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KDDI株主総会、auらしさと付加価値サービスの拡大をアピール

シニア向けスマホも開発を検討中

 KDDIは、第30期定時株主総会を開催した。株主総会の模様は、別室にて映像中継で記者向けにも公開された。第1号から第4号までの決議事項はすべて可決された。

株主総会に登壇したKDDI 代表取締役社長の田中孝司氏

 登壇したKDDI 代表取締役社長の田中孝司氏は、株主に対し、第30期の2桁成長や増配予定といった実績などを報告した後、第31期の課題と取り組みについても解説した。

 田中氏は、今後の課題について、「競争環境の変化への対応」「ネットワークの強化」の2つを大きなポイントとして挙げる。「競争環境の変化への対応」では、auらしさが重要になるとして、導入を開始したキャリアアグリゲーションやWiMAX 2+対応モデルの投入を紹介。アニメパスなどサービスの拡充に加えて、新たな成長機会へのチャレンジとして「au WALLET」にも触れ、5月末に発表されているように、受付開始から23日で発行が累計100万枚を突破したと報告した。

 これらにより、第31期の業績予想は営業利益が前期比10%増の7300億円、1株あたりの年間配当も第30期の130円からさらに30円を追加した160円を予想する。また、株主優待制度をスタートし、株式の保有数や保有期間に応じた優待券を発送した。

 田中氏は、「(キャリアの)同質化が進む中で、auブランドを磨き上げ、付加価値サービスであらたな成長を目指す」と語り、競争軸の変化を自ら起こしていく意気込みを示した。

 株主総会に参加する株主から質問を受け付ける質疑応答では、書面および会場に参加した株主から、国際会計基準(IFRS)に移行(適用)するかどうかが問われた。のれん償却などの関係などから、グローバルに活動する企業の企業買収などにおいてメリットがあるとする一方、デメリットもあるとし、時期は未定ながら「戦略的な位置付けを明確にして、最小限のコストで適用できるよう検討している。前向きな検討を進めていきたい」(代表取締役執行役員副社長の両角寛文氏)とした。

 シニア向けに簡単に使えるスマートフォンを出して欲しいという要望には、田中氏は、「auにおいて、スマホ浸透率は加入者の半分になっている。いわゆるレイトマジョリティとして、シニアユーザーもたくさんいると認識している。この層に対して、ユーザー目線で受け入れられる端末の開発を進めていきたい」と回答した。

 株主からは、週刊の経済誌で報じられた、スマートフォンの関連製品をめぐる不正取引疑惑についても、記事の真偽が問われた。報じられている内容は、外部メモリカードを10万枚ほど発注し、その後に約6万5000枚を廃棄したというもの。田中氏は、「厳正かつ徹底的に調査した結果、不正な取引は行われていない」と明言。一方で、「疑惑が発生したこと自体は問題で、経営改善に努めていく」とし、株主に心配をかけたことを謝罪した。

 田中氏からは、問題となった取引について補足説明もなされた。田中氏によると、この外部メモリカード(と関連する周辺機器)の発注は、iPhone 5s/5cの発売を控えて、準備されたもの。NTTドコモがiPhoneの取り扱いを開始するとあって販売競争の激化が予想される中で、iPhoneへのデータの移行を簡単にできるよう、外部メモリカードを含めた周辺機器を、iPhoneとセットで販売する計画を立てたという。iPhoneを月間100万台販売できると見込んだ上で、セット率10%として、これらの周辺機器10万個を調達した。

 しかし、iPhoneの供給数が少なかったことから計画は頓挫したという。「供給が非常に少なかった。特にiPhone 5sは数が少なかった。予約販売もできないと判断した。数カ月で、外部メモリカードをセット販売する判断をやめた。外部メモリカード自体は売っているが、時期を逃すとあまり売れない。それを廃棄した」と田中氏は説明し、10万という個数が当初の計画からすれば妥当な数字であったこと、当初のiPhoneの供給が少なく、セット販売も見送ったことから、大量の在庫を処分する結果になったという経緯が説明された。

 株主総会では最後に、第1号議案「剰余金の処分」、第2号議案「取締役13名選任」、第3号議案「監査役1名選任」、第4号議案「取締役の報酬額改定」の4つについて、すべて可決され、終了した。

太田 亮三