朝日新聞、携帯向けにミニブログ+ブックマークの新サービス


 朝日新聞社は、携帯電話向けの情報集約型サイト「参考ピープル」を開始する。正式オープンは9月1日で、7月30日からは先着1000名限定のβ版サービスも開始されている。3キャリアに対応した一般サイトで、利用料は無料。

 今回開始される「参考ピープル」は、あらかじめ提示されている投稿テーマについて、携帯電話から文章を投稿するミニブログと、携帯向けのソーシャルブックマークを提供するサービス。サイト内に仮想の編集部「参考P編集部」が設置されており、キャラクターから投稿に対するお題も出される。「参考ピープル」に登録しているユーザーが投稿でき、閲覧だけなら登録不要となっている。

 投稿すると、投稿内容に応じて尊敬、ツンデレなどキャラクターのさまざまな反応が楽しめるようになっている。ユーザーが独自にタグを付けることで、話題の情報を横断的に閲覧できる。

 ソーシャルブックマークでは、ユーザーが気になったサイトをブックマークできる。ユーザーが独自に付けられるタグにより、すでにほかのユーザーがブックマークした情報を、話題別に集めやすくなっている。専用の検索ページから検索すれば簡単にブックマークが行えるなど、ブックマークのしやすさに配慮した仕組みも用意されている。

「現場に任せ、新しい発想で提供していく」

 30日には都内で説明会が開催された。朝日新聞社の担当者に加え、芸者東京エンターテインメント、手嶋屋の担当者もそれぞれ説明を行った。芸者東京エンターテインメントはキャラクターが返答するシステム「人工無脳」技術を提供しているほか、手嶋屋はミニブログとブックマークサービスなど基幹システムの開発で協力している。

 最初に登壇し挨拶を行った朝日新聞社デジタルメディア本部 本部長の大西弘美氏は、「朝日新聞っぽくないサービスになっていると思う。いろいろな企業と組んでいくのがこれからの流れで、今回の組み合わせも、これまでとは違うものになっているのではないか」と、同社としても新しい取り組みであるとことをアピール。「有機的に情報を集め、サービスとして意味があるものにするためにどうしたらいいかと考えていた。検討を始めた1年前とは全く違うものになったが、ある程度現場に任せ、新しい発想で提供していくのを支援していきたい」と語り、手探りながらもサービスを進化させていく意気込みを示した。

「情報洪水の中では、自分たちの情報が届かない」

朝日新聞社 デジタルメディア本部 商品企画セクション プロデューサーの洲巻圭介氏

 サービスを担当する同社 デジタルメディア本部 商品企画セクション プロデューサーの洲巻圭介氏は、「利用者同士が参考になる情報を出し合うサービス」と説明し、携帯では探しにくい、さまざまなサイトに掲載される情報や話題を、利用者の投稿で補う仕組みであるとした。朝日新聞社が手がける従来のさまざまなメディアは、同社が情報を集め、発行し、届けるなど、すべて自社で完結させているのが基本だが、ユーザー投稿の情報を話題やタグで整理していく「参考ピープル」は、この点でも異例といえる内容。検索ページの結果から簡単にブックマークをしやすい機能を追加したり、メールでブックマークを追加したりできる機能など、携帯向けに特化した内容である点も説明された。今後については、「3年後にアクティブユーザーで100万人を目指したい」と意気込みも語られた。

 洲巻氏は、「参考ピープル」提供の経緯について、同社がこれまでに手がけてきたようなブロードキャスト型のサービスには「限界がある」という発想が原点とし、「インターネットの出現による情報洪水の中において、これまでのやりかたでは自分たちの情報が届かない層がある」と指摘。「多くの情報の中から、ユーザー一人ひとりに対して必要な情報を届けようというもの」と、自社発行の情報に限らない柔軟なコンセプトを語った。

「参考ピープル」の概要利用シーン
人工無脳のキャラクターでエンターテイメント性も

自前発信ではなく集約で新たな役割を見いだす

大手メディアとしてユーザー参加型メディアに取り組む

 「参考ピープル」のシステム開発を担当する手嶋屋 代表取締役の手嶋守氏は、SNSが地域や企業内、キャンペーンなどさまざまな場所で使われているとし、参考ピープルで提供する機能も、同社のオープンソースのSNSエンジン「OpenPNE」を利用したものであることを明らかにした。一方、SNSなどの管理の難しさも指摘し、「技術的に支えていくのが私たちの仕事」とした。

 芸者東京エンターテインメント 代表取締役 CEO ファンタジスタの田中泰生氏は、登場するキャラクターが“おとなの事情”で少しおとなしくなったとし、「もう少し派手にしてもいいですよね?」と壇上から担当者に了解をとりつける一幕も。一方で、「こういったサービスは、続けて、進化させられるかがカギになる」と真面目に語り、サービスを継続させていく中で新たな魅力が生まれていくとした。

 朝日新聞の洲巻氏は、「朝日新聞社として、一番“ない”選択肢を取ろうとした。従来からすれば真逆ともいえる内容で、そういう意味でもこの2社と組むのに迷いはなかった」と、同社としても異例の取り組みであることを改めて説明。「いくら作っても、(新聞が読まれないなど)その情報が届かなければ意味がない。うまく選んで、ユーザーが教え合うという場も、情報メディアの役割ではないか」と大手メディアとしての新たな役割と可能性にも言及。「新しい情報流通モデルを作りたい」と意気込みを語り、動画サイトの「ニコニコ動画モバイル」やミニブログの「Twitter」など既存の人気サービスとの連携も、柔軟に検討していく方針を明らかにした。

左から、芸者東京エンターテインメント 代表取締役 CEO ファンタジスタの田中泰生氏、朝日新聞社 デジタルメディア本部 商品企画セクション プロデューサーの洲巻圭介氏、手嶋屋 代表取締役の手嶋守氏会場には「参考P編集部」のキャラクターも

 

(太田 亮三)

2009/7/30 20:37