インタビュー

シャープ、ソフトバンク向け端末開発者インタビュー

シャープ、ソフトバンク向け端末開発者インタビュー

生産方法を変えてまで実現したかった2つの夏モデル

 ソフトバンクの2015年夏モデルとして、シャープから「AQUOS Xx」と「AQUOS CRYSTAL 2」の2機種が発表された。スマートフォンで最大の5.7インチというサイズを備えたEDGESTのAQUOS Xxと、世界がそのまま切り取られたかに見える、フレームレスの「AQUOS CRYSTAL 2」という、液晶まわりの技術が光る、シャープらしい製品となっている。

AQUOS Xx
AQUOS CRYSTAL 2

 いずれもエモパー2.0に対応し、AQUOS XxはカメラでGR certifiedの認証を取得。AQUOS CRYSTAL 2は、ユーザーからの要望が多かった防水にも対応。特にフレームがない中での防水対応は、苦労の連続だったようだ。

 このあたりの苦労話も含め、これら2端末の魅力や特徴について、通信システム事業本部 グローバル商品企画センター 第三商品企画部 副参事 澤近京一郎氏、係長 楠田晃嗣氏、システム開発部 主事 関文隆氏、デザイン本部 プロダクトデザインセンター 通信デザイン室 デザイナー 川村昌樹氏にお話を伺った。

澤近京一郎氏

――今回、ソフトバンク向けの夏モデルは2機種発表されましたね。

澤近氏
 はい。まずハイエンドモデルとして、AQUOS Xxですね。これはEDGESTデザインのフラッグシップモデルという位置づけになっており、大画面液晶を金属フレームで包み込んだ品位のある製品となっています。本当にフラッグシップに相応しい機能を盛り込んだ、自信を持ってお薦めする商品の1つになっています。

 もう1つはAQUOS CRYSTAL 2ですね。こちらはAQUOS CRYSTALの後継モデルになっています。こちらについては、AQUOS CRYSTALの発表当初からかなり多くご意見をいただいておりました防水対応と、ワンセグやおサイフケータイといった日本仕様に対応しているのが特徴です。防水対応は本当に大変だったんですが、無事達成することができまして、フレームレスとしては、完成形という域に達した商品としてご提案させていただきます。

5.7インチのAQUOS Xxはシャープ製端末の中で最大級の画面サイズ

「AQUOS CRYSTAL 2」(左)と「AQUOS Xx」(右)

――それではまずAQUOS Xxから詳細を教えてください。

楠田氏
 AQUOS Xxは、304SHの後継機種です。見ていただいた通り、5.7インチという大画面液晶を積んでおりまして、実はAQUOSの歴代スマートフォンとしては最も大きなものとなっています。それをEDGESTデザイン、金属デザインで仕上げて高級感を出しました。

 シャープはお客様の期待が液晶に集まりやすいので、まず液晶にこだわって作っています。ですので、画面サイズもさることながら、今回は液晶の画質についても非常にこだわって、ハードとソフトの両面で進化をさせました。ハード面での進化は「S-PureLED」、ソフト的な進化は「オススメ画質」の搭載です。

S-PureLEDで赤、青、緑をくっきり鮮やかに

関氏
 まずはS-PureLEDですが、従来のPureLEDは色鮮やかな赤が特徴でしたが、今回は赤だけでなく、青も緑も再現性をアップさせています。これは3つの技術で成り立っています。1つ目が新たに開発した新カラーフィルターの材料。2点目が従来から採用しているPureLED。3点目がスペクトルマッチング技術で、この3つの合わせ技を「S-PureLED」と呼んでいます。

左が今回のAQUOS Xx

 まず新規のカラーフィルターですが、従来顔料系の材料を使ってましたが、今回新たに染料系の新素材を開発し、そちらを混ぜ合わせることによって最適な特性を得ています。一般的には、染料系の素材の特徴は高い透過率を保ちなから、深い色味が出せます。

