NECがLTEフェムトセル用新技術、速度向上はかる


 NECは、LTEフェムトセル(宅内向け小型基地局)向けに、電波干渉を抑えて速度を向上させる技術を開発した。複数のフェムトセルを制御したり、送信電力を制御したりすることで実現するもので、今後実用化を目指す。

 フェムトセルは、ユーザーの自宅など、ごく狭い範囲をカバーする超小型基地局、あるいはそうした小型基地局がカバーするサービスエリアを意味する言葉。ビル屋上などに設置される通常の基地局は、数百m~数kmの範囲をカバー。“巨大”という意味の言葉を付けてマクロセル、マクロセル基地局などと呼ばれる。

 今回、技術開発の対象となったLTEフェムトセルは、従来より高速通信が可能になったLTE方式対応のフェムトセルのこと。爆発的に増える通信量を処理する方法の1つが、フェムトセルでサービスエリアを細かく区切っていく、というやり方だが、NECではフェムトセルを多数設置すると、周辺の基地局との干渉が発生し、速度が低下すると指摘する。

 今回開発された技術は、3つの特徴がある。1つは、あるマクロセル基地局のエリア内にある複数のフェムトセルを一括でコントロールするというもの。データ通信量の増減にあわせて電波の送信電力を制御する。通信量が増加すると、送信電力を増強してその通信を処理するが、送信電力が増えると電波が強くなって、周辺の同じ帯域を使う基地局と干渉する。一括コントロールにより、干渉を抑えるというもので、同技術を用いないケースと比べ3倍多くフェムトセルを設置でき、通信速度は1.2倍速くなる。

 もう1つは、ヘビーユーザーが利用するフェムトセル単体の送信電力を制御するというもの。多くの通信を処理するため送信電力が増加すると、周囲と干渉して、他のユーザーの速度が落ちてしまう。1つ目の技術を使うと、ヘビーユーザーもライトユーザーも一括で送信電力が抑えられ、速度が落ちてしまい、不公平な扱いになってしまう。そこで、ヘビーユーザーが利用するフェムトセルだけの送信電力を抑える、という技術が必要となり、適用すれば、ヘビーユーザーの通信速度は落ちる一方、ライトユーザーの速度が1.3倍向上する。

 3つ目の特徴は、マクロセル基地局のエリア内にある端末について、フェムトセルから受ける電波干渉電力を集計し、フェムトセルの送信電力を一括で自動制御する。新しいフェムトセルを導入する際、そのエリアの干渉度合いを踏まえて調整した設定値が利用でき、最初から周辺の基地局との干渉を抑えられる。

 NECでは、今年2月に発表したフェムトセルを6月までに出荷する方針だが、そちらではこの新技術は搭載されないとのことで、新技術は2013年度以降のフェムトセル製品に搭載される予定。

(関口 聖)

2012/5/10 14:57