すぐに変更することは考えていない」とし、3カ月後のゴールは変わらず設定するとしたものの、ハードウェア開発も伴うIoTが増えたことなどから、「必要があれば変えていきたい」ともしている。