 PureLEDは従来からのものになるんですけど、青色の発光体に赤と緑の蛍光体を合わせ、スペクトルを分けることによって、ロスなく効率よく光を出せるというものです。

 スペクトルマッチング技術というのは、従来、白のバランスをとるためにカラーフィルターの透過率を落としていたところを、スペクトルの位置をずらすことによって、無駄なく光を透過させるようにしたものです。

 この3つの技術を合わせることで、より高い透過率を得つつ、それを色の再現性を高める方向に振ることによって、省電力ながらも深い色味を出せるようになりました。S-PureLEDが入っていない当時の端末で同じ写真を表示してみると、その違いが歴然だと思います。

――(デモを見ながら)すごいですね。とてもリアルで、かつ色に深みが感じられます。暗いところは暗く、赤はしっかり赤いですし、青も緑も本当に鮮やかになったんですね。

楠田氏
 S-PureLEDが入っていない当時のものも、その頃はそれで十分綺麗だと思っていたんですけね。

関氏
 社内でワーキンググループという形で、有志のグループを作りまして。その中でおすすめ画質というのを考えたんですけども、今回表示に対しても注力してやりましょうという中で、キーワードを決めてやってます。それが「絶妙」というキーワードです。

――「絶妙」ですか。

関氏
 誰が見ても絶妙という意味です。色はもともと好みがあって、ダイナミックが好きな方もいるんですが、それでも誰もが絶妙だといえる画像を目指しましょう、ということで取り組みました。これは最終形ではなくて、まだもう少しチューニングをしていくんですが、現状でも綺麗だと思っていただけるレベルかなと思います。

――とても綺麗だと思います。濃淡がハッキリしていて、グラデーションも細かく、立体的になったと思います。

関氏
 グラデーションにもかなりこだわっています。普通は測定器を使って調整したりするのですが、測定器で数字的に見ても合わないところが一杯ありまして。そういうところは手元で1つ1つ機種ごとにバッチリ合わせています。

おススメ画質モードでアプリごとに色味を制御

関文隆氏

――「おススメ画質モード」というのはどういうものでしょうか。

関氏
 従来弊社の画質モードって「ダイナミック」「標準」「リラックス」「ナチュラル」という形で、お客様にお好みで選んでいただくという形をとっていました。しかし、やはりアプリによって最適な画質というのは違うんじゃないかということで、アプリによって自動的に切り換えるようにしました。

 たとえば、ホーム画面やテレビは、華やかさ、色鮮やかさを見せたいので「ダイナミック」。逆にカメラやアルバムは見たままの自然な表現が大事なので「標準」といった具合です。

 従来は初期設定が「ダイナミック」でしたが、今回から初期設定でこの「おススメ画質」が適用されます。

――自分でアプリごとに設定することができるんですか? ユーザーがインストールしたカメラアプリやビューアアプリみたいなものを使うときはどういう選択になるのでしょうか。

関氏
 今のところは弊社のプリインストールしているアプリに対してのみ、私どもが考えたベストな状態ということで選ばせていただいております。それ以外は初期設定の「ダイナミック」が適用されます。

――なぜこの機能を入れようと思われたのでしょうか。

楠田氏
 従来モデルは初期設定がダイナミックだったんですが、これだとホーム画面や壁紙は綺麗に見えるんですが、たとえば焼き肉なんか撮った写真を見ると、ありえないくらい赤く見えたりしまして、生でもここまで赤くないだろうと(苦笑)。ただ、そこで標準画質にすると、テレビの色に鮮やかさが足りなくなる。どちらかを立てればどちらかが立たずみたいな課題を抱えていたところでした。それを今回は賢くソフトウェアで切り換えてあげるということで、両立させるということが実現できました。また、設定を分けることによって、より深いチューニングも可能になりました。

――サードパーティのアプリで、こういう画質で見せたいんだけど、というような個別対応はされるんでしょうか。

関氏
 今このタイミングではそこまで実現できていませんが、将来的に、もしそういうご要望があれば可能性はあると思います。

――シャープのスマホとしては、5.7インチは最大級ですよね?

