ケータイソリューション探訪
Flashを用いるASPアンケートサービス「モバQA」
インターネットの利用動向調査などを手掛けるビデオリサーチインタラクティブが、2009年8月よりFlashを利用した携帯電話向けアンケートシステム「モバQA」を提供している。ほぼ誰もが持つケータイは調査ツールとしての有用性も期待されているが、Flashを用いるメリットや、実際に利用する企業からの反響などについて、同社・営業企画本部の深田航志氏に話を聞いた。
――まず、「モバQA」の概要について教えてください。
株式会社ビデオリサーチインタラクティブ 営業企画本部 営業企画部 マネージャー 深田航志氏 |
簡単に言えば、Flashを用いたケータイのアンケートシステムです。従来のアンケートはHTMLで作られたテキスト主体で、回答者が面白味を感じられないものが多かったと思います。Flashを利用することで、画面デザインの自由度が高まり、画像や動画も挿入しやすくなります。ユーザーが楽しみながら回答できるアンケートになるので、回答率が上がり、調査の精度も高まることが期待できます。
――Flashを用いることの具体的な利点は?
例えば、Q1で「A」と答えた人はQ2に、「B」と答えた人はQ3に、という分岐の設定ができます。質問をランダムに表示するといった設定も可能です。
また、従来のHTML形式では画像を挿入すると、ケータイのディスプレイの解像度によって画像が大きく表示されたり、小さく表示されたりする機種依存がありました。Flashでは、表示サイズを指定することで、機種が違ってもほぼ同じ大きさで表示できます。Flash内に動画を埋め込み、動画を見た印象を回答させるといった質問設定もできます。
――Flashのバージョンは?
Flash Lite 1.1に対応しています。2.0のほうができることが多いのですが、2.0に対応していない機種も多いですよね。1.1であれば、弊社の調査では現在出回っているケータイの95%以上が対応していると判断しています。
――Flashに画像データなどを付加すると、1回のアンケートでそれなりのパケット通信料がかかりそうですが。
およそ15問の設定で200~300円程度になると思います。ですので、パケット定額制に入ってないと厳しい面もあります。「モバQA」を開始する(2009年8月)以前の調査で、ケータイ利用者の半数以上がパケット定額制に加入しており、現在はさらに増えていると思います。「モバQA」はパケット定額制への加入を前提にしたサービスで、最初の画面に定額制への加入を推奨する文言も入れてあります。
――「モバQA」でアンケートを作成するには、どの程度のスキルが必要ですか?
「モバQA」はクラウドを用いたサービスで、Webブラウザからアクセスしていただき、画面の案内に従って、設問文を入力したり、選択肢を設定したりするだけです。「基本情報編集」「設問編集」「テスト」「公開」の4ステップで作成できる画面インターフェイスにしています。ユーザーにアクセスしてもらうためのQRコードも自動的に発行されます。システム的には難しいものではないので、「こういう設問ではこういう選択肢を設けるべき」といった、ある程度の調査マインドをお持ちの方であれば、申し込んだその日に作成して公開することもできます。
アンケート回答画面イメージ |
――質問は何問まで設定できますか?
単発で利用される場合、最大40問です。システム的には最大99問まで設定でき、利用回数の制限がない定額プランをご利用の方は99問まで設定できます。しかし、実際には最大数まで設定することはなく、20問以内にしている方が多いようです。モバイルでのアンケートをいろいろ見ていますが、設問数が多い場合、だいたい25問目あたりで落ちてしまうようです。設問を絞り込んだほうが、回答率が上がるとも言えます。
――利用料金を教えてください。
単発利用の場合、梅プラン(3万円)、竹プラン(5万円)、松プラン(10万円)を用意しています。それぞれ回答者数や利用期間の制限が異なりますが、梅プランで最大1万人、最大10日間の利用が可能です。ただし、画像を含むマトリクス設問、条件分岐機能、動画などには対応していません。フル機能に利用できる松プランは、最大10万人で半年間の利用が可能です。頻繁に調査を行う企業向けに、毎月利用定額プランも用意しています(料金等は要問い合わせ)。
現在、梅プランを無料で試せるキャンペーンをやっていますので、ぜひ一度使ってみていただきたいと思います。
――よほど大規模な調査でない限り、回答者が1万人を超える調査は少ないと思いますが。
規模感を出すために回答者数を設定していますが、多くの場合、梅プランの回答者数(1万人)で足りると思います。回答者数が超過した場合、追加料金が発生しますので、追加料金の心配をしていただかなくてもいい価格設定にしているとお考えください。
――実際には、どのような企業・事例で利用されていますか?
