Evernoteが語る最新動向、増加する連携サービスも紹介


 米Evernoteは、同社の最新動向や新たに登場した連携サービスを紹介する記者発表会を開催した。同社CEOのフィル・リービン氏やパートナー企業から説明が行われた。

Evernoteの新サービス

Windows Phone向けEvernoteの日本語版が登場

 リービン氏からは、Evernote関連の新機能、新サービスが紹介された。まず11月8日に発表された内容としては、新たにプレミアム会員(有料会員)の決済方法として、NTTドコモのキャリア課金がサポートされ、ドコモの利用料と合算して支払えるようになった。また有料サービスの値付けは、日本円となり、月額450円、年額4000円で提供される。ただし、既存のプレミアム会員はドル建てで支払うこともできる。

 また、これまで海外向けには提供されてきたWindows Phone向けのEvernoteだが、今週末には、Windows Phone向けEvernoteの日本語版の提供が開始される。Metro UIに沿ったデザインで、フォントや間合いなど、他のプラットフォームのEvernoteのデザインとは異なる仕上がりとなる。ライブタイル対応で、Evernoteのテキスト、音声、写真の記録をワンタッチで呼び出すこともできる。

メインメニューオプション
ライブタイル対応プレミアムサービスは日本円で決済可能に

 このほか、ここ最近の取り組みとしては、iOS向けアプリでのリッチテキスト編集機能、iPad版の刷新が行われた。さらにEvernoteが初めて買収した企業・サービスとして紹介されたアプリが「Skitch(スキッチ)」だ。写真を取り込んで手描き風のイラストを付け加えたり、書き込んだりすることができるアプリで、同社の新オフィスを開設する際には、オフィス内のコンセントの配置などを相談する際に活用されたとのことで、ビジュアルでわかりやすいコミュニケーションを実現するアプリ、と紹介された。これまでのAndroid版、Mac OS版が提供されているほか、8日からは日本語サイトが用意され、iOS版やWindows版も今後提供される。

Skitchの紹介画像の編集などが可能

 iPad 2のカバー「スマートカバー」を活用するアプリ「Evernote PEEK」も紹介された。7月より提供されている同アプリは、スマートカバーが段階的にオープンできる、という仕組みを利用したもので、少しだけカバーを開くと、画面最下部に表示された内容のみ閲覧でき、もう少し開けると、回答がわかる、といった使い方ができ、暗記学習などで活用できる。これまで50万ダウンロードを記録した。スマートカバーなしでも「PEEK」の機能を活用できるよう、新たにバーチャルカバー機能が提供されることになったほか、PEEK向けに小学館、学研、日経BP(日経ビジネス)のコンテンツが提供される。漢字の読み方、歴史関連書籍、子供向け書籍などが提供され、“めくりながら学ぶ”といった使い方ができる。

 Evernoteのほか、Skitch、Evernote PEEKが登場し、3製品がラインナップされることになったが、リービン氏は今後さらに3製品をラインナップに追加する方針を示した。

EVERNOTE PEEK少しずつスマートカバーをめくって暗記学習に活用
バーチャルカバーを採用へ新たに3つの製品が登場する予定という

パートナー企業による連携製品とサービス

 Evernoteと連携するパートナー企業の製品、サービスについては日本法人会長の外村仁氏から紹介された。

 コクヨS&Tのスマートフォン連携ノート「CamiApp」では、来春、「CamiApp Evernote Edition」が発売される。rakko社が開発するiPhoneアプリ「FastEver Snap for CamiApp」で、Evernote対応の「CamiApp」を撮影すると、撮影した内容がEvernoteへすぐアップロードできる。従来のCamiAppと比べ、ノートに記された内容の認識の仕組みに大きな変更はないが、Evernoteへのアップロード手順が簡略化されることが特徴とのこと。「FastEver Snap for CamiApp」は、「CamiApp Evernote Edition」専用アプリになるとのことで、従来のCamiAppでは利用できないという。

CamiApp白い表紙のEvernote版が登場する

airpenPocket

 ぺんてるのデジタルペン「airpenPocket」では、オーリッドの人力OCRサービス「O-RID KYBER(オーリッド カイバー)」と連携し、Evernoteへ転送できる機能の提供が開始されている。10月下旬より提供されている同サービスは、現時点では、本格サービスの提供前ということで、airpenPocketユーザーは無料で利用できる。手元のairpenで記した内容をデジタル化するということで、会議の議事録作成などでの活用が想定されている。

airpenで書いた内容人力でテキストに

Bamboo

 ワコムのペン&タッチタブレット「Bamboo」(バンブー)では、Evernoteとの連携が可能になり、BambooでEvernote内のコンテンツへの入力、編集などが可能になる。既存のBambooで利用できるとのこと。ただパソコン向け製品のみの連携で、タブレットやスマートフォンで利用できるスタイラスペン「Bamboo Stylus」での連携は、まだ未定とのこと。