楠田氏
 スマホとしては最大ですね。EDGESTじゃなかったら、幅だけでなく高さもかなり出ていたと思います。片手で持ったときの重心にも配慮しているので、長時間持っても疲れにくいと思います。

 若い方がゲームするときにかなり使いやすいと思いますし、40~50代の方もこのサイズなら文字も見やすくなってますし、ブラウザのタッチ操作もしやすいと思います。

ソフトバンク初のGR certified取得

――続いてカメラについてですが、今回ソフトバンク向けのモデルとしては、初めてGR certifiedを取得されましたね。

楠田氏
 はい。今回は「綺麗さの次」を目指したいと考えて取り組んでいます。綺麗さとは、カメラそのものの画質ですね。そこに徹底的にこだわるということで、今回、ソフトバンク様向けでは初めてGR certifiedの認証試験をクリアしたレンズを積んでいます。リコーさん側のノイズに対する基準が厳しくなったりと基準自体も進化している中で、新たに取得することができました。

 もう1つがセンサーですね。こちらも今回新しいセンサーを搭載していまして、ノイズ処理の性能が上がったのと、ハイスピード撮影が可能になりました。

――カメラまわりの仕様は3キャリア共通だと思いますが、ソフトバンク向けだけ変えている部分はありますか。

楠田氏
 カメラについては今回すべて一緒です。これまではレンズが違う、GR certifiedを取得していないなど、キャリア間での違いがあったんですが、シャープとしてベストなものを提供しようということで、すべて同じものを搭載しています。

 ただし、GR certifiedに関しては、個々にちゃんと取得していますから、それぞれの名前入りの認証トロフィーをいただいていますよ。

楠田晃嗣氏

――ハイスピード撮影について教えてください。

楠田氏
 具体的には「スーパースロー映像」と言われるものです。当社の優れている点としてはフルHDで120フレームの撮影ができるというところです。加えて、フレーム補完技術により、実際カメラで速いフレーム速度で撮影したものを、さらに補完してフレーム数を増やしてあげることで、もっとフレームの密度の高い映像が撮れるという部分です。具体的にはフルHDのもので1200fps、フルワイドVGAですと2100fpsまでコマを増やすことができます。

 通常の200fps前後くらいのコマ数ですと、単純に今まで見てた世界がゆっくり再生されてるなって感覚なんですけども、1000fpsまでくると、今まで目でとらえきれなかったものがとらえられるようになってきます。

 開発中に水風船を割るシーンを撮影したんですが、風船の縮んでいく様と、縮みきった後に水玉が残って、またそれがダーッと落ちていく様子が本当にこのカメラで撮れ、みんなですごく感動したというエピソードがあります。ほかにも犬がジャンプしながらエサをキャッチするとか、だるま落としとかいろんなシーンを撮影してみましたが、普通なら見えない動きが1つ1つ本当によく見えて驚きの連続でした。

――スロー部分を共有したいときはどうしたらいいのでしょうか。

楠田氏
 そのままでは共有できませんが、エクスポート機能があるので、一旦書き出したファイルなら共有は可能です。

声に応答するようになった「エモパー2.0」

――エモパーが2.0になったということですが、どんな点が変わったのでしょうか。

楠田氏
 途中でバージョン1.5も刻みましたが、今回バージョン2.0ということで、大きく進化させています。ポイントは4つあります。1つはお客様にとって、もっとも最適な話題を賢く選んで話しかけてくれるような取り組み。

 2つ目は外からでもイヤホンをつけている場合は話しかけてくれるようになったこと。1.0を出した後で、Web調査だったり、グループインタビューを実施したりする中で、「語りかけてくれるのが自宅だけっていうのは寂しい」という意見が結構ありました。ただ、外でいきなりしゃべられても周囲の目もあるので、イヤホンをつけているときに限りしゃべるようにしたというものです。

 3つ目はユーザーの声に反応することです。こちらはエモパーとの距離をもっと近くしたい、片方向ではなく、もっと密にコミュニケーションをしたいというご意見を反映したものです。エモパーが話したあと、充電ランプがピンクに点灯して待受状態になったら話せます。認識すると充電ランプが点滅して応答が始まります。

 4つ目は「エモパーの気持ち」という画面ですね。エモパーの状態がどうなっているのか、何を記憶してくれているのが分かるというものです。

――こちらからの呼びかけには何回も応答するのですか?