商品告知などのキャンペーンに伴うアンケートでの利用が多いようです。従来、商品にアンケートのハガキを付けていたものをケータイに置き換えたいというニーズも多いです。「モバQA」を使っていただくことで、商品パッケージにQRコードを付けるだけで済むのでコスト削減にもつながりますし、紙や印刷を省けるのでエコにもつながります。
ほかに、イベントやセミナーの会場で利用いただくケースもあります。来場者にその場で回答していただき、集計結果をすぐにディスプレイに掲出するといったこともできます。Twitterを使っても来場者に意見を求めたりできるのでしょうが、表やグラフで見せられるのはメリットだと思います。
――利用された企業からは、どのような反響がありますか?
WOWOWさんには、放映番組の評価を調査するためにご利用いただいたのですが、従来のアンケートよりも回答率が格段に上がったと聞きました。モバイルのアンケートと言えば若年層の反応がいいように思われがちですが、WOWOWさんの事例では40~50代の回答者が多かったようです。
大分のテレビ局では、番組と連動して視聴者モデルの人気投票にご利用いただきました。アンケート画面でモデルさんたちの顔写真を確認して投票でき、非常に反響があったと聞いています。
アンケートに画像や動画を取り込めるので、アンケートに回答させながら、キャンペーンの概要などを告知でき、「刷り込み型広告」と言いますか、アンケート自体を広告のように利用できることをメリットと捉えている企業もあります。
集計画面イメージ | アンケート作成画面イメージ |
――集計結果はリアルタイムで確認できるのですか?
これはインターネットのアンケートならどこでもそうなのでしょうが、回答結果は1分以内に反映するリアルタイム集計のシステムにしています。GT集計(単純集計)のほかに、ユーザー属性などを掛け合わせるクロス集計も可能で、グラフも表示できます。集計結果を資料などにそのまま使えるように、色使いもカラフルにしています。
――集計結果の分析も依頼できますか?
「モバQA」はアンケートシステムのみを提供するASPサービスであり、そこから先は調査会社の専門領域です。集計結果の詳細な分析を行いたい場合は、RAWデータをダウンロードできますので、それを活用できます。ビデオリサーチもそうですが、調査分析を専門とする会社もありますので、そこに委託することもできます。
――御社はビデオリサーチ社のグループ企業ですが、同社で培ってきた技術が生かされている部分はありますか?
「モバQA」に関しては、とくにありません。あくまでも弊社独自のサービスとして開発したものです。
――利用者の中には、回答者の個人情報を取得したい人もいると思いますが、どのように対応していますか?
「モバQA」はクラウドを使うシステム上、個人情報は取得できない仕組みにしています。個人情報を問う設問はできません。「フリーアンサーに個人情報を書き込むことはできるのではないか?」と思われるかもしれませんが、フリーアンサーへの回答は、登録されたメールアドレスには送られない仕組みになっており、またデータと一緒にパスワードが送られるので、情報が漏れないようになっています。どうしても個人情報を取得したい場合は、利用者自身が所有する個人情報が取れるシステムと組み合わせてURLのリンクを貼っていただくなどの方策が必要になります。
――つまり、回答者に関する情報を管理する責任は、利用する企業する側にあるわけですね?
はい。利用規約でもそのようにしています。
――個人情報を入力できないということですが、一人が複数回答することを防ぐことはできますか?
端末の利用IDを取っていますので、重複して回答できないようにすることができます。イベント会場などで来場者に回答させる場合、Flash対応のケータイを持っていない人に、端末を貸与して回答させるケースがありますが、その場合、複数回答ができるようにも設定できます。
――今後、サービスの拡張を考えておられることはありますか?
iPhoneのユーザーが増えてますので、iPhoneへの対応を予定しています。Androidを搭載したスマートフォンも増えてくるでしょうから、Androidへの対応も視野に入れています。
――ありがとうございました。
2010/5/6 06:00