au、地下鉄などにおける通信品質向上の取り組みを解説


KDDI 商品開発統括本部 モバイルネットワーク開発本部長の湯本敏彦氏

 KDDIは、エリア・通信の品質向上に関する説明会を開催した。比較的最近に実施された品質向上の取り組みが解説され、駅構内でデモンストレーションも行われた。

 説明会で解説を行ったKDDI 商品開発統括本部 モバイルネットワーク開発本部長の湯本敏彦氏は、夏モデルの発表会などでも触れられたエリア・通信品質にこだわる各種の施策を紹介。具体的には、通信品質の向上としてEメール、EZwebが快適に使えるようになったとアピールしており、例えば、東京・JR山手線の駅ではEメール送信時間が約40%短縮されたことや、東京の主要な地下鉄駅でEZwebへの接続時間が約40%短縮されたことなどを紹介した。

 湯本氏によれば、WINサービスにおける月間のデータ通信量は直近の3年で約3倍に伸びているとのこと。このうち9割がEZwebで、YouTubeなどの動画系サイトの利用、モバゲーなどSNS系サイトの利用がトラフィックの伸びを牽引する形になっている。また、利用頻度という面ではメールの送受信が全体の7割を占め、添付ファイル容量の拡大やデコレーションメールの普及によりリッチ化している。着うたなどのコンテンツについても、データサイズは大きくなる傾向だ。

 エリアに関する取り組みでは、「みんなでつくろう!auエリア」を実施しており、ユーザーからのエリアに関する問い合わせや要望に素早く回答する体制を整えている。ユーザーからの問い合わせでは実に80%が自宅に関するものとのことで、湯本氏は、「一般的な場所のエリア化が充実したことで、個人宅での不満が出るようになったのではないか」と分析。従来より提供されているレピーターに加えて、フェムトセルの受付も開始しており、ユーザーの要望に応える形のエリアの向上の取り組みは今後本格的に展開されることになる。

Eメール送信時間、EZweb接続時間を短縮

 湯本氏からは、前述の全国で対策を展開しているという「Eメール品質向上の取り組み」が詳しく解説された。これは、最近になって対策されたもので、メール送信にかかる時間を短縮したというもの。例えば山手線全駅の平均では、添付メール送信時の時間が対策後には約40%短縮できたとし、5月~6月の対策前・対策後の時間を比較したグラフも示した。これらは、インフラ対策として、基地局チャネルの増強および性能の最大化を行った結果による成果という。最近多いSNS系の利用では、上りのアクセス回数が多いものの、実データはそれほど多くないとのことで、これまでは上り方向の混雑が始まると端末のスループットを抑制していたところを、スループットの抑制を緩和し、より短時間で通信が終わるように基地局の設定変更が実施されている。

全国で対策されるメール送信時間の短縮。例は山手線基地局チャネルの増強および性能の最大化。主に上りの制御を変更

 

 また、駅間が圏外となっている東京の地下鉄では、(圏外から復帰した後の)EZwebへの接続時間を短縮するという対策が実施された。これは、乗車しているユーザーが駅に到着することで瞬間的に大きなトラフィック(バーストトラフィック)が発生、一時的に通信速度が遅くなってしまうという事態への対策だ。従来は平均値を元にトラフィックを設定していたため、このような瞬間的なトラフィック増に対応できていなかったとのことで、対策後はバーストトラフィックを考慮した設計に変更し、つながりやすさを改善。同時に800MHz帯に加えて2GHz帯のエリア拡充も実施されている。

地下鉄におけるEZweb接続までの時間の短縮バーストトラフィックを考慮した設計に変更

 

 このほか、1Xでは上り制御チャネルを複数化して発信時のつながりやすさを向上したり、下り制御チャネルの効率化で呼び出し時間を短縮したりといった対策を実施。秋モデルには1X EV-DOのマルチキャリアに対応したモデルが投入されることや、CPU性能など、端末の能力向上による高速化、メール送信中のプログレスバー表示といったユーザーからの要望に応える対策で、総合的に通信品質に取り組んでいる様子が解説された。

 湯本氏からは、2007年より定期的に実施している大容量コンテンツ(1.5MBのファイル)のダウンロード速度測定の変遷として、全国でダウンロード速度が向上している様子が紹介され、2009年4月から2010年6月の間にもダウンロード時間は約20%短縮されたとアピール。「端末、ネットワークなど、いろいろ含まれた総合的なデータ通信の性能の評価だ」と総合的に取り組んでいる様子を示した。

 将来的にはLTEを導入する予定の同社だが、その前にはEV-DOのマルチキャリア化が控えている。マルチキャリアは、一度に複数のキャリア(搬送波)を用いることで通信速度を高速化するもので、2010年の秋冬モデルでは理論値で下り最大9.2Mbps、上り最大5.5Mbpsで提供される予定。湯本氏は、KDDIの研究開発段階の速度から推測して、NTTドコモのFOMA(HSDPA)よりも高い実効スループットを実現できるとの予測も明らかにしている。

定期的に計測しているダウンロード速度(サーバー側で計測)は年々向上しているEV-DOのマルチキャリア対応でさらに高速化を図る

 

駅構内で通信のデモンストレーション

都内の駅でデモンストレーションを実施

 説明会では、都内の駅に場所を移してデモンストレーションも実施された。地下鉄の駅では虎ノ門駅、表参道駅が、山手線では有楽町駅でデモンストレーションが行われ、いずれも説明通り対策の効果を実感できる内容となっていた。

 虎ノ門駅、表参道駅ではそれぞれEZwebのトップページが表示されるまでの時間が短縮されている様子が確認できた。直接従来の速度と比較は行えなかったが、地上の一般的なエリアと変わらない速度で接続できている様子だった。なお、表参道駅などの複数路線が集まり利用人口も多い駅では、電車が駅に進入してきたタイミングなどで接続がもたつくことはあったが、従来から比較すると改善されているといえそうだ。

 山手線の駅ではメール送信時間が短縮されたというデモが行われ、200KBの添付ファイルを付けたメールが数秒程度で送信できる様子を体験できた。最新のCPUを搭載するT004は端末性能の差でさらに高速化が顕著という印象だった。なお、デモンストレーションではNTTドコモ、ソフトバンクモバイルの端末も用意されており、ほぼ同じ条件のメールを同時に送信するデモも実施。ドコモのHSUPA対応端末とSnapdragon搭載のT004がほぼ同じ速度でメール送信が完了し、どちらもキビキビと送信できる様子が印象的だった。

 



(太田 亮三)

2010/7/28 15:20