楠田氏
 「もう1回」と「ほかには」という2フレーズに対して、応答は1回だけですね。エモパーには受動UXが大前提というコンセプトがあるので、ユーザーが何か話しかけて、これ教えて、あれ教えて、これ検索してと言って、それに対してエモパーが答えるというのはコンセプトからは違ってくるので、あえてこういう感じになってます。

 ただ、「もう1回」と「ほかには」だけだと面白くないので、隠し要素的なところも取り入れています。どういったワードに反応するかは、おおっぴらには言えないのですが。

――初耳です!(笑)。

楠田氏
 お客様に実際にいろいろ試していただいて、エモパーの意外な返答を発見いただければと思います(笑)。

――それはソフトバンクさんだけの機能ですか?

楠田氏
 エモパー2.0はすべて共通です。何がどうなるのか探していただくのも1つの楽しみかなと思います。

――ちなみに、1.5とか2.0とか、数字が上がる基準というのは何かあるんでしょうか。

澤近氏
 対応する機能によって数字を変えているんですが、特に今回2.0になったというのは、声に反応するようになった点ですね。ちゃんとこちらから話した言葉に対して反応が返ってくるというところは大きな進化になってますので、そういった意味で2.0としています。その前の1.5というのは、従来の延長上の技術でやっていたものだからです。たとえばキャラクターを追加したりとか、そういったイメージは1.Xのままという感じです。このあとまた2.Xなのか3.0なのかというのは、進化次第かなと。

AQUOS Xxはシックな大人の道具感をイメージ

――AQUOS Xxのデザインについて、こだわった点を教えてください。

川村氏
 まずデザインする上での大前提として、道具としての使いやすさに徹底的にこだわりたいと思いました。なぜかというと、ここまで液晶が大きくなって、手で持つサイズとしては正直限界に近いのかなと。特に女性にはかなり大きいと思われるかもしれません。自由にデザインできる領域もはっきりいって広くはありません。だからこそ今回の商品はお客様が店頭で手に取ったときに、瞬間的に出会いとしてかっこいい、直感的にこれ欲しいと、そこまで思っていただけるような、完成度の高い商品にしていきたいという思いでデザインしました。単に機能とか性能だけではなくて、デザインでも物の価値を直感的に感じて欲しいと思いました。

 今回のAQUOS Xxでは、構造から生産方法まですべて見直して、デザインの制約を完全になくそうと考えました。自由な形を作るというところにこだわって、今回の金属フレームは1台1台すべて切削加工で行っています。ということで、デザインの自由度が格段に上がりました。

 側面のメタルフレームは、金属の塊から1台分をまとめて削り出してパーツ化しています。パーツごとに作ってしまうと、セットに組んだときに色が合わなかったりバラけてしまうんですね。だから1台作って色をつけて、それを1台のセットにすると。あまった金属はもう1回溶かして再利用します。

 そうやって金属の持つ上質感や高級感をしっかり訴求しながら、同時に女性にも安心して持っていただけるような、グリップしてストレスを感じないように、握って心地いいラウンドフォルムを目指しました。加えて、直線的な形状ではなくて円弧状のダイヤカットを施すことで、優しい輝きを持たせています。

 また、背面パネルの仕上げにもこだわっています。今回は特殊なコーティングをしたクリアパネルを採用することで、指紋などの汚れをつきにくくしています。

――1つの金属の塊から1台分のパーツということは、製造工程上、パーツに分かれたものを管理しなくてはいけないということですか?

川村氏
 そうです。その管理は非常に手間なんですが、1台の端末で左右で色が違っていたりすると完成度が低くなるので、そこはきっちり1台として完成させるというこだわりを持って作っています。

川村昌樹氏

――黒が面白い色だと思いますが、赤みが入ってますか?

