日本マイクロソフトとドコモ、法人向けタブレットで協力


 日本マイクロソフトとNTTドコモは、法人向けタブレット市場の開拓について、協業することで合意した。両社では、Windowsの資産と、ドコモのLTEサービスである「Xi」を連携させてソリューションを一体的に提供するなど、共同での取り組みを進める。

 今回、両社の協業では、XiとWindows 8端末を組み合わせて、共同で法人顧客を開拓する。また共同でプロモーションを実施して、需要を呼び起こす。さらにパートナーソリューションについても共同で開拓していく。

 協業の背景として、両社では、10月に発売されたマイクロソフトのパソコン向けOS「Windows 8」が登場したこと、タブレットでのタッチ操作に対応している一方、法人では業務効率化や外出時の資料作成などで、タブレットのニーズが高まりつつあると指摘する。こうした背景から、高速通信サービスである「Xi」と、タブレット対応のプラットフォームである「Windows 8」を組み合わせて展開することになった。

 両社は1日、都内で記者会見を開催。日本マイクロソフト代表取締役社長の樋口泰行氏、NTTドコモ代表取締役社長の加藤薫氏が出席し、説明を行った。

 

既存資産、運用ポリシーなどとの親和性

日本マイクロソフトの樋口社長

 樋口氏は、法人でのタブレットのニーズとして、対面販売での電子カタログ、小売業での在庫チェックなど、幅広い用途があると指摘する。

 タブレットへのニーズが高まる一方、法人ではセキュリティ対策が求められ、社内システムとの兼ね合い、既存アプリの動作性の確保などから「Windowsアプリを継承しながら、タブレット的に使えるものを出してと、多くの方から要望が寄せられていた」と、法人からの要望を明らかにした。

 一方、ドコモの加藤社長もまた、法人ではWindowsが広く利用されていることに触れた。Windows 8では、ディスプレイの回転機構などで、ノートパソコンとタブレットを使い分けられる機種が存在するなど、デバイスも幅広く、オフィスの内外の用途にあわせて使い分けられるとして、「新しいワークスタイルが生まれるといい。バリューの最大化を実現したい」と語る。

 

法人市場に強みを持つ両社

ドコモの加藤社長

 業界の動向からすると、ソフトバンクモバイルがiPadを法人向けに展開し、新たにauもiPadを取り扱う格好となっている。こうした状況は、両社のタッグに拍車をかけたのか。この点への質問に対して、両社ともにiPadに関するコメントは避けた。一方で、互いの評価するポイントとして、法人市場への浸透度が挙げられた。

 マイクロソフトの樋口氏は「ドコモは法人市場で圧倒的に強く、シェアが高い」とコメントする。そのシェアとはどの程度か、ドコモの加藤氏は「ドコモユーザーの中でも10~20%(が法人ユーザー)。また、法人市場全体でドコモのシェアは50%に達していないと思う」と述べ、シェアの半数近くを占めていることを示唆。タブレットそのものは立ち上がりの時期、として、まだこれからのデバイスとの認識を示した。

 そしてドコモの加藤氏は、「法人ではWindowsは大きなウェイトを持っている。構築済の社内システムとの親和性で、Windows 8に優る物はない」と評価する。法人でのWindowsは、「インストールベースで3000万台存在する」(樋口氏)とのことで、両社ともに、法人市場で一定の評価を受けていることが、今回の協業の強みになるとされている。

 また今回の協業は、排他性を持つものではない、とのこと。加藤氏は、「最終的な判断は導入企業」として、ケースによってはAndroid端末の提供もある、とした。

 

Windows Phone 8について

 マイクロソフトとドコモの協業となれば、Windows Phone 8の展開も気になるところ。樋口氏のプレゼンテーションではWindows Phone 8については全く触れられなかったが、加藤氏のプレゼンテーションでは最後の最後でWindows 8の個人ユーザー向けの展開、およびWindows Phone 8について語られた。

 「法人向けの動きは、当然、マス市場にも広がると思われる。Windows 8へのユーザーのニーズに応えながら、さまざまな検討を行っていきたい。そしてマイクロソフトと言えば、Windows Phone 8も大変注目されている。ドコモとして、スマートフォン市場は拡大中で、ニーズが多様化していく中、Windows Phone 8の需要が高まる可能性は大いにあると考えている。導入については、市場動向やユーザーニーズを注視したい。必要に応じて検討を続けたい」

 こう述べた加藤氏の言葉は、Xi通信モジュールを内蔵するWindows 8搭載機器の個人ユーザー向け市場をにらみつつ、Windows Phone 8への関心を示した物だ。ただ、質疑や囲み取材で、Windows Phone 8の今後の取り組みについて問われると、両者ともに明言を避けた。

 加藤氏は「マイクロソフトとメーカーの話もあり、まだ導入時期は申し上げられない。今回のWindows 8の進展、グローバルで登場するWindows Phone 8の状況次第」とコメントし、さらに囲み取材で「Windows Phone 8も法人との親和性が高い場面があるといいなと思う」と、期待感を示すにとどめた。

 樋口氏は「(グローバルでは発売されるWindows Phone 8端末が日本で登場したいのはなぜか? という問いに)戦略、としか言えない。それ以上は時が来たらお知らせする」と口をつぐんだ。

 ドコモの加藤社長は、10月11日の冬モデル発表会で「Windows Phone 8は少し遅れる。採用できるものは採用したい」と導入に前向きな姿勢を示していた。さらに今回、ドコモとマイクロソフトのトップが揃った会見において、ドコモ側からWindows Phone 8に触れ、ある程度、投入を期待させる形となったが、具体的な取り組みについては慎重なコメントに留まり、先行きはまだ不透明ということもあらためて示された。

提携の概要法人では、タブレット端末へのニーズの多様化が進む
課題を解決できるとアピール両社の取り組み
市場活性化を狙う提携のポイント
デバイスの広がりXiは10月末時点で670万契約に
提携の概要両社で市場を牽引する
エコシステムを構築

 

(関口 聖)

2012/11/1 16:32