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インテルチップ搭載のスマートデバイスと、アプリ開発の未来

ジェフ・マクベイ氏

 インテルが、10月30日に開催した開発者向けの「インテル ソフトウェアカンファレンス 2014」では、同社のコーポレーションデベロッパー製品部門のジェフ・マクベイ氏による基調講演が行われた。

 基調講演では「クロスプラットフォーム・ツール:40億台のデバイスへのチケット」というテーマで、HTML5のコードひとつでクロスデバイスの開発を助ける「インテルXDK」と、ネイティブアプリの開発ツール「インテルINDE」について紹介された。この2つのツールはすでに開発者向けに提供されているもの。

 ジェフ・マクベイ氏によると、「現在注目を集めているAndroid開発において、商業的な成功を収めるには、25億台に上るAndroid以外のデバイスにも目を向ける必要がある。しかしながら、異なるユーザー・インターフェイスとプラットフォームの機能ごとに再コーディングし、すべてのデバイスでアプリを効率良く検証するのはたやすいことではない」と語る。インテルが提供するツールは、Androidのノウハウとコードベースを活用し、さまざまなOS、デバイスにおいてのHTML5および、ネイティブ(C++/Java)アプリの開発を支援する。作成から、ビルド、デバッグ、テスト、チューニングまでを効率的に行えることをアピールした。

インテルCPU搭載のスマートデバイスが増えつつある

 日本国内で発売されているスマートフォンやタブレットは、ARM社やクアルコム社など、いわゆるARM系のチップセットを搭載したモデルがほとんどで、各ベンダーが提供しているアプリもそれに準拠するものが多くを占めている。近年、レノボやASUSなどの主にPC系メーカーがグローバル展開しているスマートデバイスは、インテルチップのものが増えてきているという。

 日本のキャリアでは、auから発売しているASUS製の「MeMO Pad 8」がそれだ。同イベントの展示会場では、インテルチップ搭載のスマートデバイスがずらりと並び、アプリとともに紹介されていた。

 10月28日に日本でも発表されたASUS製の「ZenFone 5」(A500KL)の展示が見られたが、同製品はクアルコムのSnapdragon 400を採用していたはず……。実は、これのグローバル端末ではインテルチップを採用したものがすでに提供されているとのことで、会場に展示されていた。そう遠くない将来、日本版「ZenFone」シリーズでもインテルチップを搭載したモデルが発売されるかもしれない。

インテルチップが搭載されたグローバル仕様の「ZenFone 5」

ファイナルファンタジーIIIやATOKなど、インテル向けに移植

 インテルチップ搭載のスマートフォンやタブレットが増えつつある。そうした背景があり、一部の先進的なアプリベンダーでは、インテル アーキテクチャー搭載のAndroid向けアプリへの移植を進めている。

左から、スクウェアエニックス「FF3」担当の宮崎康平氏と、「ケイオスリングIII」のアシスタントプロデューサーを務める松本悠希氏

 ゲームソフト制作会社のスクウェア・エニックスでは、人気ゲーム「ファイナルファンタジーIII」と「ケイオスリングスIII」において、インテル対応が完了している。20年前に登場した「ファイナルファンタジーIII」を、5年前にDS向け、その後iOS、Android向けにリメイクし、今回新たにインテル アーキテクチャに移植したものを提供している。

「ファイナルファンタジーIII」プレイ端末はレノボ製の「K900」

 「ケイオスリングスIII」は、Intel 7/8チップ搭載のデバイスに対応することで、フル3Dのゲームがサクサクと快適に遊べるようになっている。担当の松本氏によると「キャラクターが喰い気味に攻撃を仕掛けるが、それにもついていけるスピード」なのだという。

「ケイオスリングスIII」プレイ端末はASUS製の「Memo Pad 7」

 名古屋のゲーム制作会社ワンダープラネットが提供しているアクションRPG「スラッシュオブドラグーン」においてもインテル アーキテクチャ搭載向けに対応している。「スラッシュオブドラグーン」は現在90万ダウンロードを記録。日本語、英語、韓国語、中国語(繁体字)に対応して、グローバル展開をしているという。

左から、ワンダープラネットの只腰耕平氏、村田知常氏

 担当者によると、「ARM向けのアプリは端末のスペックによって、挙動にバラつきがあったが、インテルの場合、プラットフォームの良さを100%発揮できる」と説明してくれた。「スラッシュオブドラグーン」では、今後ゲーム動画を記録できる機能を搭載する予定なのだという。「インテル アーキテクチャのライブラリに動画を残せる機能が含まれているため、そうしたチャレンジも可能」とメリットについて話していた。

 日本語入力システム「ATOK」を提供するジャストシステムも展示コーナーを設けていた。Android向けに支持されてきた「ATOK」アプリはARM系に対応するもの。2014年8月には、インテル アーキテクチャ向けに移植したものを提供している。

 KDDIのアプリ取り放題サービス「auスマートパス」にもATOKがラインナップされているが、ASUS製「MeMO Pad 8」のために、インテル版を新たに用意したという。担当者によると、(現在はないが)ドコモさんからもインテルの端末が発売されたときには「スゴ得コンテンツ」にインテル版をすぐに提供するとしている。

 今後は、端末・アプリともにインテル向けが浸透しつつあるのかもしれない、ということのようだ。

川崎 絵美