川村氏
 アンバーブラックですね。フラッグシップモデルに相応しい、ハイグレード感のあるシックなイメージのチタンカラーにしています。今回はそのアンバーブラックをメインカラーに、ホワイト、レッドの3色をラインナップしています。ターゲットとしては30~40代の男性なので、高級ステーショナリーを思わせる、エグゼクティブでシックな大人の道具感をイメージしています。

――レッドは他キャリアモデルにもありましたが、トレンドなんでしょうか。それともシャープの赤ですか?

川村氏
 いや、シャープだから赤というわけではないのですが(笑)、実は赤って、男性に根強い人気があるんですよ。白黒以外にもう1色と調査をかけると、だいたい赤が挙がってくるんです。

――グリップセンサー部分が分かりやすくなっていますが、他キャリアのモデルのように光ったりはしないんですか?

川村氏
 今回はあえてグリップセンサーがそこにあるということを訴求しようということで、ダイヤカットを施したデザインにしました。光ったりはしませんが、どこを触ればいいのかは分かりやすくなっていると思います。

――背面がかなりスッキリしていますね。いつもならいろんなものが書いてあるんですが。CEマーキングなんかもないですが、画面表示に変えたんですか?

川村氏
 画面とカードのトレイ内ですね。トレイを引き出すと見えます。いかにデザインをすっきりさせるかっていうところは課題でした。

――ちなみに、ストラップホールについてはどうお考えでしょうか。

澤近氏
 結構議論はあります。主に企画とか営業系からはストラップホールはあったほうがいいという話が出ますが、デザインはシンプルにしたい。ここ1~2年はカバーをつける方がかなり増えて、そのカバーにストラップホールがついているというパターンが多いので、本当に必要な方ならそういう対応をされるだろうと思って、本体としてはシンプルな、一番いい状態で渡した方がいいかなと思って、ストラップホールはなくしています。

苦労を重ねて、ついに防水化に成功したAQUOS CRYSTAL 2

AQUOS CRYSTAL 2

――続いてAQUOS CRYSTAL 2について伺います。防水の苦労話が相当ありそうですが、まずはコンセプトからお聞かせください。

楠田氏
 2014年8月に発売したAQUOS CRYSTALの後継機種になります。AQUOS CRYSTAL Xというハイエンド機もありましたが、今回はAQUOS CRYSTAL Xではなくて、AQUOS CRYSTALの後継機です。

 液晶が従来5インチだったものが、若干アップして5.2インチになっています。ポイントは、FeliCa、ワンセグ、防水という3本柱に対応したところが最大のポイントですね。AQUOS CRYSTALをリリースしたとき、防水は必要だという声をたくさんいただきました。また、おサイフケータイがないと生活が成り立たないという方も非常に多かったということで、がんばって対応した次第です。

 それからシャープ製端末の特徴として取り組んでいるエモパーですとか、グリップセンサーですね。こちらについてもAQUOS CRYSTALに搭載されていなかったんですが、AQUOS CRYSTAL 2では搭載しています。

――エモパーは2.0ですか?

澤近氏
 はい。まったく同じです。フラッグシップの機能は基本的に入っています。ラインナップとしては、AQUOS CRYSTAL 2はフラッグシップではなくミドルクラスのカテゴリーになるんですが、シャープとしての特徴を入れていきたいという思いもありました。液晶の画質についてもフラッグシップと同じS-PureLEDを入れてますし、エモパーも同様で、シャープの独自の特徴ということでしっかり対応していこうと考えました。

――今回のモデルは北米対応ですか?

