イー・モバイル決算、ガン社長が900MHz獲得を切望


エリック・ガン氏

 イー・アクセスは、2011年度第1四半期(2011年4月1日~6月30日)の業績を発表した。

 イー・アクセスは、2011年3月末をもって連結子会社だったイー・モバイルを吸収合併した。現在、「イー・モバイル」の名称はサービスブランドとなっている。今回の2011年度第1四半期決算は、合併後、初の単独決算となる。このため決算シート上では前年同期比については明示されていないが、発表会内では過去業績と照らし合わせた形で紹介された。

 第1四半期の業績は、売上高が476億500万円(前年同期比3%減)、EBITDAが157億円(前年同期比3%増)、営業利益が64億8900万円(前年同期比1%減)、経常利益がの32億1700万円(前年同期比13%減)、当期純利益は31億6600万円(前年同期比70%増)となった。

 現時点では通期予想に変更はなく、2011年度通期予想は売上高2000億円、営業利益300億円、純利益170億円となっている。2011年第1四半期は設備投資額が80億円(前年同期比8%減)と小さくなり、こうした要因によって純フリーキャッシュフローが52億円と改善している。

 セグメント別に見ると、イー・モバイルブランドで展開している無線通信事業は、売上高が355億円4800円(前年同期比4%増)、EBITDAが105億円(前年同期比16%増)となった。ADSLなどの固定通信事業は、売上高が120億5700万円(前年同期比19%減)、EBITDAも52億円(前年同期比16%減)となった。



ARPU、解約率、顧客獲得コスト

 イー・モバイルの無線通信事業は第1四半期、前年同期比20.3%増の22万3000契約を獲得した。これにより6月末までの累計契約数は334万1000契約となった。なお、2011年度通期予想は385万契約で、第2四半期以降の結果によっては上方修正の可能性もあるという。

 1契約者あたりの月間平均収入を意味するARPUは、前年同期より540円下がり2860円となったほか、月次の解約率も1.5%と前年同期の1.37%より上昇している。こうした一方で、販売報奨金やインセンティブなどと呼ばれる1契約者あたりの獲得費用は2万円と、前年同期の2万5000円よりも低くなった。

 イー・アクセスでは、ARPUの減少および解約率の上昇について、各社との競争が激しくなった結果としている。しかし、通期の予想としては損益計算書(PL)に影響を与えるほどではないという。顧客獲得コストの減少は、イー・モバイル網を利用しているMVNO事業者の契約獲得が増えたことなどによるもの。

 また、イー・モバイルはかつて、ネットブックとデータ通信端末のセット販売により契約を伸ばしてきたが、ネットブック購入者の解約ピークはすでに過ぎているとのこと。契約から2年を経過したユーザーが古い契約を解約して、新規契約する傾向は依然とあり、既存顧客の機種変更への施策を検討しているという。

通信エリア、データオフロード施策

 通信エリアの進捗については、6月末で42Mbpsエリアの人口カバー率が44.6%、21Mbpsは67.4%となっている。LTEサービスについては来夏にも下り最大75Mbpsのサービスを展開する予定。

 このほか、携帯電話事業者が取り組んでいる3Gのデータオフロード施策については、現状では自宅でのトラフィックが多いため、その分を固定通信で代替するといった施策を検討しているとした。

「GP02」の品切れ

 イー・アクセスの代表取締役社長であるエリック・ガン氏は、四半期業績として過去最高益となったことをアピールした。2011年度第1四半期の業績回復要因として、モバイルWi-Fi-ルーター「GP01」の販売好調、AKB48の板野友美を起用したテレビCM、法人需要の拡大などを挙げた。

 またガン氏は、7月28日より販売を開始した「Pocket WiFi GP02」が品切れ状態となっていることに触れた。同氏の説明によれば、発売開始当初、数千台の端末を用意したが3日間で底をついてしまったという。

 現在、端末供給が追いついていないため、主要な量販店では一部受け付けているものの、郊外店舗では「GP02」の受付自体が停止状態にある。ガン氏は、8月中旬頃より需給バランスがとれはじめ、9月以降は全てのショップで契約できるようになる予定と説明した。



700/900MHz帯

 総務省では、携帯電話向けに割り当てられる予定の700/900MHz帯について、制度整備に向けた参入希望調査を実施している。まず、900MHz帯は2012年に参入可能になる予定で、700MHz帯が2015年となる。ガン氏は、この新周波数帯における、イー・アクセスとしての立場を説明した。

 「我々にとって非常に重要な施策になる」と語ったガン氏は、900MHz帯が獲得できれば、現在利用の1.7GHz帯などのサービスを組み合わせて100Mbps超のLTEサービスが提供できるとした。

 イー・モバイルが現在利用している1.7GHz帯は、3Gの携帯電話サービスを提供する事業者としては非常に珍しい帯域となっている。ガン氏はこの周波数帯について「使っている事業者が少なく、非常に苦しい。(新周波数帯は)国際標準バンドで端末調達もやりやすくなる」と語った。

 さらに、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの各社に割り当てられた帯域幅を合計すると、3社はいずれも100MHz幅を利用している。その一方で、イー・モバイルは30MHz幅のみ割り当てられている。ガン氏は社名を伏せる形で「A社とB社はプレミアムバンド(800MHz帯)を持っており、A社・B社・C社ともにIMTのコアバンド(2GHz帯)を持っている。イコールフッティング(条件をそろえること)になっていないのではないか。900MHz帯の30MHz幅を積極的にとっていきたい」とアピールした。

 イー・アクセスでは1.7GHzの周波数追加を求めていくとともに、当面900MHz帯の獲得に向けて取り組んでいく方針。900MHz帯を獲得した場合、まずはW-CDMA方式で展開しLTEに移行していく。



 




(津田 啓夢)

2011/8/4 21:15