 11月8日に発表されたブラザーの複合機「マイミーオ」の新製品「DCP-J925N」「MFC-J825N」「MFC-J955DN/MFC-J955DWN」では、12月1日より、EvernoteやFacebookなどのサービスと連携できる機能が利用できる。これによりマイミーオでスキャンしたデータや、マイミーオに装着したメモリカードのデータを連携サービスへ転送できる。対応サービスの追加については、ファームウェアのアップデートで可能になる見込みで、今後検討されるとのこと。

マイミーオスキャンデータをEvernoteへ
Facebookなどに対応対応サービスの拡充も今後検討される

UPIC CoCo

 文房具メーカーのプラスでは、A6サイズのアルミパッドとデジタルペン(アノトペン)を組み合わせて、プレゼンテーションに利用できるツール「UPIC CoCo(ユーピック ココ)」を12月中旬に発売する。店頭価格が2万円程度になるという同製品は、デジタルペンがパソコンとBluetoothで接続し、アルミパッド上で動かして、パソコンのプレゼン資料に書き込んで、強調したいポイントをビジュアルで示したりできる。アルミパッドには、消しゴム、マウス操作などのアイコンが表示され、デジタルペンでタッチすると、パソコンも操作できるようになっている。「UPIC CoCo」で編集したデータはEvernoteに保存でき、スマートフォンなどから後で参照することもできる。

プレゼン資料に書き込みデジタルのペンとアルミパネルの組み合わせ

 ソニーとの連携として、新たにSony Tabletにも搭載される。また、ソニーのテレビでもEvernoteが利用できるとのことだが、機能自体は他のデバイスでのEvernoteと同等で、番組情報の活用などはできないとのこと。

Sony TabletにもEvernoteを搭載
テレビでもEvernote

 パートナー各社の製品・サービスについて一通り説明が行われた後、日本語入力の父、伝説的な人物として、MetaMoji代表取締役社長の浮川和宣氏が紹介された。同氏はiPadを契機として新たな日本語入力にチャレンジし、「7notes」を開発した経緯を紹介。今回はEvernoteとのコラボレーションで世界展開を目指すと意気込んだ。来週には、iPad向け「7notes」にEvernote関連の強力な機能を搭載する、とした同氏は、7notesで作成したドキュメントにEvernoteのタグを付けたり、自動的にEvernoteにオリジナルファイルやテキストを送信し、写真や手書き入力した画像、テキスト変換したデータをEvernote上で検索できるようにすることを紹介した。

左からリービン氏、浮川氏、外村氏
7notesのオプションとしてEvernoteとの連携機能が用意されるオリジナルデータと画像、テキストデータを送信

2つのビジョンで成長を目指す

リービン氏

数カ月ぶりに東京を訪れたというリービン氏は、震災から時間が経ち、東京に活気が徐々に戻ってきたと述べ、プレゼンテーションをスタート。Evernoteのミッションは、「全てを記録する」ことであり、人間にとっては外部にある脳と位置付け、そうした面での機能改善を重視する。

 たとえば時間の費やし方として、暇潰しする際にはソーシャルメディアやゲームなどを使う一方、時間を節約したいという場合にはEvernoteを使う、としたリービン氏は、Evernoteは“かなづち”のようなベーシックなツールであり、活用することで“脳の使い方を変える”とアピールする。続けて同氏は「GPSを活用すれば迷子にならないように、Evernoteを適切に使えば、もう『忘れる』ということがなくなる」と語り、この考え方は挑戦的で、多くのパートナー企業に支えられていることを紹介。あらためて、百年続く企業を目指す、という経営方針を示した。この“百年経営ビジョン”は、日本企業からインスピレーションを得たもの、と以前から公言するリービン氏は、シリコンバレーの企業らしいスピーディな活動を行うとともに、ユーザーには誠実に対応し、長期間活動していく企業を目指すとした。

日本のユーザーは200万に

 “外部の脳”としての機能を提供し、長期間の活動を目指すという2つのビジョンを示すEvernoteについて、「ユーザーはぜひ一生、使って欲しい」とリービン氏は語りかける。主な機能は無料で提供される同サービスだが、リービン氏は「Evernoteは一生、無料で利用できる。使えば使うほど、気にいってもらえると思う。インターネットサービスは無料のものばかりだが、愛用してもられば利用料を支払っても良いと考えてもらえる。そのためEvernoteはより多くの方に使ってもらいたい。我々は(ユーザーが預ける)データの分析などは行わない。データの販売も行わない。より良い製品を開発するだけだ」と語り、口コミでユーザーが広がっていることを紹介。全世界の1600万ユーザーのうち、200万が日本のユーザーであり、当初の100万ユーザーはまでは31カ月かかったが、200万ユーザーには7カ月で達したことを明らかにした。今後の展開として、これまでシリコンバレー、モスクワ、東京にオフィスがあったとのことだが、音楽や映画、そしてITを組み合わせた大規模イベントが開催されることで知られる米国のオースティン(テキサス州)にもオフィスを構える。さらに今後は欧州、北京、シンガポールにもオフィスを開設する予定で、東京で開発された機能が他の地域でも利用できるなど、世界中でイノベーションをもたらす、とした。

オフィスを拡充開発者向けイベントも開催

(関口 聖)

2011/11/8 18:52