澤近氏
 AQUOS CRYSTAL 2は国内専用となります。お客様からいろいろご意見をいただいて、やはり日本でしっかり売っていくためには日本仕様を入れる必要があると感じました。努力の甲斐あって、本当に自信をもってオススメできる商品に仕上がったと思っています。

――苦労が容易に想像できる防水ですが……。

澤近氏
 防水は、本当に大変でした。額縁をなくしたことで、前回はどうしても防水構造がとれなかったんですね。パネルを本体に接着するところで、防水に耐えうる構造になっていなかったんです。条件としては今回も同じなので、普通のやり方では絶対に実現できない。でも、どうしても防水対応したいということで、これまでのノウハウをベースに、接着方法などを工夫することで実現しました。

楠田氏
 通常、パネルを貼り合わせるときには両面テープのようなものを使うんですね。ただ、フレームレスなのでテープを貼る糊しろがないんです。そこで接着剤を使うんですが、どうしても接着剤が乗らない、塗布していくときに乗らない部分が出るなど、生産上、避けられない課題があり、それが防水化を阻んでいました。この塗りムラの軽減と、塗布するスピード、接着剤の厚みを確保できる微細な構造などのノウハウが実現のカギになりました。

 前モデルから見たら、NFCが増えたり、グリップセンサーが付いたり、回路部品は確実に増えているんですが、フレームレスのデザインを損なわないように、回路の集積化も進めて、防水構造の中に入りきらない部品は外で個別に防水処理を施して、というような技術を使いまして、ようやく実現できました。これらは、技術メンバーが本当にがんばってくれた部分です。AQUOS CRYSTALやAQUOS CRYSTAL Xの経験がなければできなかった技術ですね。

デザインはAQUOS CRYSTALのテイストを継承

――背面のデザインは今回もディンプルですが、AQUOS CRYSTALと同じですか?

川村氏
 そうです。基本的に前回のAQUOS CRYSTALと同じディンプルを採用しています。AQUOS CRYSTAL自体、シャープとしての完全なオンリーワンデザインなんですね。それはもうデザインとして完成されたブランディングデザインだと。だから、あのディンプルに関してもあえて大きく変える必要はないというのが理由です。ただし、その同じデザインでも進化させているところはあります。ちょっとした背面の手ざわりの心地よさとか、しっとりした塗装の触感は出しています。

――AQUOS CRYSTAL 2ならではの機能があったら教えてください。

楠田氏
 上辺をなぞるとスクリーンショットが撮れる「クリップナウ」という機能は、フレームレスのAQUOS CRYSTALシリーズならではの機能です。メモ的なもので結構使えると好評いただいている機能です。今回はそれをさらに進化させてまして、スクリーンショット上をチラチラ見ながら電話できるといった、ビジュアルクリップボードのような使い方ができるようになりました。

上辺をなぞってスクリーンショットが撮れる「クリップナウ」

 これまでのスクリーンショットですと、保存した画像はビューアを起動しないと見られませんでした。WEBで調べたお店などの電話番号にちょっと電話したいけどWebページが画像だったりしてページをタップして直接電話できないなんて場面では、Webページとダイアラーを切り換えて行ったり来たりしていたかと思います。新しいクリップナウを使うと、上の角から下になぞって画面をキャプチャーすると、それが画面の横に一時的に保存されるんですね。それをダイアラー画面で引っ張りだしながら見られるようになるんです。

――なるほど。まさにメモを見ながら電話する感じですね。2画面にするというのはなかったんでしょうか。

楠田氏
 2画面モードも考えました。でもダイアラーの上にのっちゃうと、逆にそれが邪魔で押しにくくなって操作しづらいっていうのがシミュレーションの中で分かりました。だったら一時的にひょいひょい出し入れできたほうが使いやすいんじゃないかと考えました。使い終わったらスワイプして捨てちゃえば、余計なデータがたまることもありません。

――この機能はAQUOS Xxにはないんですか?

楠田氏
 そうですね。今のところフレームレスのみの機能という風に定義づけています。やはりフレームがないからこそ、上辺をなぞったり縁をなぞったりするUIというのが気持ちいいのかなと思うので。ここは他の機種でも対応してほしいという声があった場合には再検討しなきゃなと思っています。

――スマホ最大画面のAQUOS Xxと、日本仕様を盛り込んだAQUOS CRYSTAL 2、反響が楽しみですね。本日はどうもありがとうございました。

すずまり