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富士通が指輪型デバイスを開発、ジェスチャーで文字認識が可能
作業現場向けの操作デバイス、2015年度中の商用化を目指す
(2015/1/13 14:55)
富士通研究所は、スマートフォンなどとBluetoothで連携し、指先のジェスチャー操作で操作を行ったり、空中に書いた文字を認識したりできる指輪型ウェアラブルデバイスを開発したと発表した。製造現場、保守点検などの作業現場に向けた製品で、今後は現場で実証実験を行いながら、2015年度中の商用化を目指すとしている。
富士通は2014年2月に「グローブ型ウェアラブルデバイス」を技術発表しており、ジェスチャー操作またはNFCタグへのタッチで、ヘッドマウントディスプレイに表示する内容を切り替えるといった情報支援を実現していた。
実証実験を重ねる中で、現場からは文字入力、とくに数字の入力を、作業を中断することなく行いたいという要望があったとのことで、今回開発された指輪型ウェアラブルデバイスでは、NFCタグの読み取り機能は継承しながら、モーションセンサーと認識技術を用いた文字認識が可能になった。
指輪型ウェアラブルデバイスはBluetooth Low Energyに対応しており、アプリをインストールしたスマートフォンやパソコンと連携して使う。基本的にヘッドマウントディスプレイを利用している作業員の情報支援デバイス、という位置付けで開発されている。重さは約10g。バッテリーは充電式だが、すぐに利用を開始できるよう交換式となっており、本体にバッテリーを充電する機能は搭載されていない。
現時点でバッテリーの駆動時間は約8時間。これは、NFCタグのリードを約1500回と、文字認識で約1500文字分に相当するという。NFCタグのリードのみで利用した場合は約3000回に相当し、実用レベルを達成しているという。
人差し指に装着する設計で、親指で押せる場所にボタンが用意されている。手書きの文字認識を行う際には、文字を書き始める開始時点で、ボタンを1回押す。そうすると指の軌跡の記録が開始され、文字認識が可能になる。文字認識に必要なスペースは手のひら程度で済む設計となっている。
空中の“一筆書き”の軌跡を補正
空中で文字を書く動作は、軌跡のすべてが記録されてしまう“一筆書き”になってしまうが、富士通研究所が開発した空中手書き文字入力処理技術では、一筆書きの筆跡から不要な部分を削除する技術が搭載されており、数字や小数点、漢字の認識も可能になっている。数字については、現時点で約95%の認識率としている。漢字は、クセのある字を書く人にどこまで対応できるかが課題になるようだ。デバイスを装着した人が作業中などで動いていても、これらをノイズとして排除できる、体の運動成分の抽出技術も採用されている。
指輪型ウェアラブルデバイスではこのほか、搭載されるボタンで連携するアプリのメニュー画面を呼び出し、メニューに振られた番号をジェスチャーで書くことでメニューを操作することが可能。アプリがカメラと連携すれば、撮影した画像に文字を書き込むといった利用も可能になっている。本体にはLEDが搭載されており、作業漏れやミスなどで点滅して警告するといった利用も想定されている。
13日には都内で発表会が開催され、富士通研究所 ヒューマンセントリックコンピューティング研究所 ヒューマンインタラクション研究部の村瀬有一氏が解説した。村瀬氏は、指輪型ウェアラブルデバイスについて、作業現場向けのウェアラブル端末のひとつとして開発したことを明らかにした上で、騒音の大きい現場、目を離せない作業など、目的に応じてバラバラに体に装着することで作業を支援できるというウェアラブルデバイスの特徴を紹介する。
指輪型ウェアラブルデバイスでは、グローブ型デバイスで得られたフィードバックを元に、空中に書いた軌跡から文字を抽出する技術などにより、作業を中断させずにメモや文字を入力する手段を実現したという。
コンシューマ向けの開発は「今は計画には入っていない」(村瀬氏)。コンシューマ市場を含めて、市場のシェア獲得を狙うというより、「作業現場では入力がネックになっており、それをいち早く解決する。まずは現場支援で、そこが目標」と、需要やニーズが明確な法人向け用途で開発されている様子を語っている。